「子育てにお金ってだいたいどれくらいかかるの? 」「東京暮らしと地方暮らしとでは、子育てにかかるお金に違いがあるの? 」「教育資金づくりってどんなふうにするの? 」「教育費が足りない場合どうしたらいいの? 」など、子育て真っ最中の方、またはこれから子育てする方には、こんな疑問や不安がある方も多いのではないでしょうか。
前回につづき、今回は「子育てとお金」をテーマに有益な情報をご紹介していきます。「出産にかかるお金」「教育費の目安」「教育資金づくりの方法」「教育費を地域別で比較」など、さまざまな角度から、ファイナンシャル・プランナーの高鷲佐織が「子育てとお金」についてお伝えしていきます。
今回は、「子育てする前」とでもいいましょうか、「出産とお金」についてお伝えしたいと思います。出産をするにも、お金はかかります。一方で、出産すると健康保険等から給付される制度もあります。今回は出産に係る「費用」と「給付」について見てみましょう。
出産に係る費用
まずは、出産費用について見てみましょう。公益社団法人国民健康保険中央会の調べによりますと、平均的な出産費用は、約51万円(505,759円)というデータがあります。
その内訳は下表のとおりです。
《項目ごとの平均額》
【3】の室料差額は、あくまでも「平均費用」です。場合によっては、1日につき数万円追加されることもあります。【4】分娩料の他に、無痛分娩を希望されたり、帝王切開などの場合は、さらに追加費用が発生します。【8】の産科医療補償制度の掛金としての負担額は、16,000円としている医療機関等が多いようです。
※出典:「正常分娩分の平均的な出産費用について(平成28年度)」(公益社団法人国民健康保険中央会)を執筆者が加工して作成
※病院・診療所・助産所の合計値である
※数値については、出産育児一時金の直接支払制度専用請求書を集計し算出している。なお、直接支払制度とは、妊婦さんが出産費用を支払うために、あらかじめまとまった現金を用意しなくてもよいように、出産一時金を出産した本人に支給するのではなく、直接医療機関に対して支払う制度である
出産にかかる給付
次に出産にかかる主な2つの給付を見てみましょう。
出産育児一時金
「出産育児一時金」とは、健康保険や国民健康保険等に加入している被保険者またはその被扶養者が出産したときに、1児につき42万円が支給されます。したがって、双子を出産した場合は、84万円(42万円×2人分)が支給されます。ただし、産科医療補償制度に加入していない医療機関等で出産した場合は、1児につき404,000円となります。
出産手当金
「出産手当金」とは、出産のために会社を休み、その間にお給料等の支払いを受けられなかったときに支給されます。支給される対象期間は、出産の日以前42日(双子以上の場合は98日)から出産の翌日以後56日目までの間で、会社を休んだ日数分となります。なお、出産が予定日より遅れた場合、その遅れた期間についても支給されます。
出産手当金の1日あたりの金額は、「支給開始日以前の継続した12カ月間の各月の標準報酬月額を平均した額」÷30日」の3分の2相当額となります。
会社員の方でこれから出産のご予定の方は、ざっくりと、「お給料を30で割ったものの3分の2くらいの金額」を概算として覚えておくとよいでしょう。
出産育児一時金は、健康保険や国民健康保険等、加入している医療保険の種類にかかわらず支給されます。一方、出産手当金は、健康保険に加入している会社員の方は支給されますが、国民健康保険に加入している個人事業主等の方々は、通常、支給されません。
なお、出産育児一時金や出産手当金は、どちらも課税されません。
出産費用は決して少ない金額ではありませんが、できるだけ給付でカバーできるような制度が整っています。とはいえ、出産までの入院中に使う日用品などは、自己負担となります。現在は、クレジットカード等のキャッシュレス決済に対応している医療機関等も増えてきましたが、出産前に現預金の準備はしたほうがよいでしょう。