「都心では物価が高いので、生活していくのが大変だ」または「地方は物価が安いので、生活費が都心に比べてあまりかからない」と世間で言われていることは、本当なのでしょうか。
お金の扱い方について、都心部と地方部では、違いがないのでしょうか。連載コラム「地方の生活コストは本当に安いのか?」では、ファイナンシャル・プランナーの高鷲佐織が、実際に東京と地方、両方の生活を経験して感じたことを交えながら、お金に関する情報などをお伝えいたします。
地方に在住し始めて新しい街を歩いたときに、気づいたことがありました。都心部に比べて資格学校の教室(校舎)が少ないことです。現在は、Youtube等のSNSで個人が情報提供して、資格取得までの学習方法を伝えているものもありますが、私個人としては、SNSで発信されているすべての情報が「資格試験の最新情報で、かつ、正しい内容である」とは限らないので、資格学校が作成しているテキストや問題集等を使って学習するほうが、安心感があります。また、国や自治体の学び直し支援として、一定の要件を満たした資格学校等の教育訓練施設の講座を受講すると、支援金を受け取ることができるので、結果的に少額の費用で資格を取得することが可能です。
では、国の「学び直し」の支援にはどのようなものがあるか見てみましょう。
厚生労働省の教育訓練給付制度
教育訓練給付制度では、厚生労働大臣が指定する教育訓練を修了した際に、受講費用の一部が支給されるものです。その教育訓練は、身につけられる内容やスキルのレベルによって、一般教育訓練、特定一般教育訓練、専門実践教育訓練の3つに分けられています。
<対象者>
雇用保険の加入期間などの要件があります。また、パートタイマーやアルバイト、派遣労働者の人も対象となります。受講開始日時点で、「在職中で雇用保険に加入している人」または「離職してから1年以内である人(※1)」で、今までに教育訓練給付を受けたことがあるか、ないかで要件が異なります。
【1】今までに教育訓練給付を受けたことがない場合
雇用保険の加入期間が1年以上必要(ただし、専門実践教育訓練を受講する場合は2年以上必要)。
【2】今までに教育訓練給付を受けたことがある場合
「前回の受講開始日以降、雇用保険の加入期間が3年以上あること」と、「前回の支給日から今回の受講開始日までに3年以上経過していること」のいずれも満たす必要があります。
(※1)離職した人においては、妊娠、出産、育児、疾病、負傷などの理由により適用対象期間の延長を行った場合は、「離職してから最大20年以内」となります。
<支給額>
・一般教育訓練:受講費用×20%(上限10万円)
・特定一般教育訓練:最大で受講費用×50%(上限25万円)(※2)
・専門実践教育訓練:最大で受講費用×80%(年間上限64万円)(※2)
(※2)2024(令和6)年10月1日以降に受講を開始した場合には、給付率が改正されています。特定一般教育訓練給付金40%→50%に、専門実践教育訓練給付金70%→80%となりました。
<対象講座>
・一般教育訓練:社会保険労務士、税理士、簿記検定、ITパスポートなど
・特定一般教育訓練:大型特殊自動車免許、介護支援専門員、けん引免許など
・専門実践教育訓練:介護福祉士、看護師、美容師、保育士、調理師など
教育訓練給付制度の対象講座は、「厚生労働大臣指定教育訓練講座」を検索していただくと、多種多様の資格の講座を検索することができます。
<注意点>
対象講座を受講しただけでは、講座を修了したことにはなりません。講座の出席率が8割以上であることや、修了認定テストにて一定の正答率以上であることなど、修了には要件があり、その要件を満たさなければ給付を受けることができません。つまり、講座の申込みのみ行い、講座に出席していない場合は、学習しているとはみなされず、受講費用の一部が支給されることはないということです。なお、「資格試験の合格」が要件ではありません。
終わりに
猛暑の夏も終わり、過ごしやすくなった時期なので、新しいことを学びたいと考えている人もいらっしゃるのではないでしょうか。国の「学び直し」の支援を有効に活用し、新しい知識を増やしたり、現在の職種に係る資格を取得したりするのもよいのではないでしょうか。