「都心では物価が高いので、生活していくのが大変だ」または「地方は物価が安いので、生活費が都心に比べてあまりかからない」と世間で言われていることは、本当なのでしょうか。
お金の扱い方について、都心部と地方部では、違いがないのでしょうか。連載コラム「地方の生活コストは本当に安いのか?」では、ファイナンシャル・プランナーの高鷲佐織が、実際に東京と地方、両方の生活を経験して感じたことを交えながら、お金に関する情報などをお伝えいたします。
「移住先の住まい」というと、どのようなイメージをお持ちでしょうか。
「都心部から地方へ移住する際の住まいは、老朽化した古い家屋と土地を購入して、自分の生活に合わせてリフォームして住む」というイメージをお持ちの方も多いのではないでしょうか。移住先で住宅を購入して暮らしている方もいらっしゃいますが、移住先が自分の暮らしに本当に適しているのかは、実際に数年住んでみないとわかりません。また、移住した後に、違う地域で暮らしたいと思った場合、移住先で購入した住宅を処分(売却等)するのは、手間も費用もかかります。
そこで、自治体の家賃補助の制度を利用して、まずは、移住先で賃貸住宅に暮らすのはいかがでしょうか。
できるだけ、この地域に長く暮らしてほしいという願いから、家賃補助制度を設けている自治体もあります。家賃補助制度は、全国一律ではなく、自治体によって内容が異なります。今回は、2つの自治体の家賃補助制度を見てみましょう。
■新潟県小千谷市(おぢやし)の家賃補助事業「ずっと住まいる応援事業」
※受付期間は、2024年12月27日(金)に終了。
<補助金額>
・単身世帯:支払った月額家賃の2分の1。ただし、月額15,000円が上限である
・夫婦世帯:支払った月額家賃の2分の1。ただし、月額30,000円が上限である
<補助期間>
・単身世帯:最長2年間。ただし、単身者が結婚した場合、夫婦世帯として最長3年延長が可能である
・夫婦世帯:最長3年間
<補助対象費用>
・小千谷市に所在する民間賃貸住宅で、賃貸借契約に定められた賃料(共益費、管理費、町内会費は除く)
・付属する駐車場使用料
※勤務先からの住居に係る手当が支給されている場合は、補助対象経費から差し引く
※社宅や企業等の寮、公的賃貸住宅は、対象外である
<補助対象者>
U・Iターン就職者のうち、次のすべてに該当する人
【1】賃貸住宅等を借り上げて家賃を支払う人
【2】転入した日から1年を経過していない人
【3】申請日から5年以上定住する意思を誓約できる人
【4】転入前1年の間に小千谷市に住所を有していない人
【5】転入した日の年齢が45歳未満の人
【6】市税等の税金の滞納がない人
【7】正規雇用に関する一定の要件を満たす人(パートタイム労働者や契約社員、派遣労働者等を除く労働者であって、1週間の所定労働時間が30時間以上かつ雇用期間の定めがない労働契約を締結している人・雇用保険の被保険者であること等)
【8】小千谷市が定めた一定の要件を満たす人(日本人ではない場合、永住者、日本人の配偶者等、永住者の配偶者等、定住者、特別永住者のいずれかの在留資格を有する人等)
■福岡県八女市(やめし)「若年世帯家賃支援補助金」
<補助金額>
・実質家賃負担額の2分の1。ただし、月額10,000円が上限である
「実質家賃負担額=月額家賃-勤務先の住宅手当-共益費-管理費-駐車場使用料等」
<各種加算>
・新婚加算:申請年度の4月1日時点において婚姻届け(再婚を含む)後1年を経過していない場合、月額5,000円加算(最長12ヵ月)される
・転入加算:上記の新婚加算の対象者であり、申請年度の4月1日時点において、世帯の中に次の【1】・【2】のいずれも満たす人が1人以上いる場合、月額5,000円加算(最長12ヵ月)される
【1】転入後1年以内であること
【2】転入の前日から起算して3年間に八女市に住所を有していないこと
・出生加算:申請年度の4月1日時点において、認定申請者の世帯に1歳未満の子どもを含む場合や補助金の認定後、認定申請者の世帯に子どもが出生した場合、月額5,000円加算(最長36ヵ月)される
<補助期間>
・原則:認定申請した月の翌月から最長36ヵ月
・新婚加算:認定申請した月の翌月から最長12ヵ月
・転入加算:認定申請した月の翌月から最長12ヵ月
・出生加算:認定申請した月の翌月から最長36ヵ月
<補助対象者>
次の【1】~【7】すべてに該当する人
【1】申請年度の4月1日現在において、夫婦の合計年齢が80歳未満である世帯(ひとり親世帯の場合は、40歳未満の父または母と、義務教育終了前の子で構成された世帯)
【2】八女市の賃貸住宅に転入もしくは転居した世帯
【3】世帯全員が、八女市に4年を超えて定住する意思を持ち、八女市の住民基本台帳に記録していること
【4】認定申請者およびその配偶者が、過去に当該補助金の交付を受けていないこと
【5】世帯全員、市税等の税金の滞納がないこと
【6】公的な制度による家賃補助等を受けていないこと
【7】世帯に暴力団がいないこと、および、暴力団(員)との密接な関係者がいないこと
終わりに
上記の2つの自治体の家賃補助制度を見比べてみると、似たような制度ではあるものの、違いもあります。例えば、補助する対象である「家賃等」では、小千谷市の場合、駐車場代は補助の対象である「家賃等」に含まれますが、八女市の場合、「家賃等」には含まれないので、補助の対象外となります。また、「年齢要件」についても、小千谷市の場合、「45歳未満」であることが要件となり、八女市の場合、「夫婦の合計年齢が80歳未満」であることが要件となります。極端ではありますが、「夫50歳・妻27歳」という年齢差のある夫婦で、申請者が夫である場合、小千谷市の場合は対象外となりますが、八女市の場合は、夫婦合計で80歳未満であるので対象者となります。自治体によって要件が異なりますので、移住に興味のある方は、移住を希望する自治体に家賃補助制度が設けられているか、調べてみるのもよいでしょう。