「都心では物価が高いので、生活していくのが大変だ」または「地方は物価が安いので、生活費が都心に比べてあまりかからない」と世間で言われていることは、本当なのでしょうか。

お金の扱い方について、都心部と地方部では、違いがないのでしょうか。連載コラム「地方の生活コストは本当に安いのか?」では、ファイナンシャル・プランナーの高鷲佐織が、実際に東京と地方、両方の生活を経験して感じたことを交えながら、お金に関する情報などをお伝えいたします。

エネルギー資源価格の上昇等により食料品の価格や光熱費が上がっています。また、医療・介護等の社会保障に係る費用が膨らんでいることにより私たちが支払う社会保険料も上がり続け、家計を圧迫しています。さらに教育費も上昇しており、保護者の収入や資産のみで大学進学することは「当たり前」ではありません。

独立行政法人日本学生支援機構の「令和4年度 学生生活調査結果」によると、何らかの奨学金を受給している人の割合は下記のとおりになります。

大学学部(昼間部):55.0%
短期大学(昼間部):61.5%

※何らかの奨学金を受給している人の割合とは、日本学生支援機構の給付奨学金や貸与奨学金、日本学生支援機構以外の給付奨学金や貸与奨学金のうち、1つ以上を受給したと回答した人の割合のことです。大学や短期大学に進学した人の半数以上が奨学金を利用していることがわかります。

なお、日本学生支援機構の奨学金制度の詳細については、過去のコラムをご参照ください。

第86回【子育てとお金】子育て資金の貯蓄方法・奨学金 - その1
第87回【子育てとお金】子育て資金の貯蓄方法・奨学金 - その2
第88回【子育てとお金】子育て資金の貯蓄方法・奨学金 - その3 返還について
第89回【子育てとお金】子育て資金の貯蓄方法・奨学金 - その4 救済制度について

奨学金返済は、通常、大学等を卒業して社会人となってからスタートされます。人材確保を図るために、多くの自治体は、奨学金の返済支援を行っています。

各自治体(市町村)によって奨学金の返済支援の内容は様々です。一部ではありますが、自治体(市町村)が行っている返済支援の内容を見てみましょう。

■福島県喜多方市「奨学金償還支援事業」

対象者:大学、短大、高専、高校等の在学生、卒業者(30歳未満)の人で、喜多方市内に定住する見込み、かつ、市内の事業所等に就職し8年以上継続して勤務する見込みの人

助成金額:通常の返済年額相当額(利子分を除く・年間最大18万円)

助成期間:正規の修業年数の2倍の期間(最長8年間)

参考:福島県喜多方市「奨学金償還支援事業」

■新潟県佐渡市「UIターン者奨学金返還支援事業」

対象者:Iターンの場合 下記の【1】・【2】・【3】のすべてに該当する人
【1】佐渡市に転入する前の直近1年間、連続して市外に居住していた人で、令和3年1月1日以降に佐渡市に住民登録した人
【2】申請年の1月1日に40歳未満で佐渡市に住民登録があり、現に居住し就労している人
【3】住民登録の日から3年を超える期間、佐渡市に居住する意思がある人

助成金額:「申請年の前年に返済した奨学金の額および利息相当額」×2分の1(年額最大15万円)

助成期間:交付を決定した年から起算して10年以内

参考:新潟県佐渡市「UIターン者奨学金返還支援事業」

■滋賀県甲賀市「甲賀市奨学金返還支援事業」

対象者:奨学金を返済しながら甲賀市内の企業・事業所で働こうとしている人で、次の【1】から【4】のすべてに該当する人
【1】高等学校、中等教育学校、大学および高等専門大学を卒業(見込み)または中途退学した人
【2】甲賀市内に住民登録している人
【3】甲賀市内に店舗や事業所がある企業・事業所に就職する予定の人
【4】市民税、固定資産税および軽自動車税の滞納がない人

助成金額:奨学金返済額の75%。ただし、一定の要件を満たす企業・事業所に就職した人は、奨学金返済額の100%(最大100万円・年間で最大20万円)

助成期間:最大60ヶ月間

■終わりに

3つの自治体の奨学金の返済支援制度についてお伝えしましたが、市ごとに、対象者の要件、助成金額や助成期間の上限など異なっています。なお、公務員としてその地域で働くことになった場合や、本社が都心部にあって社内異動によりその地域で働くことになった場合など、その地域の住民となった場合でも「支援対象とならない」場合もあるので、奨学金返済支援制度の利用を検討する場合は、支援対象者となる要件や助成金額、助成期間だけではなく、支援対象とならないのはどういうケースなのか確認しておきましょう。