「東京は物価が高いので、生活費が高い」または、「地方は物価が安いので、生活費が東京に比べてあまりかからない」と世間でよく言われていることは、本当なのでしょうか。
連載コラム「地方の生活コストは本当に安いのか?」では、ファイナンシャル・プランナーの高鷲佐織が、実際に東京から地方へ移り住んで感じたことを交えながらお伝えいたします。
新聞の折込チラシには学習塾の広告が多い
現在住んでいる地域に引っ越しをして気づいたことの1つに、「新聞の折込チラシに、学習塾の広告が毎日のように入っている」ということです。教育に熱心な親御さんが多く住んでいる地域なのだろうかと思いました。
日が落ちてから、自宅の周りを散歩した時のこと。大きな道路の路肩にハザードランプを点滅させて停車している車がズラリと並んでいるのを見かけました。なにかイベントでもあるのだろうかと思うほどの車の列。停車している側にある建物を見てみると、「〇〇ゼミナール」「△△学習塾」の看板を見つけて、たくさんの車の列は、学習塾から帰宅する子供を迎えにきた親が待機していることに気づきました。
学習塾のチラシには、地元の有名学校の合格人数を記載しているものもあれば、東京の有名学校の合格人数を記載しているものもあり、地元の学校ではなく、東京の学校を受験している学生も多いことがわかりました。今年の春、高校を卒業し大学入学のために地元を離れて暮らし始める方もいるでしょう。 そこで、今回は、学習塾についてお伝えしたいと思います。
都道府県別・学習塾年間売上高等(平成28年)
全国で見ると、学習塾の事業所数は47,570事業所、従業者数は約34万人、年間の売上高は約9千5百億円、従業者1人当たりの年間の売上高は約282万円となっています(黄色で表示)。
都道府県別で見ると、事業所数が3,000を超えているのは、東京3,984事業所、大阪3,442事業所、愛知3,295事業所、神奈川3,256事業所となっています(緑色で表示)。従業者数で最も多いのが東京で47,477人、次に神奈川32,343人、3番目は大阪29,309人となっており、千葉22,730人、埼玉22,349人、兵庫20,109人で、従業者数が2万人を超えている地域は6つあります(オレンジ色で表示)。
年間売上高は、ダントツのトップで東京が153,144百万円、次に神奈川で93,112百万円、3番目に大阪で75,388百万円となっており、東京の年間売上高は、3番目の大阪の2倍以上の売上高となっています(青色で表示)。都道府県別での年間売上高を見ると、予想通り東京が最も高かったのですが、従業者1人当たりの年間売上高で見てみると、最も多いのは岡山で418万円、次に福島で413万円、三番目に山口で409万円となっており、400万円を超える地域は、この3つだけです(紫色で表示)。
したがって、東京には多くの学習塾があり、従業者数も多いですが、学習塾で働いている方1人当たりの稼ぐ力、言い換えれば子供たちに学習の能力を身に付けさせる能力が高い講師等がいる学習塾は、東京が最も勝るという訳ではないことがわかります。
終わりに
今回は、学習塾について調べてみました。事業所数や従業者数、年間売上高に関して、上位の地域は、その地域の人口の多さに比例するような結果になっていましたが、従業者1人当たりの年間売上高として計算してみると、人口密度の高さとして上位ではない3つの地域の学習塾が、高い売上を上げていました。「最も質の高い学習塾に子供を通わせるならば、東京が良い」と思っている地方の方がいらっしゃるならば、一度、自宅近くの学習塾の情報を見てみるとよいでしょう。最新技術を使った高度な授業、効率的な学習計画、親身なスタッフ等を備えた質の高い学習塾が地元に存在しているかもしれません。
高鷲佐織(たかわしさおり)
ファイナンシャル・プランナー(CFP 認定者)/1級ファイナンシャル・プランニング技能士/DCプランナー1級。資格の学校TACにて、FP講師として、教材の作成・校閲、講義に従事している。過去問分析を通じて学習者が苦手とする分野での、理解しやすい教材作りを心がけて、FP技能検定3級から1級までの教材などの作成・校閲を行っている。また、並行して資産形成や年金などの個人のお金に関する相談を行っている。