「都心では物価が高いので、生活していくのが大変だ」または「地方は物価が安いので、生活費が都心に比べてあまりかからない」と世間で言われていることは、本当なのでしょうか。

お金の扱い方について、都心部と地方部では、違いがないのでしょうか。連載コラム「地方の生活コストは本当に安いのか? 」では、ファイナンシャル・プランナーの高鷲佐織が、実際に東京と地方、両方の生活を経験して感じたことを交えながら、お金に関する情報などをお伝えいたします。

東京暮らしから初めて地方暮らしとなったときに、「自動車は購入したほうがいい」、「地方は自動車がないと暮らしていけないよ」など、「地方暮らしには自動車が必要である」というアドバイスを複数頂きました。

しかし、最初に暮らした地域は、大きな地方都市で電車の交通網が発達していたので、市内を移動する際には、自動車を所有していなくても不便には感じませんでした。

ですが、地方には、電車やバスの本数が少なく、タクシーもなかなか利用できない地域もたくさんあります。その場合は、やはり自動車は日常生活に必要となるでしょう。

そこで、今回は、自動車を利用した場合の東京暮らしと地方暮らしを比較してみようと思います。

<仮定>

仮定として、東京暮らしの場合は、自動車を所有せずに週末(月4回とする)にレジャーとしてレンタカーを借りる生活とし、一方、地方暮らしの場合は、自動車を所有する生活とします。

比較する具体的な自動車は、近年、販売台数が上位にあるトヨタの「ヤリス」とします。

<東京暮らしの場合:週末にレンタカーを利用(月4回)>

●タイムズのカーレンタル
ヤリス(ハイブリット)

●会員料金(税込) 利用時間が24時間まで(※1)…7,480円
安心補償コース(24時間)(※2)…2,200円
合計…9,680円

9,680円×4回(週末・月に4回)=毎月38,720円
38,720円×12ヵ月=年間464,640円となります。

(※1)料金7,480円は、タイムズクラブ会員になった場合の利用料金となります。なお、会員でない場合は、利用時間24時間までで9,350円となります。

(※2)安心補償コースとは、対人補償や対物補償、車両補償、人身傷害補償のほかに、通常車両補償で補償されないパンクやタイヤへの損傷、ホイールキャップの紛失に加え、ロードサービス(レッカー搬送、キー閉じ込み時の鍵あけ等)も付帯したコースです。

<地方暮らしの場合:中古車の自動車を所有>

トヨタ・ヤリス(ハイブリット)
購入金額200万円(車両価格と諸費用を含む)とします。

(注意点)
中古車の価格は、年式、走行距離、車両本体の状態、グレードなどによって決められます。また、中古車市場の需要と供給のバランスによっても価格が影響されます。購入金額の200万円は、あくまでも概算の価格であり、実際の販売価格とは異なります。

<比較>

2,000,000円÷464,640円=4.30… ということは、

【1】東京暮らしで週末(月4回)のレンタカー利用を4年間までであれば、地方暮らしで自動車を所有しているよりも支出は少なくて済みます。
464,640円×4年間=1,858,560円<200万円

【2】東京暮らしで週末(月4回)のレンタカー利用を5年以上続けるのであれば、地方暮らしで自動車を所有しているよりも支出は多くなります。
464,640円×5年間=2,323,200円>200万円

<結果>

上記の<仮定>を基に計算してみると、期間が5年以上になると、地方暮らしで自動車を所有しているほうが、東京暮らしで週末(月4回)のレンタカー利用をするよりも、費用は安くすむ結果となりました。ただし、この結果はあくまでも、購入金額とレンタカー利用料金を比較したもので、購入した後も継続的に税金や自動車保険料等がかかります。また、ガソリン代は、レンタカー利用でも所有した場合でもかかりますが、所有した場合に通勤でも使用するのであれば、レンタカーよりもガソリン代の支出が多くなるでしょう。

今回は1人暮らしをイメージし、コンパクトタイプの自動車で比較してみました。東京の都心部であっても、自動車を所有することはできます。ただし、都心部の駐車場代は、他の地域よりもかなり高いです。仮に、都心部の賃貸物件に住み、毎月家賃と駐車場代を支払い、かつ、自動車の維持費を支払っていく場合、家計が苦しくなる可能性もあります。 都心部に住み、自動車を使いたい場合は、まず1年間はレンタカーやカーシェアを利用し、年間で支払った利用料の合計額を計算した上で、レンタカー等の利用を継続するか、自動車を購入するか検討したほうがよいでしょう。