「都心では物価が高いので、生活していくのが大変だ」または「地方は物価が安いので、生活費が都心に比べてあまりかからない」と世間で言われていることは、本当なのでしょうか。
お金の扱い方について、都心部と地方部では、違いがないのでしょうか。連載コラム「地方の生活コストは本当に安いのか?」では、ファイナンシャル・プランナーの高鷲佐織が、実際に東京と地方、両方の生活を経験して感じたことを交えながら、お金に関する情報などをお伝えいたします。
高齢者のデータ
日本の総人口は、2023(令和5)年10月1日時点で、1億2,435万人。65歳以上の人口は、3,623万人。総人口に占める65歳以上の人口割合は、約29.1%です。国立社会保障・人口問題研究所の「日本将来推計人口(令和5年推計)」推計結果によると、2070(令和52)年には、2.6人に1人が65歳以上、約4人に1人が75歳以上になるというデータがあります。
また、65歳以上の一人暮らしの人は、男女ともに増加傾向にあり、1980(昭和55)年には、65歳以上の男女それぞれの人口に占める割合は男性4.3%、女性11.2%でしたが、2020(令和2)年には男性15.0%、女性22.1%となり、2050(令和32)年には、男性26.1%、女性29.3%となると見込まれています。
内閣府による65歳以上の人を対象とした、人付き合いに関する調査では、「親しくしている友人・仲間がいるか」という質問に対して、「たくさんいる、または、普通にいる」と回答した割合は、2018(平成30)年は72.2%であったのに、2023(令和5)年は46.8%となった。 人と話をする頻度に関して、「一人暮らしの人」と「一人暮らしではない人」に分けた場合、毎日人と話をする65歳以上の人の割合は、「一人暮らしの人」が38.9%、「一人暮らしではない人」が80.9%となった。
つまり、親しい友人や仲間がたくさんまたは普通にいるという65歳以上の人が約5年で大幅に減り、また、一人暮らしの人は、家族等と同居している人と比べて、毎日誰かと話す65歳以上の人の割合が半分以下ということになります。
※引用:内閣府「令和6年版高齢社会白書(概要版)(PDF版)」
自分の親には、いつまでも健康で他人と交流を持ち、楽しく過ごしてほしいと願っている現役世代は、多いのではないでしょうか。そこで、今回は、高齢者が介護状態となることを防ぎ、住み慣れた地域で元気に過ごすことができるように、高齢者が気軽に集う場所として運営されている「シニアサロン」をご紹介したいと思います。
大阪府八尾市
名前:八尾市高齢者ふれあいサロン
地域で自主運営しているサロンのうち、一定の要件を満たすサロンに「高齢者ふれあいサロン」として登録してもらい、支援している。
支援内容は下記のとおり。
・備品等の貸し出し(貸出期間は6ヶ月間)
・ホームページ等による広報
・八尾市の高齢者施策に関する情報提供
・サロンの運営を支援するボランティアの派遣
・サロンの開設や運営に関する相談に対する生活支援コーディネーター等による助言等
参加費:サロンの活動内容によって異なるが、50円~200円、または実費など。
場所:八尾市立社会福祉会館やデイサービス施設内のカフェスペース等
東京都八王子市
名前:「ふれあい・いきいきサロン」と「自主サロン」
八王子市では、一定の要件を満たして月1回以上活動する団体について、「ふれあい・いきいきサロン」と「自主サロン」の2種類に分けて活動支援を行っている。
なお、八王子から補助金を受けることができる「ふれあい・いきいきサロン」は、新規の受付を停止しており、八王子市からの補助金を受けずに登録のみ行っているサロンの「自主サロン」は随時受付している。
「自主サロン」のメリット
・活動が八王子市の加入する保険の適用になる。サロン活動にかかるケガについて補償を受けることができる。
・八王子市の管理するホームページ等で、活動をPRできる。
・八王子市からの補助金を受け取らないため、資金管理についての報告の必要がない。
過去の活動事例
・西部地域(カフェかじやしき)
体操や手芸のほかに、男性が参加しやすくなるよう、囲碁、将棋、麻雀を実施している。
・東部地域(いきいきサロン なでしこ)
できるだけ頭や身体を動かすように、体操、卓球、麻雀、カラオケなどを実施している。
参加費:サロンの活動内容によって異なるが、1回100円、200円程度。
終わりに
今回は、ほんの一部ですが、「シニアサロン」を取り上げました。各自治体が運営するのではなく、地域住民が主体となって主催、運営する「シニアサロン」を自治体がバックアップする体制であるものが多いようです。自治体が金銭面でサポートしたり、場所や人材を提供したり、地域によって自治体のサポートの仕方も異なります。
今後、一人暮らしの高齢者は増えていくでしょう。介護予防や認知症予防という観点だけでなく、楽しく人と触れ合い、充実した生活を送る手段の1つとして「シニアサロン」を活用するのもよいと思います。とはいえ、自治体から発信される「シニアサロン」に関する情報がその地域に在住するすべての高齢者に行き渡ることは難しいでしょう。現役世代の家族が、「自宅の近くにサロンというところがあるみたいだよ」と情報提供してみてはいかがでしょうか。