「都心では物価が高いので、生活していくのが大変だ」または「地方は物価が安いので、生活費が都心に比べてあまりかからない」と世間で言われていることは、本当なのでしょうか。

お金の扱い方について、都心部と地方部では、違いがないのでしょうか。連載コラム「地方の生活コストは本当に安いのか?」では、ファイナンシャル・プランナーの高鷲佐織が、実際に東京と地方、両方の生活を経験して感じたことを交えながら、お金に関する情報などをお伝えいたします。

以前のコラム(第116回 お試し移住してみませんか?)では、地方自治体が実施している「お試し移住」についてお伝えしました。今回は「お試し居住」についてお伝えしたいと思います。

「お試し移住」と「お試し居住」は、大きな違いがあるわけではありません。「お試し移住」と「お試し居住」のいずれも、地方自治体が、将来的に移住を検討している人を対象に、一定期間内日常生活を体験してもらうために、宿泊施設や家屋等を提供することです。「お試し移住」も「お試し居住」もどちらも人気があるようです。どのような「お試し移住」があるのか、2つの例を見てみましょう。

1.茨城県常陸太田市(一軒家貸出)

■対象者
【1】常陸太田市への移住を考えている市外の人。
【2】単身または家族、親族での参加を基本とし、年齢制限はない。
【3】事業の趣旨に賛同し、簡単な日誌の記入やアンケート調査に協力すること。
【4】WEB媒体などへの写真掲載、調査データなどの活用、マスコミの取材などに協力すること。

■利用料金
1日2,000円、8日目以降は2日1,000円(光熱水費込み)

■利用期間
1週間から4週間

■注意点
【1】観光目的の利用は不可。
【2】ペット同伴は不可。
【3】宿泊施設とは異なるため、食費や交通費、生活に必要な消耗品などは自己負担となる。
【4】各施設は、周辺まで路線バスが通っているが、便数が少ないため、自動車を利用するとよい。

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2.岩手県(家電付き県営住宅貸出)

■対象者
子育て世代枠と一般世代枠との2つの枠がある。

<子育て世代枠と一般世代枠の共通要件>
【1】岩手県に移住定住を希望している県外の人。
【2】岩手県が管理するSNS等において、生活の様子や魅力を外部に複数回発信すること。
【3】岩手県が実施するアンケートに協力すること。
【4】暴力団員でないこと(同居者も含む)
【5】高等学校等に在籍していないこと。
【6】3ヵ月以上の使用を希望していること 等がある。

<子育て世代枠の要件>
【1】申請日時点で申請者が18歳以上39歳以下であること。
【2】子育て中の世帯で子供と同居している家族。
なお、当該要件の「子供」とは、入居許可された年度の年度末時点において18歳以下の子供に限られる。
【3】子供がいなくても、入居期間中に子供を産み育てる予定のある夫婦。

<一般世代枠の要件>
【1】申請日時点で申請者が18歳以上59歳以下であること
使用料:月額1万円(共益費、町内会費が別途かかる)
駐車場利用する場合は、駐車料金がかかる。
なお、敷金は不要。Wi-Fi利用料は無料。

子育て世代枠の入居期間:最長6年間。ただし、子供が18歳に達する年度末までとする。また、入居時に子供がおらず、入居中に子供を産み育てる予定のある夫婦については、3年以内。

一般世代枠の入居期間:1年間(更新不可)
収入基準:なし

■注意点
【1】ペットの飼育不可。
【2】対象住宅の内見不可。

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茨城県常陸太田市の「お試し居住」は、年齢制限がないので、現在年金暮らしをされていて地方移住を希望している方も、対象となります。また、最近高騰している電気、ガス、水道の料金も利用料金に含まれているのは、入居後の生活費の面で助かりますね。

岩手県の「お試し居住」の貸し出しは、県営住宅です。通常ですと、収入の上限基準が設けられており、敷金も必要となります。「お試し居住」では、収入基準がなく、敷金も不要となるため、通常の県営住宅の入居要件よりも緩和されています。ただし、通常の県営住宅とは異なり、59歳以下(一般世代枠の場合)という年齢制限が設けられているので、ご注意ください。

終わりに

「お試し居住」は、一般の民間賃貸住宅よりもかなり安い家賃で居住することができます。ただし、そのための要件には、インターネット上で生活の様子等を公表することが要件であることが多いようです。名前と顔がインターネット上で公表されることを家族の中の誰かが嫌がる場合もありますので、入居後どのように情報発信する必要があるのか、申請する際に確認するとよいでしょう。