「東京は物価が高いので、生活費が高い」または、「地方は物価が安いので、生活費が東京に比べてあまりかからない」と世間でよく言われていることは、本当なのでしょうか。
連載コラム「地方の生活コストは本当に安いのか?」では、ファイナンシャル・プランナーの高鷲佐織が、実際に東京から地方へ移り住んで感じたことを交えながらお伝えいたします。
副業を認める企業が徐々に増加
東京在住の頃、住んでいた地域の近くには、オフィスビルが建ち並んでおり、平日の昼時になると、スーツ姿の会社員の方々が、一斉にオフィスビルから周りの飲食店へ足を運ぶ姿をよく見かけました。
私が会社員勤務をしていたとき、昼食時の休憩時間は、全社員同じ時間帯でした。それぞれの業務が一段落した頃に、自由に昼食を取りに外出することができれば、社員にとって各自リフレッシュをすることができるのではないかと思ったことが何度もあります。
会社員という働き方をする場合、一般的には勤務時間や休憩時間は決められており、職務内容も、自ら希望した内容とは限りません。また、多くの日本の企業では、副業を禁止する旨の就業規則を設けています。そのため、希望していた職務になかなか就くことができなかったり、自分のスキルを十分に生かし切れなかったりすると、「退職」という選択肢を選ぶしかないと判断された方々も多いと思います。
現在では、少しずつですが、社員に副業を認める企業が増加しており、会社員として勤務しながら、自らの知識やスキルを活用し、本業以外の仕事をする方々もいらっしゃいます。
そこで、今回は副業について調べてみました。
都道府県別・働き方別の副業者割合
都道府県別、働き方別の副業者の割合を見てみましょう。表1は本業が自営業主と、本業が雇用者に分かれています。副業者の割合は、本業が自営業主の場合全国平均が6.5%、一方、本業が雇用者の場合全国平均が3.4%となっており、本業が自営業主の約2分の1です(青色で表示)。
また、都道府県別に見てみると、本業が自営業主の場合、秋田県(10.3%)が最も副業者割合が高く、次に岩手県(9.3%)、長野県(9.3%)、島根県(9.3%)が同じ割合で続いています(黄色で表示)。
本業が雇用者の場合、5.0%以上の地域は、岩手県(5.6%)、秋田県(5.2%)、島根県(5.1%)と3県のみとなっています(赤字で表示)。本業が雇用者の場合は、勤務先で副業を禁止されている場合が多いため、本業が自営業主よりも副業者割合が低いのだと推測できます。
そして、東京都、神奈川県、大阪府などの人口密度が高い地域において、副業者割合が上位ではないことからも、人口が多い地域だからといって柔軟に働く環境が整っているとは限らないことがわかります。
税務上の追い風
平成30年度税制改正で、フリーランスなどで働く方にとっては減税となる「基礎控除の見直し」が行われることになりました。実際に税制改正が行われるのは、平成32年分以後になります。
所得税の場合、基礎控除額が38万円から、48万円(合計所得金額が2,400万円以下)へと金額が10万円増加しています。ただし、平成31年分以前は、合計所得金額に関係なく、一律に適用されますが、平成32年分以後は、合計所得金額が増加すればするほど、基礎控除額が減少し、合計所得金額が2,500万円を超えると、基礎控除は適用されなくなります。
企業に勤務しながら副業をされている方も、本業の給与所得と本業以外の所得の合計所得金額が2,400万円以下の場合は、基礎控除額が10万円増加することになります。
終わりに
今回は、副業について調べてみました。副業を認める企業は徐々に増加しているようですが、副業とはどのような業種が認められるのか、副業先との雇用契約はどのようにすればよいのか、などのルールは企業ごとに異なると思います。
ですから、企業に勤務しながら副業を検討している方は、就業規則を改めて確認し、副業が認められているのか確認する必要があります。個性や個人のスキル、知識などが尊重され、働き方の選択肢が広がり、副業を行うことやフリーランスで働くことに関する法令や制度など社会環境が整うことを願っています。
高鷲佐織(たかわしさおり)
ファイナンシャル・プランナー(CFP 認定者)/1級ファイナンシャル・プランニング技能士/DCプランナー1級。資格の学校TACにて、FP講師として、教材の作成・校閲、講義に従事している。過去問分析を通じて学習者が苦手とする分野での、理解しやすい教材作りを心がけて、FP技能検定3級から1級までの教材などの作成・校閲を行っている。また、並行して資産形成や年金などの個人のお金に関する相談を行っている。