「サードウェーブコーヒー」の魅力にどっぷりとはまった筆者。コンビニコーヒーからスペシャルティーコーヒーまで幅広く愛飲しており、最近は部屋の芳香剤もコーヒーでいいんじゃないかと思い始めてきた。
コーヒーを楽しむ時、やはり店内の雰囲気は欠かせない。しっとりとした音楽が流れる落ち着いた店内で飲むコーヒーと、ボサノバを聞きながら日の光がたっぷりと入る窓際で飲むコーヒーは別物だ。今回紹介する店舗は、ちょっと変わった雰囲気の中でコーヒーを楽しめる「CAFE KITSUNE(カフェ キツネ)」を訪れてみた。早速同店の「DRIP COFFEE」(税込600円)を飲んでみよう。
ひと口すすってみると、優しい酸味が口に広がった。ほんの少しスパイス感のある香りが鼻を通り、その奥深さが垣間見られる。苦味はほとんど感じないので、「コーヒーって苦いから苦手」という人にはぜひ飲んでみてほしい一杯だ。飲み込むときほんのりとコクが感じられるのもまた良い。
使っているコーヒー豆は1種類。同店のために用意されたオリジナルブレンドだ。基本はホンジュラス産が40%、コロンビアが30%、ブラジル産が30%の比率で配合されているが、季節の入荷度によってその配合が変わることもある。
では、このコーヒーが飲める店舗はどこにあるかというと、東京メトロ「表参道」駅を出て、青山通りから少し中に入ったところだ。高級そうなブティックがあるほか、近くには「ブルーボトルコーヒー 青山カフェ」(東京都港区)もあるので、カフェ巡りをするには絶好の位置。そんなオシャレな道に「CAFE KITSUNE」(東京都港区)がひっそりとたたずんでいた。
普段の休日は、半そで&短パンでコンビニやファミレスに行くか、部屋でアニメを見ているかというカビの生えたような生活しかしてないので、表参道というおしゃれシティに行くと「自分だけ浮いているんじゃないか」と思ってしまう。
石畳のしかれた小道を入っていくと……、
左手にバーカウンターが現れた! ガヤガヤとした青山通りから離れ、さらに小道の中を入ったところに店舗があるのでここだけ別世界のように静か。
中に入って驚くのは、茶室をイメージした店内のデザイン。「ここコーヒー店だよな?」と思ってしまうほど、初めて見るカフェの内装だ。壁紙には"和"を思わせるものが至るところに使われており、中には畳を使ったベンチも用意されていた。どこか懐かしいような雰囲気に心が落ち着く。天井が低く、イスや机もこぢんまりしているからだろうか。窓際やテラスだけでなく、こういった和な店内でもコーヒーを楽しめるというのは新たな発見だ。
和をイメージしたものは、内装だけではない。茶室には欠かせないものを使った「抹茶ラテ」(税込680円)も同店の看板メニューの1つだ。
「抹茶ラテ」は甘さが控えめで、抹茶の爽やかな苦味を堪能できる。砂糖系の甘さが少ない分、温められてたミルクのほっとする甘さを感じられる味わいだ。茶室デザインの店内で飲んでいると、「もはやここはコーヒー店じゃないかもしれない」と錯覚し始めてきた。
しかもラテアートが美しすぎる。コーヒー店でアルバイトしていた時、何度かラテアートに挑戦してみたが、手先が不器用すぎて成功したことがない。コツをつかんだ後輩たちにバカにされ、枕を濡らしたことは記憶に新しい。
しかし、なぜ店名が「キツネ」なのだろうか。確かに茶室のような雰囲気なので和な店名にはうなずけるが、なぜ動物のキツネなのだろう。マネージャーの橋本和典氏によると、親会社であるブランド「MAISON KITSUNE(メゾン キツネ)」はパリの音楽レーベルから始まったそうだ。その後にアパレルブランドを立ち上げ、またアートやカフェなどさまざまなジャンルで活動し、まるで「日本の化けキツネ」のようにいろんな面を持つことから、「キツネ」と名づけられたとのこと。
「サードウェーブコーヒー」を楽しむのは、コーヒー豆だけではない。バリスタの入れてくれたコーヒーを心ゆくまで味わえる空間や雰囲気もまた、店舗に行かなければ体験することのできないものだ。「CAFE KITSUNE」はそのことを教えてくれた。
※「CAFE KITSUNE」「MAISON KITSUNE」のEには、どちらもアクサンテギュが付く