「東京は物価が高いので、生活費が高い」または、「地方は物価が安いので、生活費が東京に比べてあまりかからない」と世間でよく言われていることは、本当なのでしょうか。

連載コラム「地方の生活コストは本当に安いのか?」では、ファイナンシャル・プランナーの高鷲佐織が、実際に東京から地方へ移り住んで感じたことを交えながらお伝えいたします。

ふるさと納税とは

12月に入り、年賀状の作成や年末年始の旅行や帰省の準備で慌ただしく過ごしている方が多いと思います。平成29年のふるさと納税は、年内の申し込みが必要となりますので、ふるさと納税をしようと思っている方は、早めに手続きを行ってください。

ふるさと納税をご存じでない方もいらっしゃると思いますので、まずは、「ふるさと納税とは何か?」を説明します。

ふるさと納税には「納税」という言葉がついていますが、実際には、自分が育ったふるさとや、応援したい自治体への「寄附」です。そして、寄附を行った自治体から、多くの場合、寄附のお礼として「返礼品」を受け取ることができます。ただし、現住所の自治体にふるさと納税をした場合、ふるさと納税は受け入れるが、返礼品は送付しないとする自治体が多いです。自治体に寄附をした場合、一般的に、確定申告を行うことで年間の寄附金総額のうち2,000円を超える部分について税金の控除を受けることができます。

  • 表1 ふるさと納税の仕組み

税金の控除を受けるためには、原則として表1のように確定申告を行わなければなりません。しかし、確定申告の不要な給与所得者(会社員など)が、ふるさと納税を行う場合、確定申告を行わなくても、ふるさと納税の税金の控除を受けられる仕組み「ふるさと納税ワンストップ特例制度」を利用できます。これは、ふるさと納税先の自治体数が5団体以内であれば、ワンストップ特例申請書を当該自治体に提出することで、確定申告が不要になるという制度です。 なお、ワンストップ特例制度を利用した場合、所得税からの控除はなく、ふるさと納税を行った翌年の6月以降の住民税から控除されます。

寄附金額には、注意点があります。実質自己負担額が2,000円のみで、寄附した金額の差額を税金の控除として受けられるには、寄附の上限額があります。上限額は収入や家族構成などで異なります。総務省や「ふるさとチョイス」などのふるさと納税ポータルサイトを参考に、ご自身が自己負担額2,000円で行うことができる、ふるさと納税額の目安を知っておくとよいでしょう。

都道府県別・ふるさと納税の受入額及び受入件数

次に、ふるさと納税の受入額及び受入件数を都道府県別にみてみましょう。全国では、ふるさと納税の受入額は約2,844億円、受入件数は約1,271万件で、受入額、受入件数ともに1位は、北海道です。受入額は全体の約9.5%を占めています。北海道は、旅行先としても人気があり北海道を訪れた方々が多く、更に北海道ならではの特産物の返礼品も多いのでふるさと納税先として人気なのかもしれません。ふるさと納税の受入額では、2位山形県、3位宮崎県と続いています。

  • 表2 平成28年ふるさと納税の受入額及び受入件数(都道府県別)
    ※出典:総務省自治税務局市町村税課「ふるさと納税に関する現況調査結果」の「ふるさと納税の受入額及び受入件数(都道府県別)」平成29年7月4日

今度は、ふるさと納税の受入額及び受入件数を自治体ごとにみてみましょう。自治体としてふるさと納税の受入額の1位は宮崎県都城市7,333百万円、2位は長野県伊那市7,205百万円、3位は静岡県焼津市5,121百万円となっています。

上位3自治体は、それぞれ独自のふるさと納税特設サイトとしてホームページがあり、返礼品をアピールするだけではなく、寄附金の使い道や、寄附金の実績などを掲載しています。寄附した側も、自分が行った寄附がどのように活用されているのかを知ることができ、透明性のある自治体が支持されているのかもしれません。

  • 表3 平成28年ふるさと納税の受入額及び受入件数(都道府県別)
    ※出典:総務省自治税務局市町村税課「ふるさと納税に関する現況調査結果」の「ふるさと納税の受入額及び受入件数(受入額の上位20団体)」平成29年7月4日

終わりに

今回は、ふるさと納税を取り上げました。自分が育った地域やお世話になった地域はいつまでも心の中にあり、ふとしたときに思い出します。そこに住んでいれば地域ボランティアなどに参加して地域を活性化するサポートができますが、離れて暮らしていると、その地域をどうサポートすればよいのかわからないという方も多いと思います。ふるさと納税はそのような方々が気軽に寄附という形で地域をサポートできる制度だと思います。

返礼品だけでふるさと納税先を選ぶのではなく、「活性化してほしい、いつまでも元気のある地域であってほしい」という気持ちを込めてふるさと納税を行うことが、ふるさと納税制度がこれからも健全に維持されていく大きな要素だと思います。

高鷲佐織(たかわしさおり)

ファイナンシャル・プランナー(CFP 認定者)/1級ファイナンシャル・プランニング技能士/DCプランナー1級。

資格の学校TACにて、FP講師として、教材の作成・校閲、講義に従事している。過去問分析を通じて学習者が苦手とする分野での、理解しやすい教材作りを心がけて、FP技能検定3級から1級までの教材などの作成・校閲を行っている。また、並行して資産形成や年金などの個人のお金に関する相談を行っている。