「妊活休暇」を含む女性社員の支援制度「macalon(マカロン)パッケージ」を2014年に導入したサイバーエージェント。前編に続いて、人事本部・労務グループの田村有樹子さんに導入後の変化などについて聞いた。

男性社員も多く利用する新制度

5つの制度からなる「macalonパッケージ」。その中で最も手ごたえがあったのが、専門医の個別カウンセリングが受けられる「妊活コンシェル」だ。現在、カウンセリングは月1回3枠を設けているが、導入当初は予想を上回る反響があり、月2回6枠がすぐ埋まるほどだった。また、過去に10件ほど、男性社員が配偶者とともに利用するケースもあった。

それに続いて反応がよかったのは「キッズデイ休暇」。月平均10件強の利用があり、特に男性社員の利用が多いのが特徴だ。「妊活休暇」は月平均13件、最も多い月で24件の利用があった。実際に制度を利用した社員からは、男女ともに「妊活や子どもの行事で休むことを自然に受け入れてくれる環境ができたことで、安心して働けるようになった」という声が聞かれるという。

渋谷マークシティ内にある本社オフィスフロア

一方、若手の独身社員からは、「妊娠・出産後の働き方についてイメージできない」という意見も出ている。今後は、そうした若手社員とママ社員・パパ社員との交流の場を増やすことで、具体的な制度の活用方法を広めていく構えだ。さらに今後の目標として、女性管理職の割合を増やすことも視野に入れている。

現在、女性が多く活躍している同社だが、女性管理職比率は22%。この数値を同社の男女構成比(7:3)と同等の30%まで引き上げることを目標に掲げている。次世代の経営者育成を目的とした「CA18」という執行役員制度からは、初の女性役員も誕生している。さらに、「CA36」という将来の幹部候補を育成するチャレンジプログラムも実施。意欲のある女性にも門戸を広げている。

社員の生き方を理解し応援してくれる風土

制度導入からわずか2年でしっかりと制度が定着している同社だが、成功の要因は何だったのだろうか。その理由は、「制度づくり」より「風土づくり」という人事制度の考えにあるという。同社に初のママ社員が誕生したのは、2005年。それを機に少しずつ復職を希望する女性社員が増えてきた。しかし、その時点で急いで制度だけをつくっても根付かないとの考えから、まず「女性が出産後も働きやすい」風土づくりに徹した。

「アメーバ」の各種サービスを統括するプロデューサー職のうち、約6割が女性。

人事担当者がママ社員一人ひとりの要望をヒアリングし、実現可能なものから実行に移していった。具体的には、復職希望者を受け入れる際には、時短勤務などに理解のある上司がいる部署に配属したり、妊娠や育児について相談できる体制を整えたり、ママ社員同士のランチ会を開催したりといったことだ。ひとつずつ事例を積み重ねることで、女性が安心して復帰できる風土を構築。こうして十分に風土が根付いたところで、満を持して制度を導入した。

その結果、産休・育休から復帰した社員も限られた時間で最大限のパフォーマンスを発揮。表彰を受けるなど、めざましい成果を上げるママ社員も増えてきた。そうした女性社員の活躍により、現場からも「あの人はいつ戻ってくるの? 」と復帰を待ちわびる声も出ているという。双子のママである田村さん自身も育休から復帰した1人。「会社が自分の生き方を理解し、応援してくれる風土があるので、今後もがんばって会社に恩返ししたい」と意気込みを語る。

このように子育てをしながらも活躍できる環境があることは、社員個々のモチベーション向上につながるのだ。「macalonパッケージ」は、主に妊娠・出産を望む社員や子育て中の社員を対象としたものだが、対象外の社員にも心を配り、「制度は会社の成長に不可欠である」という意義を周知したことが成功の要因と言えるだろう。

【DATA】
社員の男女比: 7対3
平均年齢: 29.4歳
正社員数: 3,432名(連結)
育児休業からの復帰率: 94%