「都心では物価が高いので、生活していくのが大変だ」または「地方は物価が安いので、生活費が都心に比べてあまりかからない」と世間で言われていることは、本当なのでしょうか。

お金の扱い方について、都心部と地方部では、違いがないのでしょうか。

連載コラム「地方の生活コストは本当に安いのか?」では、ファイナンシャル・プランナーの高鷲佐織が、実際に東京と地方、両方の生活を経験して感じたことを交えながら、お金に関する情報などをお伝えいたします。

地方で暮らしているなか、仕事等で東京に行った際に、「地方で暮らすっていいですね。オフィスが東京しかないので、地方生活がうらやましいです」とか、「地方に住んでテレワークして、たまに東京のオフィスに出社する生活をしてみたいです」と言われることがあります。毎日オフィスに出社するのではなく、週に1回~2回オフィスに出社すればよく、基本的には自宅およびオフィス以外の場所で仕事をすることが許されている環境であれば、住む場所も自由に選択できるのではないでしょうか。

今回は、東京と地方の家賃を基本として比較してみようと思います。

アンケート調査等の住みたい街ランキングで常に上位にある「中目黒」と、杜の都として東北地方で唯一の政令指定都市である「仙台」をピックアップしました。

物件検索の条件を満たした物件の中で、類似した物件を1つずつ選び、比較してみます。

<物件検索の条件>
【1】中目黒駅または仙台駅から徒歩5分以内
【2】間取り   :1LDK
【3】建物の種類 :マンションおよびアパート(一戸建ては除く)
【4】構造:鉄筋系・鉄骨系・ブロック系(木造は除く)
【5】住宅の築年数:20年以内
【6】バス・トイレ別
【7】室内洗濯機置場あり
【8】エアコン付き
【9】洗面所独立

●中目黒の物件A

中目黒駅から徒歩3分
築17年の5階建てのマンションの中で、部屋は4階
間取り1LDK、専有面積33.6㎡
賃料17万6,000円+管理費・共益費1万2,000円=18万8,000円

●仙台の物件B

仙台駅から徒歩4分
築5年の10階建てのマンションの中で、部屋は9階
間取り1LDK、専有面積31㎡
賃料8万2,000円+管理費・共益費8,500円=9万500円

(注意点)
※敷金・礼金などの初期費用は考慮していません。
※2023年9月24日時点において、実際に空室のある賃貸物件で比較していますが、空室状況や家賃は変動があるため、具体的な物件名は控えさせていただきます。

中目黒の物件Aと仙台の物件Bの差額は、18万8,000円-9万500円=9万7,500円。

仙台在住で、この差額分を東京までの新幹線代に充てるというのはいかがでしょうか。
「東京⇔仙台」間において、えきねっと限定の割引きっぷを利用する。
「やまびこ」乗車の場合・通常価格は片道1万890円。
・えきねっとトクだ値(乗車当日まで申込可能):9,790円(10%OFF)
・お先にトクだ値(13日前までに申込可能):7,610円(30%OFF)
さらに、割引されるお先にトクだ値スペシャル(20日前までに申込可能):5,440円(50%OFF)もありますが、こちらは期間限定となります。

仮に、お先にトクだ値を利用した場合、7,610円×2回(往復)=1万5,220円。
1万5,220円(東京⇔仙台の往復)×6回=9万1,320円(差額97,500円以下)となります。東京⇔仙台の往復が6回以内であれば、「中目黒在住」と「仙台在住+東京オフィスに必要なときのみに出社」は、費用面で大きな差はないようです。

企業によっては、地方移住した社員に対して、東京までの新幹線代も「通勤手当」や「出張手当」、「交通費」等の名目で支給してもらえる場合もあります。ただし、会社都合の転勤による地方在住ではなく、自らの希望により地方移住した場合は、会社から通勤手当等が支給されるとしても上限額が設けられていることもあります。実際に、地方移住して東京のオフィスに月に数回出社する生活を希望している場合は、通勤手当等の規定について、総務部や経理部に確認してみるとよいでしょう。

フルリモートや完全在宅勤務を推奨する企業は減ってきていますが、オフィスに出社する回数を月1回、または週1回などとしている企業もあります。

東京のオフィスに所属したまま「地方暮らし」を経験してみたいと思っている方は、まずは、仙台などの大きな地方都市での暮らしを始めてみるのはいかがでしょうか。家賃という固定費が削減できる分を交通費に充てれば、地方から東京への移動費用の膨らみを抑えて生活できると思います。