工人舎「SA1F00V」
スペックはそのままに進化を遂げたSA1Fシリーズ
工人舎の「SA1Fシリーズ」は、昨年11月に発表されたサブノートPCだ。8万9800円からという価格や、そのサイズ、スペックなどで、かなり話題をさらった製品なので、ご存じの人も多いと思う。そして今年4月にマイナーチェンジモデルとして登場したのが本製品である。その変更点は、7型液晶がタッチパネルになった点と、この影響で重量が30g増した点だ。
このほかのスペックは基本的に変わりがない。約218(W)×163(D)×25.4(H)mmという小型ボディは健在で、液晶ディスプレイもカーナビで多用されている800×480ドットの解像度を持つ7型液晶だ。筺体デザインも変更されておらず、ブラックモデルとホワイトモデルがラインナップされる点も同様。
キーボードも従来どおり、キーピッチ16.8mm/ストローク1.5mmの独自配列のもの。通常キーボードで右下部分にある記号の一部が最上段に配置される点やファンクションキーの一部がFnキーとのコンビネーションによって利用可能になる点は独特で、これらは慣れるのに時間を要するかも知れない。
ただ、とくに通常の文字の間隔が充分に取られており、成人男性の手の大きさとして規格外ではないと思っている筆者の手でも、打ちやすいと思えるレベルだ。ノートPCの本体サイズが小さいということはキーボードに割けるスペースも自ずと制約が発生するわけで、このなかで生み出されたものとしては秀逸なレイアウトといっていいと思う。
また、製品サイズのわりにインタフェースが豊富な点も大きな魅力といえるだろう。USB2.0×2ポートや、CF/MS/SDとメジャーなメモリカードのスロットを備えている点は、実用性を考えたうえで妥当な実装だと思う。さらに、場所を問わず利用するモバイル製品である以上、音声ボリュームに加えて液晶輝度調整ボタンが独立している点もうれしい。
液晶ディスプレイは従来どおり7型(800×480ドット)。タッチパネルセンサーを挟んだわりには発色や輝度に違和感を感じない。左右にスティックポインタと液晶輝度調整ボタンを備える |
独特の配列のキーボードは、文字入力に特化した感があり、記号やファンクションキーなどをのぞけば使い勝手はいい。前方にタッチパッドを備える点は、一般的なノートPCを利用しているユーザーには使い勝手のよさがある |
ポインティング操作の幅を広げるタッチパネル
さて、本製品最大の特徴となるタッチパネルについて言及していきたい。なお、タッチパネルが搭載されたとはいえ、従来より液晶デバイス脇に設置されていたスティックポインタと、キーボード手前に設置されていたタッチパッドも用意されている。つまり、製品の操作に関して、新しい手段が"追加"されただけで、機能面の削減はない。それによって重量が30g増してしまったのは残念だが、1kgを切る990gに抑制されており、機能追加とのトレードオフとしては妥協できる範囲だ。
もう一つ、タッチパネルを利用するうえの前提条件となるのが、本製品にプリインストールされるOSが、Windows XP Home Editionである点だ。Windows VistaやWindows XP Tablet PC Editionではないため、これらのOSで提供されているWindows Journalなどの機能は実装されてない。ただ、手書き入力も画面脇から出てくる仕組みは実装されないが、IMEパッドを利用することは可能だ。
また、設定関連もWindows標準のコントロールパネルではなく、Apex Material Technologyのドライバによるものとなる。こちらはタッチパネルのキャリブレーションや画面回転などへ対応している。
このタッチパネルの使い勝手だが、特筆すべき点がないほど違和感のないものだった。スタイラスが付属してはいるが、感圧式タッチパネルなので指でも操作が可能。立ったまま操作するときなどは、むしろ手で利用することのほうが多くなると思うが、それでもセンサーの反応は良い。
ちなみに、付属のスタイラスについては、あくまで「おまけ」と考えるべきだと思う。というのも、本製品は前述のとおり筺体デザインが一切変更されていないわけで、スタイラスを本体に収納する構造にはなっていない。スタイラス自身もシンプルなデザインである。付属のクッションPCケースにスタイラス収納ポケットが付けられたので、持ち歩くことが非現実的というわけではないのだが、このあたりはもう一工夫が求められた点ではないだろうか。
スタイラスを収納するために筺体デザインを新たに作るのは、コストの飛躍的なアップにつながりそうなので難しいだろうが、付属のスタイラスを胸ポケットに挿せるようクリップ付きのものにするとか、ストラップを付ける穴の空いたものにするなど、ちょっとしたことでスタイラスがグッと利用しやすくなったと思う。指紋が付くなどの理由で指での操作に抵抗がある人は、気に入ったスタイラスを別途購入したほうがいいと思う。
従来製品から液晶部は180度回転して折りたたむことができたが、タッチパネルの追加で、この構造がより魅力を増している |
付属のスタイラス。100円ライターと比較してもかなり小さく、手の大きな人には使いづらいだろうし、紛失も心配だ |
付属のクッションPCケース。写真右上に新たに追加されたのがスタイラス収納ポケット |
