インテルの第8世代Coreプロセッサを搭載したノートパソコンが続々と発表されている。この新しいプロセッサは、いわゆるKaby Lake Refresh(KBL-R)と呼ばれるもので、正確にいうなら第7.5世代くらいのステージにあるものだ。それでも、従来は2コアだったモバイル向けプロセッサ(U型番)を4コアにして処理性能を高めているのは確かだ。
性能が上がるとバッテリ駆動時間が減る
もちろん作業の内容次第ではその恩恵は大きい。ノートパソコンのフォームファクタでは、妥協しなければならない要素が多いものだが、処理性能を求めるユーザーにはうれしい新製品だといえるだろう。たとえば動画編集などでストレスを感じていたユーザーは大歓迎といったところではなかろうか。
その一方で、4コア化したことでバッテリでの駆動時間は確実に減る。たとえば、先日発表されたデルのXPS 13は、バッテリ駆動時間が長いことで知られてきた。非タッチモデルで20時間を超えるカタログスペックにモバイルパソコンとしての頼もしさを感じるユーザーもいたはずだ。
だが、プロセッサを刷新した新モデルではバッテリ駆動時間が18時間になっている。処理性能が上がった代わりにバッテリ駆動時間が短くなっているわけだ。こうしたこともあってデルでは第7世代Coreを搭載した従来モデルも併売していく方針でユーザーのニーズに応えようとしている。
第8世代は"追加"と考えるべき
実際、パナソニックのLet'snoteやVAIOのSシリーズなども、この秋冬モデルは第7世代Coreのままでラインナップを固めている。例年のようにプロセッサ刷新でラインナップ総入れ替えというふうにはしていない。第7世代には第7世代の、第8世代には第8世代のいいところがあり、パソコンメーカー各社はそれを知った上で新旧のプロセッサを適材適所で使っているということだ。
つまり、第7世代と第8世代は入れ替えではなく追加と考えるのが妥当だ。そのあたりをよく知らないで機種を選んでしまうと、せっかくのおニューのパソコンに不満を感じてしまうかもしれない。そういう意味ではマーケティング的な意味合いが強いとはいえ、インテルも今回のプロセッサについては第8世代というキーワードを使うべきではなかったのではないかとも感じている。第8世代というキーワードが出てしまうと、どうしても第7世代はひとつ前の古いものというイメージを持ちがちだ。これはインテルにとってもあまりいいことではない。
新旧プロセッサは使い分け、適材適所で活きるパソコン
すでに多くのコンシューマーは、パソコンを購入するときに、そのプロセッサの素性など気にしなくなってきている。さらにはパソコンの使い方についても、コモディティ的になって数世代前のプロセッサで十分という使い方をしているユーザーがマジョリティだ。今、最新パソコンのコンシューマー市場を熱く支えているのはゲームシーンだといってもいい。それだけに性能訴求は重要なマーケティングメッセージだといえる。
だが、そこを近視眼的に見つめるあまり、シーン全体を俯瞰できなくなってはいないか。そのあたりの事情を頭において、この秋冬の各社パソコン新製品のラインアップを見てみると、いろいろなことが見えてくるはずだ。
(山田祥平 http://twitter.com/syohei/ @syohei)