「東京は物価が高いので、生活費が高い」または、「地方は物価が安いので、生活費が東京に比べてあまりかからない」と世間でよく言われていることは、本当なのでしょうか。
連載コラム「地方の生活コストは本当に安いのか?」では、ファイナンシャル・プランナーの高鷲佐織が、実際に東京から地方へ移り住んで感じたことを交えながらお伝えいたします。
都道府県別・喫茶代ランキング
東京在住時、商業施設が建ち並ぶ地域に住んでいました。チェーン展開している喫茶店があふれ、レジには行列ができ、平日の昼間でも席が空いていることは少なく、ゆっくりとコーヒーなどを飲みながら過ごすことは難しかったです。
現在住んでいる地域は、チェーン展開している喫茶店の数は少ないですが、喫茶店1つ1つの店舗面積は大きく、席と席の間にはほどよい空間があり、ゆったりとした設計となっています。落ち着いて本を読んだり、調べものをしたり、自分の時間を過ごすことができるので、東京在住時より頻繁に足を運ぶようになりました。今回は、地域ごとの喫茶代などへの支出について調べてみました。
都道府県庁所在市及び政令指定都市別にみると、平成26年(2014年)から平成28年(2016年)平均の喫茶代の支出ベスト3は、1位岐阜市1万5,018円、2位名古屋市1万2,945円、3位東京都区部9,307円(1位~3位を赤色で表示)となっています。
1位岐阜市と2位名古屋市は、全国平均6,045円の2倍以上です。他の地域に比べて、喫茶店を利用する習慣がある地域なのでしょう。
また、総務省統計局の平成25年~平成27年の家計調査でも、1位名古屋市1万4,301円、2位岐阜市1万3,894円、3位東京都区部8,879円となっていて、東海地域が連続で上位を占めています。
都道府県別・コーヒー購入代ランキング
では、喫茶代の支出が多い岐阜市や名古屋市が、コーヒーを好きな人が多いのかというとそういう訳ではないようです。
上記の表2をみてみると、コーヒー購入代では、1位奈良市8,000円、2位京都市7,962円、3位大津市7,826円と続き、岐阜市と名古屋市は、上位20位以内にも入っていません。ちなみに、岐阜市は34位、名古屋市は39位です。したがって、コーヒーを好きな人が多い地域の方が、喫茶店を利用する頻度が高いということではないようです。
もう1つ興味深いことは、緑茶や抹茶のイメージが強い奈良市や京都市が、意外にもコーヒー購入代が他の地域に比べて多いことです。
終わりに
今回は、喫茶代とコーヒー購入代を取り上げました。愛知県や岐阜県にはモーニングサービスという独特の喫茶店文化があることを知っている方も多いのではないでしょうか。
モーニングサービスとは、1杯のコーヒー代のみでトースト、卵やサラダなどが付いてくるサービスです。店によっては、デザートや果物が付いてくることもあります。また、全国的にチェーン展開しているコメダ珈琲店の本社は、愛知県名古屋市にあります。コメダ珈琲店は、くつろげる空間が提供され、モーニングサービスもあります。名古屋式の喫茶店が全国的に支持されているようです。
喫茶代の支出の多い地域では、単にコーヒーを飲みに喫茶店に訪れるというのではなく、食事をしたり、友人や家族とゆっくりとくつろいだり、喫茶店で楽しむ文化が根付いているのだと思います。
私個人としては、東京在住時に比べて、現在住んでいる地域の喫茶店に入る際、レジの行列に並び、狭いスペースでコーヒーを飲むということがなくなり、広い喫茶店内でゆっくりとくつろぐことができるので嬉しいです。
高鷲佐織(たかわしさおり)
ファイナンシャル・プランナー(CFP 認定者)/1級ファイナンシャル・プランニング技能士/DCプランナー1級。資格の学校TACにて、FP講師として、教材の作成・校閲、講義に従事している。過去問分析を通じて学習者が苦手とする分野での、理解しやすい教材作りを心がけて、FP技能検定3級から1級までの教材などの作成・校閲を行っている。また、並行して資産形成や年金などの個人のお金に関する相談を行っている。