ダイバーシティあふれる職場が広まる中で、価値観や行動傾向など自分とはタイプの異なる人とコミュニケーションを取る機会はますます増えていきます。他人とコミュニケーションに苦手意識がある「陰キャ」と自認する人も例外ではありません。

人とのコミュニケーションにおいて大切なのが相互理解。特に自分とは違うタイプの人とスムーズなコミュニケーションを図るためには、自分を知り、相手を知り、お互いの前提を共有して、相手に合わせた行動を取ることが大事であると前回までに紹介しました。

  • 相手に合わせた行動を取れていますか(写真:マイナビニュース)

    相手に合わせた行動を取れていますか

そうしたコミュニケーションの理論を理解したら、いよいよ実践です。しかし、いきなり「お互いの前提を共有しましょう」という訳にもいきません。

そこで今回は、打ち解けた雰囲気をつくるのに役立つスキル、「雑談力」について、リクルートマネジメントソリューションズ ソリューション統括部 コミュニケーションサイエンスチーム チームリーダーの松木知徳さんが解説します。

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これからの時代を生きていくのに必要な雑談力

ビジネスシーンにおいて、専門的な知識やスキルを持っていることは、大きな強みになります。ただ、コミュニケーションがうまくいかないと折角の専門性も発揮することができなくなると松木さん。

「自分の興味・関心や、専門用語を並び立てた話では、理解できる相手が同じく専門分野にいる人に限られてしまい、交流範囲が狭くなりがちです」。

そこで注目したいのが雑談力。社会人としてこれからの時代を生きていくには、雑談力を磨くことも大切なことだと言います。

「今や、専門分野も単体で成り立っていることは少なくなり、領域横断での新しい研究やサービスが生まれています。自分が得意領域の隣の分野に関心を持ち、のぞいてみると、イノベーションの種を発見できるかもしれない。そんな感覚で視野を広げ、横や縦との交流を深め、もう一歩踏み込んだ会話をする。

日常の行動を少し意識するだけで周囲との関係も変わるはずです。その入り口として雑談力は実はとても有効なスキルだと思います」。

アンテナを広げ、自分の興味以外の流行を拾いに行く

では、雑談力を磨くにはどうしたらいいのでしょうか。松木さんは自身の経験からこうアドバイスします。

「実は私も雑談が苦手で、これまでに雑談に関する本はたくさん読みました。でも、本を読んだだけでは簡単に苦手を克服することはできません(笑)。

雑談がうまい人は、そのために何かをすごく調べているわけではなく、日常の中の些細なことを話しているだけなんですよね。朝のニュースや電車のつり革広告など、ふとしたことや目に付いたものをちょっと覚えておいて話してみると、意外にそれが話題となって盛り上がったりする。

そうした繰り返しから、しゃべるテンポがつかめて、言葉が出てくるようになると思います。最初は少しアンテナを広げて、自分の興味以外の流行も拾いにいくのがポイントです」。

また、相手が話好きなタイプの場合は、質問したり、意見を求めたりするのも良いそう。また、考えてから話すタイプの人は適度な間があったほうが落ち着いて良い時もある。どちらも、無理に自分が会話の主導権をつかむよりも相手に話をしてもらう投げかけがあると良いとも言います。

「自分から話すことだけでなく、聞くことも含めて、雑談力なのです」。

そして、雑談で距離が縮まってくると、ちょっとしたことでも相談しやすくなり、良いコミュニケーション状態、良い関係性に。雑談には、そんな効能があると松木さん。

「私が新人の頃は、取引先相手の名刺の裏にその人の趣味をメモしておくように先輩に教わりました。例えばゴルフ好きの人なら、最近話題のプロゴルファーの話をしたり、ゴルフについて知りたいことを聞いてみたり、雑談を通じて相手との距離を縮めていったものです。こういうのって、今も昔も変わらず普遍的なことなんですよね」。


たかが雑談、されど雑談。コミュニケーション力アップに向け、まずは色々なタイプ人と、意識的に雑談を楽しんでみてはいかがでしょうか。

次回は最終回。社内のコミュニケーションを高め、円滑にするために、実際に企業内で行われていることの事例や、その効果効能について解説してもらいます。

取材協力:松木知徳(まつき・とものり)

リクルートマネジメントソリューションズ
ソリューション統括部 コミュニケーションサイエンスチーム チームリーダー
金融業界でキャリアを重ねた後、2007年にリクルートマネジメントソリューションズに入社。コンサルタントとして企業の人材開発・組織開発に従事し、数々の表彰を受ける。現在は、テクノロジーや科学的な理論をもとにした営業生産性向上のための新サービスの開発を行うほか、メディアでの執筆活動、講演なども行っている。