コーヒーと言えば男女問わず、年齢層も幅広く愛飲されている飲み物。でも、意外に「えっ、知らなかった……」ということってまだまだたくさんある。ここでは、日本におけるトップバリスタの1人で、島根県松江市のカフェ「CAFFE VITA」オーナーである門脇裕二さんにコーヒーのトリビアを解説していただく。
1回目は「アメリカン」。アメリカンコーヒーともいうのだが、読者の中には「そんなコーヒー、初めて聞いた」という人も多いだろう。一体どんなコーヒーのことを言うのだろうか。門脇さんに解説していただこう。
門脇裕二さんによる「アメリカン」解説
「アメリカン1つ」。CAFFE VITAのメニューにはありませんが、そういうオーダーはよくあります。さてこのアメリカン、私の知っている限りでは2つの説があります。
1つは、大阪発祥説。喫茶店に来店した外国人客がたくさんコーヒーを飲むので、通常のブレンドコーヒーを飲みやすいように倍に薄めて提供したという説です。大阪では昔、深煎りのコーヒーが主流だったため、倍に薄めるとちょうどいい濃さになったとされます。さらには、「アメリカのコーヒーは薄い」と認識されていたのも背景にあったようで、薄めて提供するようになったと見られます。
もう1つは、アメリカで焙煎されるコーヒーは浅煎りだった説。アメリカでは昔、深く焙煎すると焙煎時間が長くなり、焙煎による大量の煙でクレームが出るといった問題から焙煎度合を浅くし、焙煎による煙を少なくしていたそうで、浅煎りのコーヒーが出回っていたと聞いたことがあります。
でも現在では、昔ながらの喫茶店では見かけても、自家焙煎店などでは見かけなくなってきています。ちなみにCAFFE VITAにもアメリカンはありません。湯で薄める方法だと、風味や味わいまで薄まってしまうため、個人的にコーヒーとして好きではありません。軽い味わいを求めるのなら、ブレンドで軽い味わいをつくることができますし、シングルオリジンでも、そのような味わいがつくりだせます。と考えると、今後「アメリカン」が無くなる日が来るかもしれませんね。