このように、スタイラス収納ポケットに付属スタイラスを収めて持ち運びできる。スタイラス運搬の現実的な方法が、これに限定されるのはちょっと残念だ |
Windows XP Home Edition上で動作するタッチパネルドライバの設定画面。タップ音や長押し時間のタイミングなどを指定できる |
また、タッチパネルのキャリブレーションや画面回転の検出と再キャリブレーションなども行える |
パフォーマンスは実用レベル、バッテリ駆動時間はもう一歩か
最後にスペックとパフォーマンスについてであるが、製品スペックは基本的に従来製品を踏襲している。CPUにAMD Geode LX800を搭載したことでファンレス駆動を実現している。また、本製品の工夫として大きな魅力となっているのが、メモリにSO-DIMM、HDDに2.5インチを利用している点だろう。こうしたミニノート製品では、microDIMMや1.8インチHDDが使われることが多いなか、スペック面で優位に立てる規格を選択しているのだ。それでいて、このサイズと1kgを切る重量である点は特筆できる。
とくにHDDについては、100GBのモデルもラインナップされており、ビジネス用途だけでなく動画やデジカメのRAWファイルなどの大容量データのモバイルストレージ用途としても十分に耐えうるスペックになっている。
そのパフォーマンスは、Geode LXがSSEに対応しないという点や、DirectX未サポートという点も含め、リッチなコンテンツを扱うのはちょっと厳しいといわざるを得ない。例えば、デジカメで撮影した画像や、WMV動作の再生などは問題ないレベルだが、そのレタッチ、編集、エンコードなどは考えないほうが無難だ。とはいえ、モバイルで利用するうえで、いかにストレスなく利用できるかを大前提に作られた製品の性格を考えれば、一定以上の負荷がかかる作業には対しては諦めも必要で、これも一種のトレードオフといえる。
ちなみに、ベンチマークに関しては、本コラムで普段実施している3DMark06、PCMark05ともにSSE非対応ということで実行できない。そのためバッテリ駆動時間のみの測定を行っているが、この結果は2時間45分程度。これは輝度最大でWMVファイルを再生し続けた場合となるが、輝度を2段階下げて同様のテストを行ってみると、2時間58分28秒まで伸びる。5時間という公称駆動時間から想像すると残念な結果ではあるが、晴天下や屋内などで輝度を微調整しつつ利用することで、3時間以上の駆動時間は軽く実現できるだろう。輝度調整ボタンが独立していることから、こうした利用方法も現実的だ。
このあたり、モバイル利用のために必要以上のスペックを求めず、不要なものを徹底的にそぎ落とした感のある本製品。利用シーンが多様であるだけに、タッチパネルという入力インタフェースの追加は、使い勝手の幅を広げた。これでいて10万円を切る9万9800円からという価格はコストパフォーマンスの高さも感じさせ、SA1Fシリーズの魅力がさらに増したといえるだろう。
バッテリは付属の標準バッテリのみで、大容量バッテリなどは用意されない。バッテリのスペックは11.1V/2600mAh |
付属のACアダプタ。モバイル向け製品のACアダプタとしてはオーソドックスなサイズで、デザインもシンプル |
ベンチマーク結果
バッテリ駆動時間 | 2時間44分58秒 |
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スペック表
CPU | AMD Geode LX800 |
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チップセット | AMD Geode CS5536コンパニオン・デバイス |
メモリ | DDR333 512MB×1 (最大1GB) |
グラフィックスチップ | Geode LX800内蔵 |
ディスプレイ | タッチスクリーン付き7型ワイドTFTカラー液晶(800×480ドット) |
HDD | 100GB |
光学ドライブ | なし |
オーディオ | AC'97 |
有線LAN | 内蔵(10BASE-T/100BASE-TX) |
無線LAN | 内蔵(IEEE802.11b/g) |
Bluetooth | 内蔵 |
モデム | なし |
Webカメラ | なし |
メディアカードスロット | 内蔵(CF/SD/MS対応) |
拡張カードスロット | なし |
インタフェース | 外部ディスプレイ(D-Sub15ピン)、USB2.0×2、マイク入力、ヘッドホン出力 |
本体サイズ | 約218(W)×163(D)×25.4(H)mm |
本体重量 | 約990g(バッテリ使用時) |
バッテリ駆動時間(公称) | 約5時間 |
OS | Windows XP Home Edition(Service Pack 2) |
Office | Microsoft Office Personal 2007 |
その他の主なソフトウェア | IVT BlueSoleil for KOHJINSHA、Adobe Reader 7、Norton AntiVirus 2005(90日間限定版)、ebi.BookReader Version 3.0J、InterVideo WinDVD5 for KOHJINSHA |