「東京は物価が高いので、生活費が高い」または、「地方は物価が安いので、生活費が東京に比べてあまりかからない」と世間でよく言われていることは、本当なのでしょうか。

連載コラム「地方の生活コストは本当に安いのか?」では、ファイナンシャル・プランナーの高鷲佐織が、実際に東京から地方へ移り住んで感じたことを交えながらお伝えいたします。

地方デパートならではの特色

東京在住の頃、デパートやショッピングセンターなど商業施設が建ち並ぶ街に住んでいたので、多種多様な品物が多く、贈り物を選ぶ際に、困ることはありませんでした。特にデパートは、駅前に多数あったので、各デパートの個性を感じながら、ショッピングすることは、楽しかったです。

現在住んでいる地域には、主要駅近くに2つデパートがあります。建物としての規模は、東京と同じくらいですが、常に流行りの商品を取り扱う東京のデパートとは違い、地域の住民や、観光客に合わせた品ぞろえのように感じました。デパートの地下食料品売り場では、3分の2の面積には食料品や総菜など住民のための売り場があり、3分の1の面積には特産品や名産品など観光客のための売り場があり、地方のデパートならではの特色があります。

今回は、小売業の1つでもあるデパートについて調べてみました。

デパート売上高は、東京が断トツ

まずは、全国のデパートの地域別売上高について見てみましょう。2017年の年間売上高は、全国で5兆9,532億円(黄色で表示)、10都市の中では、東京23区の売上が断トツで1兆6,087億円、次に大阪市で8,097億円、三番目に名古屋市で3,777億円と続いています(赤色で表示)。

  • (表1)地域別・デパート売上高(2017年1月~2017年12月)
    ※出典「プレスリリース売上 平成29年12月・年間 百貨店売上高概況」(日本百貨店協会)を一部加工して作成

表1の東京は、新宿区、中央区、豊島区というように1つの「区」ではなく、23区(特別区)まとめているので、売上高が他の都市よりも高くなるのは、必然的かもしれません。そうだとしても、東京23区は、大阪市の売上高の約2倍で断トツです。10都市の中では、東京都心のデパートに、売上が集中していることがわかります。

また、10都市と10都市以外の地区を比べると、10都市のみで、売上高の約7割(緑色で表示)を占めていることがわかります。

デパート売上高・企業ランキング(2015年~2016年)

次に、企業の売上高ランキングを見てみましょう。第1位は、三越伊勢丹HD1兆2,872億円、第2位は、J.フロントリテイリング1兆1,635億円、第3位は、高島屋9,295億円と続いています。

  • (表2)デパート売上高・企業ランキング(2015年~2016年)
    ※出典「百貨店業界売上高ランキング(平成27-28年)」(業界動向サーチ)を一部加工して作成

また、企業名が○○電鉄、△△鉄道と「鉄道会社」の名前ですが、デパートを経営している企業が上位20位中6社も入っています(青色で表示)。

鉄道会社がデパートを経営する目的の1つとして、鉄道の利用者増加があります。デパートを駅に近い場所に建設することにより、デパートに行く人が、自ら経営する鉄道会社を利用するようにしているのです。さらに、デパートが繁盛することにより、その街に人が集まり、街自体が活性化し店舗が増え、さらに駅の利用者や住民が増えるという相乗効果もあります。

終わりに

「デパートは、高価なものしか売っていない」というイメージだけで、デパートには足を運ばないという方もいらっしゃるのではないでしょうか。実際に、デパートには高価なものがたくさん売っていますが、高品質でリーズナブルな価格の雑貨や日用品などもあります。

私が現在住んでいる地域にあるデパートには、その地域でしか生産されていない特産品セットが手頃な値段で贈答品として販売しているので、家族やお世話になった方々へ贈り物をする際にとても助かっています。

デパートには、「友の会」という積立金サービスを行っているところもあります。例えば、1万円ずつ12カ月積み立てた場合、満期時に受け取る積立額(12万円)に、ボーナス1万円(1カ月分)がプラスされます。

また、友の会の会員になることで会員限定の割引やプレゼントがあったり、会員専用サロンにて休憩できたり、いろいろなメリットがあります。友の会のサービス内容は、各デパートによって異なりますので、興味がある方は、希望するデパートの友の会の内容を調べてみてください。満期になった積立金で、自分のために上質なものを購入するのも、良いのではないでしょうか。

高鷲佐織(たかわしさおり)

ファイナンシャル・プランナー(CFP 認定者)/1級ファイナンシャル・プランニング技能士/DCプランナー1級。

資格の学校TACにて、FP講師として、教材の作成・校閲、講義に従事している。過去問分析を通じて学習者が苦手とする分野での、理解しやすい教材作りを心がけて、FP技能検定3級から1級までの教材などの作成・校閲を行っている。また、並行して資産形成や年金などの個人のお金に関する相談を行っている。