前回に引き続き、日本一のバリスタで「CAFE ROSSO」のオーナーバリスタでもある門脇洋之さんにコーヒーレシピを教わる。今回は、豆乳を使ったアイスドリンクを紹介しつつ、門脇さんのバリスタとしてのバックボーンにも触れていこう。

島根・安来のカフェ「CAFE ROSSO」オーナーバリスタの門脇洋之さん

「アイスソイラテバニラ」

材料(1人分)
豆乳 180cc / バニラシロップ 20cc / エスプレッソ 20cc / 氷 適量

つくり方

1.氷を入れたグラスに豆乳を注ぐ。
2.さらにバニラシロップを入れ、混ぜる。
3.静かにエスプレッソを注ぎ入れ、2層に仕上げる。

ミルクの代わりに、ヘルシー感が魅力の豆乳を使ったアイスのフレーバーラテ。「豆乳の独特な味は、苦手な方もいますよね。バニラシロップを加えることでこの特有の味が抑えられ、飲みやすくなるんです」と門脇さん。

またアレンジとして、「アイスソイラテバニラ」のスムージー版も教えていただいた。使用する材料は同じ。エスプレッソと同量のバニラシロップを合わせて冷凍庫に入れ、時々スプーンで混ぜながらシャーベット状に凍らせる。これをミキサーに入れ、豆乳と一緒に攪拌すればスムージーの出来上がり。

漠然とした思いから明確な意志へ

さて。一通りレシピを教えていただいたところで、1つ気になったことが。門脇さんが「CAFE ROSSO」を開業したのは1999年。「スターバックス コーヒー」が日本に上陸し、カフェラテやエスプレッソといった言葉が徐々に一般に浸透していった頃だ。しかし、開業の準備期間を考えると、門脇さんがバリスタになろうと決意したのはその前のタイミングとなる。門脇さんは、一体何がきっかけでバリスタを志したのだろうか。この連載の趣旨とはずれてしまうが、トップバリスタの貴重なお話を皆さんにもお伝えたいと思う。

「CAFE ROSSO」では、ティラミスや木いちごのケーキなど、自家製スイーツを提供している

弟の裕二さんの回でもお話したとおり、父の美己さんは、島根・安来でコーヒーショップ「サルビア珈琲」を営んでいる。父の姿を見て育った門脇さんは、長男ということもあり「漠然と、父のあとを継がないといけないのだろうなと思っていました」。当時は、「父の仕事を継ぐ="コーヒー"を職業にする」ということに、明確な理由や動機はなかった。しかし、中学の頃、美己さんが自家焙煎を始めたのが転機になった。子供心にも、「今までのコーヒーとは違う。おいしい! 」と感じたのだそう。

高校を卒業する頃には、「ケーキとコーヒーが楽しめるようなカフェを持ちたい」と具体的なビジョンを持っていた。それは、「父の店は、年配のお客が多い。でも自分は若い人にも来てもらえるような店にしたかった」というのが理由だった。

イタリアのエスプレッソに惚れ込む

そこで大阪のパティスリーで菓子職人としての修行をし、24歳の時、島根に戻ってきた。美己さんの店を手伝いながら、東京での研修にも参加。今度はコーヒー分野での修行をしていった。そんな中、東京にオープンしたばかりのスターバックスでエスプレッソやカフェラテを初めて飲み、衝撃を受けたという。ここから"エスプレッソ"というものに魅力を感じ始め、日本人バリスタの第一人者である横山千尋さん(現・フォルトゥーナ専務取締役)の実演を見たり、講習会に参加したりと、イタリアのエスプレッソがどういうものかを学んでいった。

イタリアに行き、自分の店の明確なイメージを掴むことができたという

「初めてエスプレッソを飲んだのはシアトル系のスターバックスなのに、イタリアに興味を持ったのですか? 」と聞くと、「エスプレッソのルーツはイタリアだから」との答えが。その後、イタリアに渡り、ナポリやローマ、フィレンツェ、モデナ、ミラノと北から南までバール行脚をし、自分の目指す味を探していった。そこで見つけたのがミラノの「COVA」。ミルクの甘さがありつつ、コーヒー感もしっかりと伝わってくるこの店の味に当時は惚れ込み、理想とした。

目指すべき味を見つけた門脇さんは帰国後、早速開業の準備へと取り掛かるのだが、開業後、競技会に挑戦し、世界2位になるお話は次回のお楽しみ。