「東京は物価が高いので、生活費が高い」または、「地方は物価が安いので、生活費が東京に比べてあまりかからない」と世間でよく言われていることは、本当なのでしょうか。

連載コラム「地方の生活コストは本当に安いのか?」では、ファイナンシャル・プランナーの高鷲佐織が、実際に東京から地方へ移り住んで感じたことを交えながらお伝えいたします。

新築住宅建設ラッシュは地方でも

東京で住んでいた地域は、大きな商業施設や高層マンションが建ち並んでいました。街中を歩いていても、高い建物に挟まれているので、日陰になる場所が多く、暖かい日差しを浴びたいときは、日の当たっている場所を探しました。

現在住んでいる地域は、高層マンションが少ないので、日差しが道や公園などに降り注ぎます。ビルにさえぎられることなく、空一面見ることができるので、歩いていると気持ちが良いです。

東京では、高層マンションの建設が相次いでいます。私が住んでいる地域でも、マンションなど住宅の建設が続いています。そこで、今回はフラット35を利用したマンション購入者に絞り、マンション購入に関して調べてみました。

フラット35とは

マンションを購入する際、現金一括支払いで購入する人はごくわずかだと思います。住宅購入を希望する多くの人が金融機関などで住宅ローンを組んで購入するでしょう。その住宅ローン商品の1つに、「フラット35」があります。

フラット35とは、民間金融機関と住宅金融支援機構が提携して提供する最長35年の全期間が固定金利の住宅ローンのことです。申し込み要件として、多額の借金があると、フラット35を借りることができない場合があります。

フラット35に興味がある方で、自動車ローンやカードローン、商品の分割払いやリボ払いのものがある場合は、表1の「年収に占める年間合計返済額の割合」を参考に、基準をクリアしているか計算してみるとよいでしょう(赤色で表示)。

  • (表1)フラット35の概要
    ※引用『「フラット35」ホームページ(住宅金融支援機構)のご利用条件』を参考に執筆者一部抜粋して加工

また、フラット35のメリットとして、一般的に必要とされている保証料がかからず、保証人も必要ありません。また、繰り上げ返済(※)の手数料もかかりません。

(※)繰り上げ返済とは、住宅ローンなどを返済する際に、毎月の返済額とは別に、ローンの一部または全部を返済すること。

頭金が減少し、住宅ローン借入額が増加するマンション購入者

表2を見てみると、購入価額は、全国でも、4つの地域別(首都圏・近畿圏・東海圏・その他地域)でも、伸び率が上がっています(黄色で表示)。

しかし、首都圏とその他地域に関しては、世帯年収が下がっているので、住宅購入がますます大きな買い物になっていることがわかります(青色で表示)。また、頭金(手持金)は、近畿圏のみが伸び率が上がっています(赤字で表示)。近畿圏の方は、住宅購入を目標に、堅実に貯金されてきたのかもしれません。

  • (表2)2017年度フラット35 マンション融資利用者の主要指標
    ※出典「フラット35利用者調査 2017年度」の「2017年度フラット35マンション融資利用者の主要指標」(住宅金融支援機構)

資金調達の内訳においては、住宅ローン借入額(フラット35融資金額)が、すべての地域において、膨らんでいることがわかります(緑色の表示)。購入価額の上昇に伴い、住宅ローン借入額も上昇しており、1カ月当たりの返済額の負担も大きくなっています。住宅ローンを組む際には、「金融機関等からいくら借りられるか」ではなく、「1カ月当たりいくらずつ返済していけるか」を考えた上で、総借入額を算出するとよいでしょう。

終わりに

住宅ローンには、大きく分けると、固定金利型と変動金利型に分かれます。

固定金利型:全返済期間で適用金利が固定
変動金利型:適用金利が定期的に変動(原則として、適用金利が半年に1度変動する。ただし、返済額は半年ごとではなく、5年ごとに変動する)

住宅ローンを組む際に、固定金利型と変動金利型、どちらを選択するか、誰でも悩むと思います。正直申しまして、住宅ローンを組む時点で「固定金利型の方が、絶対にお得」とか、「変動金利型の方が、総返済額は少ない」とか、断定できるものではありません。将来の金利の動きについて、知っている人は誰1人いないからです。

ですから、住宅ローン商品を選ぶ際には、「他商品よりも低金利なもの」だけをものさしに選ぶのではなく、固定金利型と変動金利型のメリット・デメリットを把握し、住宅購入後の自分の生活を想像し、将来設計を考えた上で、自分に合う住宅ローンを選択していただきたいです。

高鷲佐織(たかわしさおり)

ファイナンシャル・プランナー(CFP 認定者)/1級ファイナンシャル・プランニング技能士/DCプランナー1級。

資格の学校TACにて、FP講師として、教材の作成・校閲、講義に従事している。過去問分析を通じて学習者が苦手とする分野での、理解しやすい教材作りを心がけて、FP技能検定3級から1級までの教材などの作成・校閲を行っている。また、並行して資産形成や年金などの個人のお金に関する相談を行っている。