社会人には、同僚や上司、取引先の相手など、不特定多数の人との関わり合いは不可欠。「あの人は苦手……」と言ってばかりもいられないのが現実です。しかし、「陰キャ」であることを自認し、他者との協働を苦手としている人ほど、コミュニケーションは切実な問題かもしれません。

前回、スムーズなコミュニケーションの要は"前提の共有"だと紹介しました。つまり、コミュニケーションをする相手との"相互理解"が大切なのです。では、具体的にはどんな方法で互いの理解を深めていけばいいのでしょうか。

今回ものステップについて、コミュニケーションの理論に詳しい、リクルートマネジメントソリューションズ ソリューション統括部 コミュニケーションサイエンスチーム チームリーダーの松木知徳さんに解説していただきます。

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自分と相手を同じ切り口から分析する

上司、先輩、同僚、取引先の相手など、ビジネスシーンにおいて円滑なコミュニケーションを取りたい相手は様々だと思いますが、相手が誰であり、どんな場面であっても、相互理解を深めるためには、次のステップが基本になると松木さんは言います。

コミュニケーションの3ステップ

1.自分を知る
2.相手を知る
3相手に合わせて行動する

まず初めに行うべきは、"1.自分を知る"こと。話し過ぎてしまうとか、はっきりと物事を言えないなど、自分のコミュニケーションの癖を意識することが重要です。

次に"2.相手を知る"ことです。ここで大事なのが、同じ物事であっても自分と相手はものの感じ方、受け取り方が違うということ。

しかしながら、自分や相手の違いを見つけるにはどうしたらよいのでしょうか? おススメなのは、人のコミュニケーションのタイプを知っておくことです。例えば、"陰キャ""陽キャ"という分け方もタイプ認識の一つであると松木さん。

「ただし、コミュニケーションを円滑にするうえでは、世間一般に言われているような、陰キャ=ネガティブ、陽キャ=ポジティブという優劣のある解釈ではなく、あくまでもその人の特徴や個性として捉えることが大切です」。

  • リクルートマネジメントソリューションズ ソリューション統括部 コミュニケーションサイエンスチーム チームリーダー 松木知徳さん

    リクルートマネジメントソリューションズ ソリューション統括部 コミュニケーションサイエンスチーム チームリーダー 松木知徳さん

ビジネスシーンに役立つ切り口"ソーシャルスタイル"

こうした、人のタイプを分ける切り口は数々ありますが、中でもビジネスシーンにおいて役立つのが"ソーシャルスタイル"であると松木さん。

これは、リクルートマネジメントソリューションズの研修でも用いている「人のコミュニケーション上の特徴」を理解するためのフレームなのだそうです。

「ソーシャルスタイルは、1968年にアメリカの社会学者であるDavid Merrill(デビッド・メリル)が提唱した、行動科学に基づくコミュニケーション理論です。自己主張度×感情表現度の尺度で4つのタイプに分類しており、そこから、それぞれの性格的特徴が推測できます」。

  • ソーシャルスタイル理論

    ソーシャルスタイル理論

「アナリティカル(分析型)、エミアブル(温和型)、ドライビング(実行型)、エクスプレッシブ(直感型)、これら4つのタイプにも優劣はありません。あくまで、性格的特徴やそこからくる行動傾向を知るための1つの目安として捉えることがポイントです」。

大事なのは、自分と相手のタイプを知り、両者の間にどんな違いがあるのかを知ること。それによって、次に続くコミュニケーションステップ"3.相手に合わせて行動する"で、適切な対応がとれるようになると松木さんは言います。

例えば、冷静で現実的な「ドライビング」の上司に報告をする時には、結論を端的に伝えることで、信頼を獲得できます。

もし、自身が几帳面で慎重な「アナリティカル」の場合はあれこれ情報を説明し過ぎずに結論をズバっと伝えるように意識するといった具合です。


「自分は陰キャだから、陽キャとはうまく話せない」ではなく、陽キャの同僚にどういう行動傾向があるのか判断し、その特徴を踏まえてコミュニケーションのきっかけを探す。そうしたステップを取ることで、周囲との関係をより良くすることができるようです。

次回は、コミュニケーション力向上のための次なるステップ、相手に合わせた対応について、ソーシャルスタイル理論に基づきながら解説してもらいます。

取材協力:松木知徳(まつき・とものり)

リクルートマネジメントソリューションズ
ソリューション統括部 コミュニケーションサイエンスチーム チームリーダー
金融業界でキャリアを重ねた後、2007年にリクルートマネジメントソリューションズに入社。コンサルタントとして企業の人材開発・組織開発に従事し、数々の表彰を受ける。現在は、テクノロジーや科学的な理論をもとにした営業生産性向上のための新サービスの開発を行うほか、メディアでの執筆活動、講演なども行っている。