前回、前々回と日本サエコのエスプレッソマシンを使って、基本のエスプレッソをマスターしつつ、簡単なアレンジドリンクも紹介してきた。これだけでも様々なドリンクをつくることができるが、さらにエスプレッソの世界を広げるためになくてはならないもの……それはフォームドミルクである。カプチーノやカフェラテにのっているあのふわふわとしたフォームのことだ。
カフェに行ってバリスタを観察していると、エスプレッソマシンに付いているノズルをピッチャーに入れ、チリチリチリ……という音を立てながらミルクを温めているシーンに遭遇すると思う。これが手立てで行うミルクのスチーミング作業だ。ノズルから出てくる蒸気を使ってミルクを温めているのだが、この作業が非常に難しい。以前私はコーヒーセミナーに出席して、実際にエスプレッソマシンでミルクをスチーミングしたが、ものすごい失敗をしてしまったことがある。
ノズルからは勢いよく蒸気が噴射される。このノズルがミルクの水面付近に位置していたらどうなるか……。答えは「あたり一面にミルクが飛び散る」である。私はもちろんのこと、周囲にいた人やマシンにまでミルクを掛けてしまった。「そんな風に脅かされては、フォームドミルクづくりに挑戦できないよ」という声も聞こえてきそうだが、そう結論を急いではいけない。
今回、日本サエコから紹介していただいた「手動式エスプレッソ & カプチーノマシン サエコ マジックカプチーノ」には、初心者でも簡単にフォームドミルクをつくることができる「カプチナトーレ」という機能が付いている。マシンにつながっているチューブをミルクに入れ、つまみを回すと、きめ細かいフォームが出てくる仕組み。私のようにミルクを撒き散らしてしまう心配も無い、安心の機能なのだ。そこで、まずはカプチナトーレを使ったフォームドミルクづくりを解説していくとしよう。
まずは入門編! フォームドミルクづくり
1.ピッチャーやグラスなどの容器にミルクを注ぎ、チューブを入れる。2.マシン本体についているつまみを回す。
3.フォームドミルクがトロトロと出てくる。チューブが暴れることがあるので、注意しておく。
4.フォームドミルクの完成。
カプチナトーレには、簡単にフォームドミルクをつくることができるといった点以外に、ミルクを節約できるといったメリットもある。手立てのフォームドミルクの場合、例えばカプチーノ1杯分のフォームドミルクがつくりたくても、少量のミルクではうまくスチーミングできないため、ミルクを多めに使う。つまり、ロスが出てしまう。しかしカプチナトーレの場合、必要な量のミルクだけをチューブで吸い上げていくので、ロスが出ない。なんとも経済的な機能なのだ。
とはいえ、「もっとしっかりとしたフォームをつくりたい! 」といった個人個人の要望に応えてくれるのはやはり手立てのフォームドミルクである。ここからは、プロ志向(!?)な方のために、手立てのフォームドミルクのつくり方を紹介する。
フォームドミルクづくり、上級編
1.ピッチャーにミルクを注ぐ。ノズルは先端部がミルクで隠れるくらいまで入れ、スチーミング開始。2.フォームが出来上がっていくにつれ、ミルクのかさが増えてくるので、ピッチャーを徐々に上に持ち上げ、ノズルをピッチャーの底のほうへと移動させる。フォームが完成したら蒸気を止め、ノズルをピッチャーから出す。ピッチャーをトントンと叩いて、フォームを安定させる。
3..フォームドミルクの完成。カプチナトーレのフォームより、しっかりとした仕上がりになる。
カプチナトーレを使う場合も、手立てでフォームドミルクをつくる場合も注意したいことがある。どちらも蒸気を使ってフォームドミルクをつくるのだが、蒸気の経路に水が溜まっていることがある。そのままスチーミングすると、ミルクの中に湯が混入してしまうので、カプチナトーレはチューブをミルクに入れる前に、手立ての場合もノズルをピッチャーに入れる前に蒸気を出し、湯が入らないようにする必要がある。
今回は2種類の方法でフォームドミルクをつくってみたが、前述の通り、手立てのフォームドミルクは難易度が高い。何度も挑戦しながら、ベストなミルクの温度やフォームのきめの細かさ、ピッチャーの動かし方などを覚えていくことが必要である。また、実際にカフェや喫茶店に行って、プロのバリスタがつくるフォームドミルクを見て勉強するのもおすすめだ。
カプチナトーレで手早くフォームドミルクをつくるか、手立てにこだわるか。お好みの方法を選んでほしい。