「東京は物価が高いので、生活費が高い」または、「地方は物価が安いので、生活費が東京に比べてあまりかからない」と世間でよく言われていることは、本当なのでしょうか。
連載コラム「地方の生活コストは本当に安いのか?」では、ファイナンシャル・プランナーの高鷲佐織が、実際に東京から地方へ移り住んで感じたことを交えながらお伝えいたします。
地方の路線バスで温泉地へ
東京在住の頃は、最寄りのバス停が自宅の玄関から徒歩1~2分のところにあったので、よく路線バスを利用していました。商業施設やオフィスビルが周辺に建ち並ぶ大きな駅が目的地の場合、路線バスよりも電車を利用してその駅に来る人の方が圧倒的に多いので、混雑する電車を避けて路線バスを選んでいました。
思いのほか空いている車内で座って目的地に到着することができるので快適だったのを思い出します。ただし、出発や到着時間が正確な電車とは違い、車道の混雑や乗客の乗降時間のロスなどで、遅延が多い路線バスは、時間に余裕を持って乗るようにしていました。
地方に移り住んでからも、路線バスは利用していますが、都内のバスに比べると、本数が少ないため、利用頻度は減りました。
また、都内では、電車がほぼ網羅している地域においても、電車に並行して路線バスが走っているところも多いですが、私が住んでいる地域では、バスの路線図を見た限り、電車が走っていない地域にバスの経路が集中していると感じました。
地方の路線バスを利用して、便利に感じることがありました。
私が住んでいる地域の主要駅から温泉地まで路線バスが走っていることです。例えば、東京では、東京都内から箱根温泉に向かう際は、新宿駅から特急ロマンスカーを利用して行く、もしくは、旅行会社が主催する観光バスで行くなど「観光のための交通手段」を予約して利用します。
地方に来てからは、日常で使う路線バスで温泉旅館の目の前まで簡単に行くことができるので、気軽に温泉を楽しむきっかけにもなりました。温泉に入ったポカポカの体で路線バスに乗って帰宅する間は不思議な感覚でした。
そこで今回は、路線バスの運賃について調べてみました。
路線バスの初乗り運賃(2019年10月25日現在)
ほんの一部ですが、路線バスの初乗り運賃を調べてみました。東京、名古屋、大阪と人口が多い都市部の初乗り運賃は、どれも210円でした。また、通常ですと長い距離を乗れば乗るほど運賃は徐々に上がっていきますが、この3都市は、「均一運賃」となっています。
ただし、東京都内でも、多摩地区は対キロ区間制で初乗り運賃は大人180円となっています。調べてみると、路線バスの運賃は画一的ではなく「この区内であれば、均一運賃」「この区域は、対キロ運賃制」など、運行事業者や運行路線によって様々な運賃体系になっていることがわかりました。
終わりに
路線バスにも「お得」や「割引」があります。例えば、1日に何回でも自由に乗り降りができる「一日乗車券」があります。この一日乗車券は、路線バスと電車がセットになっているものもありますので、旅行の際に購入すると便利です。
また、路線バスから路線バスへ乗り継ぐときに、運賃の割引を受けられる「乗継割引」があります。ただし、1つ目のバスを降車後、一定の時間内(60分以内や90分以内と設定している場合が多い)に2つ目のバスに乗り継ぐことが条件となっています。
路線バスは、その地域の住民のための大事な交通手段です。だからこそ、観光地ではない、その街の景色や街の姿を見ることができます。休日に目的地を定めずふらっと路線バスを利用して隣りの街まで小旅行をするのも、良いリフレッシュになるのではないでしょうか。
高鷲佐織(たかわしさおり)
ファイナンシャル・プランナー(CFP 認定者)/1級ファイナンシャル・プランニング技能士/DCプランナー1級。資格の学校TACにて、FP講師として、教材の作成・校閲、講義に従事している。過去問分析を通じて学習者が苦手とする分野での、理解しやすい教材作りを心がけて、FP技能検定3級から1級までの教材などの作成・校閲を行っている。また、並行して資産形成や年金などの個人のお金に関する相談を行っている。