ビジネスの場面では、同僚や上司、取引先の相手など、不特定多数の人との関わり合いは不可欠。そんな中でも自分は「陰キャ」だからと、周囲とのコミュニケーションに苦手意識を持っていている人もいるのではないでしょうか。
相手に合わせた行動とは
では、周囲とのコミュニケーション力を向上させるためには何をしたらいいのか。その第一段階として、まずは"1.自分を知る"こと、"2.相手を知る"ことが大切であると、前回紹介しました。
今回は、次なるステップ、"3.相手に合わせた行動"についてお話します。引き続き、コミュニケーションの理論に精通している、リクルートマネジメントソリューションズ ソリューション統括部 コミュニケーションサイエンスチーム チームリーダーの松木知徳さんに解説していただきます。
ソーシャルスタイルで相手への対応策を分析
「人とのコミュニケーションを円滑にするためには、相互理解を深めることが大切です。まず行うべきは"1.自分を知る""2.相手を知る"こと。自己主張や感情表現の有無など自分や相手のコミュニケーションの特徴を意識することで随分変わると思います。そしてその上で、"3.相手に合わせた行動"をする。これがコミュニケーションの3ステップです」。
前回紹介した「ソーシャルスタイル理論」は、コミュニケーションの特徴から個人を4つのタイプに分類するものでした。この理論は自分と相手を理解するのにとても役立つそうです。
それでは、自分と相手のタイプが分かったとして、どのように相手に合わせた行動をとれば良いのでしょうか?
「まず、相手にとって心地よい行動が何かを知ることです。先のソーシャルスタイル理論で言えば、端的に結論だけ言ってほしい人もいれば、丁寧に細かな情報を示してほしい人もいます。相手のタイプにより、説明や相談の方法が変わってくるのです。
次に、相手のタイプに合わせて自分自身をコントロールします。いつも冗長に話し過ぎるけど、相手は結論を知りたい人だからコンパクトに整理をしてから伝える。普段は大雑把な説明をしているけれど、相手に合わせて細かく説明をしようといった具合です。意識して自分の行動を変えることができれば、コミュニケーション力は各段に向上します。
最後に、この方法を早く習得するには、相手が困った顔をしていないか、何か言いたそうでないかと相手の反応を見て会話をしていきます。自分が言いたいことを伝えきるのではなくて、あくまでも相手が受け入れているかが基準にします。これが習慣になっていくと、相手に合わせた行動が身に付き、いわゆる『空気を読めない』という事態が減っていきます」。
相手を尊重する対応が大切
このように、自分と相手をタイプ別に客観的に分析できると、相手に歩み寄ることができ、コミュニケーションがしやすくなるのだそう。
「職場には、自分から主張をする人と、しないで聞き役に回る人、感情を表現する人と、抑える人がいます。でも、意見を言わない人が意見を持っていないというわけではないですし、感情が見えにくい人も心の中で喜んでいたり怒っていたりするのです。
これらはコミュニケーションのタイプの一面であり、『仕事ができる、できない』ではなく、その人の持ち味といったところ。そういった多様なタイプの人がいることを理解し、相手を尊重した対応をすることが、コミュニケーションにおいてはとても大事です」。
人のタイプを切り分ける切り口はたくさんあり、ソーシャルスタイルはその一例。相手を色々な角度から見ることが大切であり、そうやって相手を理解しようと意識していると、次第にその感度は高まり、コミュニケーション力も向上してくると松木さんは説明します。
陰キャ、陽キャも、人を分ける一つの切り口ですが、相手をまた違ったフレームから広く見ていくことで、異なる属性があること、思わぬ自分との共通点などにも気付けるのではないでしょうか。
次回は、コミュニケーション力を高めるヒントとなる雑談力について解説します。
取材協力:松木知徳(まつき・とものり)
リクルートマネジメントソリューションズ
ソリューション統括部 コミュニケーションサイエンスチーム チームリーダー
金融業界でキャリアを重ねた後、2007年にリクルートマネジメントソリューションズに入社。コンサルタントとして企業の人材開発・組織開発に従事し、数々の表彰を受ける。現在は、テクノロジーや科学的な理論をもとにした営業生産性向上のための新サービスの開発を行うほか、メディアでの執筆活動、講演なども行っている。