今回からは、前回まで紹介してきた門脇裕二さんの兄、洋之さんにご登場いただく。門脇洋之さんは、2001年、2003年、2005年と国内のバリスタ競技会で優勝、そして2005年にはバリスタの世界選手権「ワールド・バリスタ・チャンピオンシップ」で日本人最高順位である準優勝となった。ここからは、日本におけるトップバリスタの1人である門脇さんに教えていただいたオリジナルレシピを紹介していく。

島根・安来のカフェ「CAFE ROSSO」(カフェ・ロッソ)オーナーバリスタの門脇洋之さん。1973年島根県生まれ

あっという間に業界内で注目の的に

2008年11月、「ミニストップ」限定発売の「達人の珈琲 カフェ モカ」。門脇さん監修だ

この記事を読むまで、門脇さんの存在を知らなかった人も、もしかしたら知らず知らずのうちに門脇さんのコーヒーを飲んでいたかもしれない。ミニストップのチルドカップ珈琲シリーズ「達人の珈琲」の監修を門脇さんが担当しているからだ。2005年に登場した同シリーズは人気シリーズに成長、数々の新商品が登場している。

そんな門脇さんがオーナーを務めるカフェ「CAFE ROSSO」(カフェ・ロッソ)は、島根県の安来市にある。JR安来駅から車を走らせること約10分。国道沿いに見えてくる赤い看板が目印。天井を高く取った店内は開放感にあふれ、窓からは汽水湖が見える。なんともゆったりとした雰囲気が漂う。

「CAFE ROSSO」店内。カウンター隣には製菓コーナーもあり、ここでつくられた自家製スイーツも好評だ

1999年、25歳の時に同店をオープンした後は、前述のように数々の競技会で優勝。あっという間に業界内にその名を轟かせていった。当時、私はカフェ関連の雑誌編集をしていたのだが、「島根にすごいバリスタがいる。すぐに取材をしないと」と編集長が騒いでいたのを覚えている。

そんなトップバリスタである門脇さん。経歴だけを見ていると、ひるんでしまうところだが、実際にお会いした門脇さんは意外や意外、ちょっと控えめな印象。しかし、お話を聞いていくと、控えめながらもコーヒーに対する情熱がひしひしと伝わってきた。初めて飲んだエスプレッソ、バリスタになるまでの苦労、競技会秘話、そしてこれから目指すもの……そんなお話をお聞きしたのだが、まずは門脇さん考案のエスプレッソドリンク3品をご紹介。そのあとたっぷりと、トップバリスタの歴史をお話しするとしよう。

「カフェモカ」

材料(1杯分)
チョコレートソース 10cc / ヘーゼルナッツシロップ 10cc / エスプレッソ 20cc / スチームドミルク 150cc

つくり方

1.ショットグラスにチョコレートソース、ヘーゼルナッツシロップを入れる。
2.1のショットグラスにエスプレッソを抽出し、全体が合わさるように混ぜる。これをカップに入れておく。
3.2のカップにスチームドミルクを注ぎ入れる。ここでは特別に、うさぎのフォームアートを施してもらった。

オーソドックスなカフェモカに、ヘーゼルナッツシロップをプラスしたホットドリンク。アレンジをするならナッツつながりで、クラッシュアーモンドをトッピングするのがオススメ。アーモンドは香ばしさを出すために、オーブントースターなどでローストしてから使おう。

そして、スチームドミルクをつくる際のポイントが1つ。「スチームドミルクは60℃前後が適温です。温度計がない場合は、指をつけてみて『熱いけれどもギリギリ触れる』といった状態を目指してください」。

「アイスバナナモカ」

材料(1杯分)
ミルク 180cc / チョコレートソース 10cc / バナナシロップ 10cc / エスプレッソ 20cc / 氷 適量 / トッピング用ホイップクリーム・チョコレートソース 共に適量

つくり方

1.氷を入れておいたグラスにミルクを注いでおく。ショットグラスにチョコレートソース、バナナシロップを入れる。
2.1のショットグラスにエスプレッソを注ぎ、全体が合わさるように混ぜる。
3.2をミルクが入ったグラスへ静かに注ぎ入れる。
4.トップにホイップクリームのせ、チョコレートソースをかけたら完成。

アイスカフェモカにバナナシロップをプラスしたこちらは、"チョコバナナ"を連想させるような親しみ感のある組み合わせ。「カフェモカ」も「アイスバナナモカ」もチョコレートシロップが入り、この分量を誤るとエスプレッソの味わいが消えてしまう。どちらのドリンクも配合が重要になってくるのだ。エスプレッソの味は淹れる人によってかわってくるもの。このレシピでつくってみて「エスプレッソの味が強いかな? 」と感じたら、砂糖を加えて苦味のカドをとってあげるといいのだとか。

次回は豆乳を使ったアイスドリンクを紹介しつつ、門脇さんのバリスタとしてのバックボーンにも触れていく。