「東京は物価が高いので、生活費が高い」または、「地方は物価が安いので、生活費が東京に比べてあまりかからない」と世間でよく言われていることは、本当なのでしょうか。

連載コラム「地方の生活コストは本当に安いのか?」では、ファイナンシャル・プランナーの高鷲佐織が、実際に東京から地方へ移り住んで感じたことを交えながらお伝えいたします。

ネットショッピングは若い世代の人のもの?

ネットショッピングはとても便利な購入方法です。パソコンやスマートフォン、タブレットから簡単に欲しい物を購入することができ、希望する場所へ届けてくれます。

私自身も、トイレットペーパーなど大きくてかさばるような日用品は、ネットショッピングで購入することがあります。東京から地方へ移り住むことが決まった際にも、新しい住居で必要なカーペットや風呂ふたなどネットショッピングを利用して引っ越し日に合わせて新居へ配達してもらうことができて大変助かりました。

ネットショッピングというと、30代までの若い世代が最も多く購入していると思っている方もいらっしゃると思います。では、ネットショッピングを利用した世帯に限定した場合の「1年間のネットショッピングを利用した支出総額」を見てみましょう。支出総額が最も多い世代は50代で40万7,988円、次に60代で39万9,336円、70代以降で38万7,804円であり、平均の37万5,720円を上回っています。一方で40代以下は、平均を下回っています。

私の父は70代ですが、インターネットを使いこなし、商品やサービスの購入をしているようです。父の世代は、インターネットが普及した頃は、定年退職が近づいている頃だったと思います。そこからインターネットという新しいことに挑戦して、ネットショッピングを利用して、他の世代とほぼ同水準の支出総額であることから、年齢を重ねても、インターネットを利用して便利で快適な生活を送っている方々が多いのではないかと思います。

  • (表1)ネットショッピングを利用した世帯における世帯主の年齢階級別1世帯当たりの年間のネットショッピングを利用した支出総額(二人以上の世帯)<2015年(平成27年)>
    ※出典:総務省統計局「家計消費状況調査結果」(「平成28年3月3日 統計トピックスNo.92急増するネットショッピングの実態を探る」より抜粋)
    ※ネットショッピングを利用した世帯に限定した1年間のネットショッピングを利用した支出総額である。
    ※ここでの「ネットショッピング」とは、世帯がインターネットを利用しての商品・サービスの予約や購入のことをいう。インターネットを利用しての商品・サービスの予約や購入するための情報収集のみに利用した場合は含めない

「都道府県別・ネットショッピングの購入割合」

次に、地域別でのネットショッピングの購入割合を見てみましょう。1位は神奈川県、2位は埼玉県、3位は東京都となっており、首都圏の中でも最も人口が多い3地域が上位を占めています。東京在住の頃は、東京よりも地方の方が日用品など購入できる店舗数が少なく、営業時間も東京よりも早く終了すると聞いたことがあったので、地方の方がネットショッピングを利用する割合が高いと思っていました。

しかし、実際に地方に住んでみると、東京に比べて1つの商業施設の規模が大きく、店舗の面積が広いので、陳列も見やすく品数や種類が多いので、東京在住の頃より、ネットショッピングを利用する回数が減りました。

  • (表2)都道府県別・ネットショッピングでの購入割合(二人以上の世帯)
    注1:全国平均(1.7%)=100として換算
    ※出典:総務省統計局「平成26年全国消費実態調査結果ニュースp.5」より抜粋

終わりに

今回は、ネットショッピングについて調べてみました。ネットショッピングで最も支出割合が高いのは「旅行関係費」という統計がでています(※)。旅行関係費とは、宿泊料、運賃、及びパック旅行費の合計です。

<※出典:総務省統計局「家計消費状況調査結果」(「平成28年3月3日 統計トピックスNo.92 急増するネットショッピングの実態を探る」より抜粋)>

このことから、ネットショッピングの年間支出総額が多い60代、70代の方々が、ネットショッピングを利用して、ホテルや旅館の宿泊料を支払ったり、鉄道や飛行機のチケットを購入したり、または旅行会社のホームページなどでパック旅行の申し込みをしているのではないかと推測できます。

私個人としては、東京在住の頃は、実店舗でショッピングを楽しむことよりも、便利であることや時間の効率を優先していたように思います。今の地域での暮らしの中で、大きなスーパーマーケットや大型商業施設で、実際に品物を手にとり購入する楽しさを取り戻したような感覚があります。

ネットショッピングは便利でさらに増加する購入方法だと思いますが、実店舗に足を運び実際に品物を見て選択するという購入方法は、便利さを上回る充実感があると思います。

高鷲佐織(たかわしさおり)

ファイナンシャル・プランナー(CFP 認定者)/1級ファイナンシャル・プランニング技能士/DCプランナー1級。

資格の学校TACにて、FP講師として、教材の作成・校閲、講義に従事している。過去問分析を通じて学習者が苦手とする分野での、理解しやすい教材作りを心がけて、FP技能検定3級から1級までの教材などの作成・校閲を行っている。また、並行して資産形成や年金などの個人のお金に関する相談を行っている。