高度な技術が必要に思えるサイフォンも、正しい使い方さえ覚えてしまえば自宅で使用することができる。基本的な抽出法は前回紹介したので、今回はコーヒー粉を通常の1.5倍、2倍にして抽出したコーヒーを使ったミルクコーヒーやアイスコーヒーを取り上げる。教えていただくのは前回同様、東京・鬼子母神の「リールズ」の宮宗俊太さんだ。

読者の方の中には、「どうして濃い目に抽出する必要があるの? 」と不思議に思う方もいるかもしれない。理由は、アイスコーヒーの場合は「氷が入るので、コーヒーが薄まるから」である。ミルクコーヒーは、通常の濃さのコーヒーを使うケースもあるが、濃い目に抽出しておくことでミルクとあわせてもコーヒーの香りや旨みが生きるというメリットがある。せっかくサイフォンでコーヒーを抽出するのだから、ミルクコーヒーをつくるにしてもコーヒーの風味を大切にしてもらいたい。そこで、今回は濃い目に抽出したコーヒーでミルクコーヒーをつくるというわけだ。

また、サイフォンはそういった抽出法に適した器具でもある。「ペーパードリップで濃い目のコーヒーを淹れようとしても、なかなかうまくいかないものですが、サイフォンの場合は粉の量を単純に増やすだけで、簡単に濃い目のコーヒーを淹れられます」と宮宗さん。では早速、アイスコーヒーをつくってみよう。

※店では、フラスコに入れた湯を加熱する熱源としてサイフォン専用のガスバーナーが使われるが、ここでは一般家庭でも導入しやすいアルコールランプを使用する。

サイフォンでアイスコーヒーに挑戦

1.ロートに通常の倍量のコーヒー粉(ここでは2杯抽出なので、専用スプーン4杯分=48g)を入れ、前回同様に抽出する。
2.氷を入れたグラスにコーヒーを注ぐ。
3.完成したアイスコーヒー。

おわかりの様に、基本的な方法は前回と同じで粉の量を2倍にするだけである。サイフォンを1セット持っておくだけで、冬はホット、夏はアイスと1年中おいしいコーヒーが楽しめるのだ。さて次はミルクコーヒーをつくってみよう。

コーヒーの風味を楽しむミルクコーヒー

1.ロートに通常の1.5倍のコーヒー粉(ここでは2杯抽出なので、専用スプーン3杯分=36g。湯は2杯分を使用)を入れ、前回同様に抽出する。
2.カップにコーヒーを注ぎ(全体の半量)、温めておいたミルク(60℃を超えないように注意)を注ぎ入れる。
3.完成したミルクコーヒー。

ロートに入るコーヒー粉の量には限界があるが、このようにサイフォンなら簡単にコーヒーの濃さがコントロールできる。ただし、竹ベラでかき混ぜる際には湯やコーヒー粉が溢れないように注意しよう。

今回紹介したアイスコーヒーもミルクコーヒーもオーソドックスなメニューだが、それだけにコーヒー自体の抽出にちょっと工夫するだけで、おいしさが格段にアップする。またこれは、これまでに紹介したその他の抽出法でも同様のことが言える。アレンジをするのも楽しいが、まずは基本となるコーヒーの淹れ方をしっかりとマスターしてもらいたい。基本なくして応用なし。コーヒーにも同じことが言えるのだ。

「リールズ」の宮宗俊太さん
会社員として営業職を経験した後、「珈琲サイフォン」河野雅信代表取締役社長のもとでコーヒーの技術を学ぶ。2006年4月「リールズ」を開業。

写真:キミヒロ