日本で買えるコンパクトSUVを乗り比べる本特集の第4弾はプジョー「2008」だ。独特のコックピットは好き嫌いが分かれそうだが、この外見と細部へのこだわりに魅了されるユーザーは多いはず。「ドイツ御三家のSUVはちょっと…」という方にも選ばれている1台だという。

  • プジョーの「2008」

    プジョーのコンパクトSUV「2008」(本稿の写真は撮影:原アキラ)

先にレポートしたルノー「キャプチャー」の直接のライバルになるのが、2020年9月にデビューした同じフランス生まれのプジョー「2008」だ。その数字名からもわかるように、ベースモデルとなったのは真ん中の「0」をひとつ取ったコンパクトハッチの「208」。つまり、「キャプチャー」と「ルーテシア」の関係と全く同様の成り立ちである。

今回試乗したのはエントリーグレードの「アリュール」(Allure)だ。アリュールは英語だと「心を魅了する」「うまいエサで意図的に誘う」「魅惑する」などを意味し、フランス語では「上品なふる舞い」「速力」「運転」などの意味になるという。というわけで、2008を試乗に連れ出して、その振る舞いを確認してみることにした。

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    「2008」は「アリュール」(302万円~)、「GT」(341万円~)、「GT Drive Edition」(359万円~)の3グレード構成。試乗したのはアリュールだ

BセグとCセグの中間サイズに

2008が採用する「CMP」(コモン・モジュラー・プラットフォーム)はプジョー最新のフレキシブルなモジュラー構造を持つプラットフォーム。ノイズや空気抵抗を低減しつつ剛性を高め、さらに従来型から30キロの軽量化を果たしたという。ボディサイズは全長4,305mm、全幅1,770mm、全高1,550mm、ホイールベース2,610mm。日本の立体式駐車場にぎりぎり収まる車高は、ライバルと比較すると大きなアドバンテージになるはずだ。ちなみに車重は1,270キロである。

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    4,200mm前後のBセグメントSUV群よりは少し長いものの、Cセグメントよりは少し短いといったサイズ感のプジョー「2008」

エクステリアはメーカーロゴであるライオンがモチーフ。大きく口を開けた形状のグリルの左右には、縦型LEDデイライトが牙のように輝いて見える。3本のカギ爪形LEDテールライトを持つリアも含め、どこから見てもプジョーのクルマだとわかるデザインだ。サイドのショルダーラインは前後に「く」の字型シェイプが施されていて、全体的に彫りの深い造形になっている。

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    ボディサイドは前後に「く」の字型のプレスラインがある

インテリアについては、プジョーお得意の「3D iコックピット」を是とするか非とするかで大きく評価が分かれる。低い位置に取り付けてあるほぼ四角形の超小径ステアリングは独特だし、運転中の視線移動を最小限にするため、その上側にメーターパネルを取り付けるというユニークなレイアウトは、いい意味では新鮮でインパクト大だし、その逆では違和感そのものだ。

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    独特のレイアウトをとる「2008」の「3D iコックピット」(3D i-Cockpit)

メーターパネルの表示方法はホログラムのようで未来感たっぷり。メーターナセルの中央手前にはデジタルのスピード計と回転計による車速とエンジン回転数を上方から投影し、奥側左右には燃料計と水温計が表示される。ただ、筆者としては、そこまでやるなら、もう普通のヘッドアップディスプレイ式にしてしまえば、といいたくなってくるのだが……。

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    写真ではわかりにくいが、ホログラムのような表示は2層で立体的に見える。サイドに隙間があるので、光が入ってくるのは少し気になる

一方、ダッシュセンターにあるナビゲーションの表示については標準的でわかりやすく、「Apple CarPlay」や「Android Auto」にも対応している。空調やハザードなどはピアノの鍵盤のような形をしたトグルスイッチで操作する。その下には床面にQi規格ワイヤレス充電機能を持つボックスがある。

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    ナビゲーションはオーソドックスな見え方だ

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    ダッシュセンターのトグルスイッチとスマホなどのQi規格充電ボックス(フタを開けたところ)

太いグリップのアイシン製8速「EAT8」用シフトレバーは奥側に押して「R」、手前に引いて「D」を選択する。ステアリングにパドルシフトまで装備しているのは、走りにこだわるプジョーらしいところだ。

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    8速ATのシフトレバーはカッコいいデザインを採用

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    目黒区内の桜並木を駆け抜ける「2008」

室内はとても広くて、前後のどのシートに座っても乗員から不満の出る要素はない。ブラックのシートはファブリックとテップレザーのコンビネーションで、パンとした張り具合とたっぷりしたクッションがあり、長時間乗っても具合が良さそうだ。

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  • 広々とした「2008」の前後シート

ラゲッジルームは434Lと十分に広い。フロアボードは上下2段式だ。後席を全部倒した際の容量1,467Lは、キャプチャーのそれを200L以上も上回る広さである。

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  • 通常で434L、分割可倒式の後席を倒せば1,467Lの広大な空間が現れる

走りは良質だがちょっと違和感?

最高出力130PS/5,500rpm、最大トルク230Nm/1,750rpmを発生する1.2L直列3気筒ターボ「ピュアテック」エンジンと8速ATによる走りはとてもいい。低速からトルク感を伴った動きができるので、加減速の多い街中では流れに乗りやすい。CMPプラットフォームはガソリンモデルより300キロ近く重いEVモデル「e-2008」にも対応できる強靭なシャシーなので、しっかりした剛性感がドライバーに伝わってくる。3気筒エンジンのビート音も、意識して聞き耳を立てない限り気にならないというレベルまでしっかり抑え込まれていた。

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    排気量1.2Lの直列3気筒ターボエンジン

215/60R17という比較的直径の大きなタイヤを採用していることもあり、直進性も良好だ。サスペンションは少し硬めで欧州車らしい。コーナリング時には、昔のフランス車のように大きなロールを伴う姿勢変化を見せないようなセッティングがなされている。燃費はWLTCモードで17.1km/Lを公称する。

良質な走りを見せてくれる2008だが、やっぱりあの3D iコックピットに起因した気になる点がひとつ。視線のかなり下の方にある小さなステアリングを回す感覚と、ボディの鼻先が向きを変えるタイミングがずれているような違和感が最後まで残ってしまったのだ。

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    走行モードは「スポーツ」「ノーマル」「エコ」が選択可能

運転支援面では、アクティブセーフティブレーキ(歩行者、二輪、夜間検知)のほか、ACC(ストップ&ゴー機能付き)、レーンポジショニングアシスト(車線維持機能)、ワイドバックカメラなど、現代のクルマとして必要十分な機能を搭載している。

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    ACCは今や珍しくなったレバー式を採用

  • プジョーの「2008」

    後退時には上から見下ろしたように映るワイドバックカメラが作動する

インポーターによるとこのクルマ、ドイツ御三家(メルセデス・ベンツ、BMW、アウディ)のクルマをガレージに収めたときの“威圧感”が気になる、というユーザーの選択肢に入ってくるのだそうだ。また、ご近所の“目”に対しても、価格がわかりにくくて、「ちょっといい感じのフランス車に乗っているのね」という、“プライスレス”な魅力がある点が評価ポイントのひとつに入るのだという。

試乗車を借りた目黒をはじめ、世田谷や吉祥寺など、都内でも狭い道路が多い地域にお住まいの方から問い合わせが多く、使いやすいサイズ感も相まって実際によく売れているらしい2008。オーソドックスなレイアウトのキャプチャーに対して、ちょっと変わったデザインのコックピットをもつ2008の方が魅力的と感じるユーザーには、迷うことなく選ばれるに違いない。

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