一昨年(2015年)、10年以上乗ってきたクルマを捨てた。すでに1年以上、クルマのない生活をしているが、東京での暮らしは特にクルマがなくても困らない。どうしても必要なときにはレンタカーを借りるつもりでいたし、実際そうしているが、その回数もそれほどでもない。

東京モーターショー2017で展示された、日産の完全自動運転 EVコンセプトカー「ニッサン IMx」

ただ、実家に帰省するなどして地方に来たりするとちょっとたいへんだ。地方都市というほどの大きな街ではないから悲惨でもある。少なくとも歩いて15分の圏内には商店がなかったりするわけで、クルマがなければ、毎日の買い物ひとつとっても身動きがとれないことを痛感する。特に、高齢者だけの世帯では、クルマがないと不便なことはわかっていても、運転するのも危険だからにっちもさっちもいかない。

通販サービスは暮らしのコンシェルジェになる

スマートな暮らしを堪能するにはITの活用は不可欠だ。今後、ますますその傾向は強まるに違いない。たとえば今、音声で話しかけるだけで、さまざまなアクションが得られるスマートボイススピーカーがトレンドだが、これらのデバイスも、これからはもっと重要な役割を担うようになるにちがいない。

さらに、アマゾンなどの通販サービスも、ロングテール的に趣味のアイテムを容易に入手できるような存在としてだけではなく、もっと身近な存在として、暮らしのアシスタント、コンシェルジェとして機能するようなことも求められるだろう。ネギ1本でも近所のスーパーと同じくらいに気軽に注文ができて、それが驚異的な物流のネットワークを介して数時間後には自宅に届くような世界だ。たぶん、そんな世界は高齢化社会、そして、地方社会でこそ重要なものとなっていくだろう。

アマゾンのようなサービスも、そんなことはとうの昔からわかっているのだろう。あの手この手で一般家庭向けのサービスを充実させようとしてきている。アマゾンのAIアシスタント、Alexaのサービスも、その延長線上にあるのはいうまでもない。

夢のクルマの登場は、そう遠くない

情報化社会を支えるITが人々の暮らしに欠かせないものになって議論されるようになったのは、アルビン・トフラーの著書「第三の波」(1980年)が注目されたころだと考えると40年くらいが経過していることになるが、あと20年ほどの時間があれば、今の夢物語が新しい当たり前になってわれわれの暮らしを支えているだろう。個人的にはいわばITの還暦を見届けたいと、最近になって長生きしたいとちょっと欲が出てきたりもしている。

今、クルマの業界は、100年に一度の改革の時期を迎えている。言うまでもなく自動運転の世界の実現だ。クルマを手放す前、カーナビは今買い替えたら負けだと思って10年以上様子を見てきたが、残念ながらびっくりするような改革はなかった。でも、今回はそうでもないように思う。東京オリンピックに向けて自動運転の世界の波が来ようともしている。

自分のクルマを次に買うときは、シャンパングラスでも片手に無人運転で自宅に到着したクルマにほろ酔いで乗り込んで、ちょっとした初乗りを楽しむような経験ができるんじゃないかともくろんでいる。そう遠くない未来の話である。そういう意味では、今の情報化社会には本当に多くの「兆し」が散らばっている。そのひとつひとつを大事にできればと思う。

(山田祥平 http://twitter.com/syohei/ @syohei)