「都心では物価が高いので、生活していくのが大変だ」または「地方は物価が安いので、生活費が都心に比べてあまりかからない」と世間で言われていることは、本当なのでしょうか。
お金の扱い方について、都心部と地方部では、違いがないのでしょうか。
連載コラム「地方の生活コストは本当に安いのか?」では、ファイナンシャル・プランナーの高鷲佐織が、実際に東京と地方、両方の生活を経験して感じたことを交えながら、お金に関する情報などをお伝えいたします。
この春、入学や入社、転勤、異動などの理由で引っ越しをした方も多いでしょう。新しい地域での生活は、見るものすべて新鮮で、刺激の多い毎日を送っていらっしゃることと思います。水道光熱費(水道代、電気代、ガス代)の検針票等が通知され、家賃の引き落しがあったり、スーパーマーケットで食材や日用品の買い物をしたりして、新生活1ヵ月分の「生活費」がどれくらいかかるのか、ざっくりとわかってきたころではないでしょうか。「生活費」は、基本的に「固定費」と「変動費」に分かれます。
「固定費」とは、毎月発生し、支払い額がほぼ一定の費用のことをいいます。例えば、家賃などの住居費、水道光熱費、通信費などが該当します。
「変動費」とは、支払い額が月によって変わる費用のことをいいます。例えば、食費、日用品費、医療費、交際費、レジャー費、交通費、被服費、美容費などが該当します。
「固定費」については、「第142回コラム新生活でのざっくり家計管理術(固定費編)」をご参照ください。今回は、私自身、東京から地方へ、地方から東京へと引っ越しを繰り返し経験したことをもとに、ざっくりした「家計管理術の変動費編」をお伝えしたいと思います。
東京から地方暮らしとなった場合の「交通費」
東京都心部の「交通費」といえば、電車やバスが主な交通費となると思います。都営バスの東京23区内は均一運賃で、一般系統は大人210円・小児110円です。また、東京都心部のタクシーは、初乗り運賃が約500円です。東京都心部で暮らした場合の「交通費」は、頻繁にタクシーを利用しなければ、大きな出費となることはないでしょう。
一方、地方暮らしとなった場合、運転手不足や乗客減少などの理由により、電車やバスの運賃が上がっているため、東京暮らしと比べて「交通費」が増加していることが多いと思います。私が暮らしていた地方の地域でも、1年間で2回、バスの運賃が上がりました。しかし、「交通費」は生活に必要な支出です。地方暮らしで「交通費」が増加しているようでしたら、他の費用で調整しましょう。ただし、地方では、交通手段として自動車を利用する人も多いでしょう。「交通費」として、自動車のガソリン代や高速代を含めているのであれば、旅行で使用したガソリン代や高速代は「レジャー費」に含めて、「交通費」とは別にしておくとよいでしょう。
「交通費」は、日常生活で必要な費用
「レジャー費」は、プライベートの娯楽で使った費用
として分けておくと、家計を管理しやすいと思います。
外食は、「食費」か?
家計管理のご相談を受けるときに、「家族で外食をしたときの費用は、食費ですか? それとも娯楽費やレジャー費になるのですか?」と聞かれることがあります。
友人や知人との会食は、「交際費」や「レジャー費」として管理する人が多いようですが、「家族での外食」や「仕事帰りに一人で外食したとき」の費用はどうなるのか気になる方も多いようです。結論から言いますと「費用」の振り分けは、どの項目にしてもかまいません。家計管理するご本人がわかりやすいように費用分けすれば良いのです。
ですが、食材購入だけでなく外食した費用もすべて「食費」に含めると、「食費」の金額が大きく膨れ上がります。節約を考えるときに、「外食は削減したくない」という心理が働き「食費が多いから、食材を安価なものに変えよう」とか「食材の購入を控えよう」と、「食材購入」ばかりに目をむけてしまうのでは、適切に家計を管理しているとは言えません。
例えば、
・家族で行く週末の外食:レジャー費
・仕事帰りに一人で外食:食費
・仕事帰りに同僚と外食:交際費
・テレワーク後に出前や宅配サービスで料理を注文:食費
など、内容で費用を分けておくのも1つの家計管理の方法です。
終わりに
新生活では、新しい家具や家電を購入したり、引っ越しのために冷蔵庫を空っぽにしたので食材等を購入したり、引っ越し当初は、出費が多いと思います。
特に、新生活では、付き合いで外食が続くことも多いでしょう。食費、交際費、レジャー費等の変動費が膨れてしまっても、引っ越し後6ヵ月間くらいは「よし」としましょう。いずれ「日常生活」が落ち着いて、自分なりの支出のペースがつかめてきます。6ヵ月経過後あたりから、一度、1ヵ月の支出の内訳を確認してみましょう。