「東京は物価が高いので、生活費が高い」または、「地方は物価が安いので、生活費が東京に比べてあまりかからない」と世間でよく言われていることは、本当なのでしょうか。
連載コラム「地方の生活コストは本当に安いのか?」では、ファイナンシャル・プランナーの高鷲佐織が、実際に東京から地方へ移り住んで感じたことを交えながらお伝えいたします。
「地震保険」とは
現在私が住んでいる地域は、東京よりも頻繁に地震があります。何度経験しても、地震は怖いです。慣れることはありません。地震大国と呼ばれる日本で暮らす限り、地震に対して備えることは大切です。その1つに地震保険があります。
地震保険とは、居住用の建物や家財が地震だけでなく、噴火や津波を原因とする被害に遭った場合に補償が受けられる保険のことです。具体的には、地震で家が壊れた場合や、地震による火災で家が燃えた場合、噴火に伴う噴石で家が壊れた場合、地震による津波で家が流された場合などの損害が対象となります。契約方法としては、地震保険は、単独で契約することはできません。必ず火災保険とセットで契約することになっています。
つまり、火災保険では、原則として、地震が原因で被害に遭った場合、その損害については補償されません。なお、地震保険の契約を希望しないのであれば、その旨を保険の申込書に記載することで、地震保険の契約不要とすることができます。また、地震保険の保険金額の設定には、限度額が決められています。火災保険の保険金額の30~50%の範囲内で、建物は5,000万円まで、家財は1,000万円までになります。
地震保険料はどうやって決まるのか
地震保険料は、保険会社によって異なるわけではありません。どの保険会社と契約しても同一の保険料となります。では、地震保険料は、どうやって算出されるのか。「保険金額×保険料率」で求められます。この保険料率は、建物の構造や所在地等によって異なります。
例えば、鉄骨造やコンクリート造の建物と、木造の建物では、構造が違うため地震の揺れによる損壊や火災による焼失などのリスクも異なります。また、地震発生リスクなどは地域により異なるため、各都道府県を地震の危険度の低い順に1等地から3等地までの3つの地域に分けて区分しています。こうした違いを保険料率に反映させています。
地震保険料の算出に際し、過去の大規模な地震が原因で保険金の支払いがあった地域が、危険度が高い3等地となり地震保険料が高くなるというわけでありません。過去の保険金の支払いに関するデータを直接的に地震保険料に反映させているのではなく、専門機関が将来どの程度の被害が発生しうるかシミュレーションを行い、地震保険料の算出をしています。
都道府県別の地震保険契約の普及度合い
次に、都道府県別で地震保険の普及の度合いを見ていきたいと思います。この度合いを見る1つの指標として地震保険「付帯率」というものがあります。これは、当該年度に契約した火災保険(住宅物件)の契約件数のうち、地震保険も契約(付帯)した件数の割合を示したものです。
付帯率が高い順(青色で表示)では、宮城県が86.4%、高知県が84.8%、宮崎県が79.0%であり、逆に付帯率が低い順(赤色で表示)では、長崎県が45.0%、佐賀県が50.1%、北海道が52.4%となっています。この結果を見ると、表1の地震保険の等地区分で、地震の危険度が最も高い3等地の各都道府県が、地震保険の付帯率も高いということではないことがわかります。地震に対するリスクを強く感じている地域が付帯率を上げているのかもしれません。
終わりに
今回は、地震保険を取り上げました。1995年1月の阪神・淡路大震災以降多くの人が地震保険の必要性に気づき始め、保険契約件数は増加傾向となり、その後2011年3月の東日本大震災もあり契約件数の増加は続いています。地震保険は強制加入ではありません。地震保険の契約を迷っている方は、表1の等地区分を参考にご自身が住んでいる地域は、どの等地なのか、また居住している建物は、木造か、非木造なのか等を確認し、改めて地震に対するリスクを考えてみてもよいのではないでしょうか。
執筆者プロフィール : 高鷲佐織(たかわしさおり)
ファイナンシャル・プランナー(CFP 認定者)/1級ファイナンシャル・プランニング技能士/DCプランナー1級。
資格の学校TACにて、FP講師として、教材の作成・校閲、講義に従事している。過去問分析を通じて学習者が苦手とする分野での、理解しやすい教材作りを心がけて、FP技能検定3級から1級までの教材などの作成・校閲を行っている。また、並行して資産形成や年金などの個人のお金に関する相談を行っている。