「東京は物価が高いので、生活費が高い」または、「地方は物価が安いので、生活費が東京に比べてあまりかからない」と世間でよく言われていることは、本当なのでしょうか。

連載コラム「地方の生活コストは本当に安いのか?」では、ファイナンシャル・プランナーの高鷲佐織が、実際に東京から地方へ移り住んで感じたことを交えながらお伝えいたします。

「専業主婦」とは?

東京在住の頃、大きな商業施設やオフィスビルが建ち並ぶ地域に住んでいたので、平日の昼間に外出しても、週末のにぎわいと変わらず多くの人々が行き交う光景は自然と目に入ってきました。

しかし、郊外と言われる地域に住む友人は「街には、子連れの母親と高齢者しか見当たらない。もし平日の昼間に災害が起きたら、住民同士で助け合っていけるのだろうか?」と不安を口にしていました。共働き世代の増加で、平日の昼間の街中の様子は地域によって違うものになっているのかもしれません。

そもそも専業主婦とはどういう人なのか。辞書によると、「就業せずに専ら家事や子育てなどに専念する女性」「税制上課税所得に達せず、扶養家族とみなされる妻」などと記載されています。

税制上では、所得税などを計算する際に、所得が一定以下である配偶者がいることで受けられる控除「配偶者控除」「配偶者特別控除」があります。例えば、夫が就業し妻が専業主婦の場合、夫婦それぞれの収入(収入の上限あり)に応じて、夫が配偶者控除、または配偶者特別控除の適用を受けることができます。つまり、妻が専業主婦であることにより、夫が納付しなければならない税金を軽減することができるのです。

また、健康保険では、被保険者の収入により生計を維持されている配偶者<※生計維持の基準:配偶者の年間収入が130万円未満(60歳以上は180万円未満)で、かつ被保険者の年間収入の2分の1未満>は、被扶養者として、個人的に健康保険料の支払いをすることなく、健康保険組合などからの保険給付を受けることができます。なお、国民健康保険では、被扶養者という制度はありません。

現在では、税制上や社会保険制度上において、配偶者の優遇措置を受けるために専業主婦世帯でいることよりも、共働きを選択する世帯が増えているようです。

時系列で見る専業主婦世帯と共働き世帯

専業主婦世帯と共働き世帯を時系列に見てみると、1980年(昭和55年)では、共働き世帯が専業主婦世帯の約半分でした。1991年(平成3年)、1992年(平成4年)を境に、1995年(平成7年)、1996(平成8年)は、専業主婦世帯が共働き世帯を上回るものの、それ以降は、共働き世帯が大きく伸びています。

2016年(平成28年)では、専業主婦世帯が664万世帯、共働き世帯が1,129万世帯で、1980年(昭和55年)とは逆となり、専業主婦世帯が共働き世帯の約半分となりました。

  • 専業主婦世帯と共働き世帯

    (表1)専業主婦世帯と共働き世帯・1980年~2016年
    ※出典「図12専業主婦世帯と共働き世帯」(独立行政法人 労働政策研究・研修機構)
    ※「専業主婦世帯」とは、夫が非農林業雇用者で妻が非就業者(非労働力人口及び完全失業者)の世帯である。
    ※「共働き世帯」とは、夫婦ともに非農林業雇用者の世帯である。
    ※2011年は岩手県、宮城県及び福島県を除く全国の結果である。

都道府県別で見る共働き世帯の割合

次に、地域別の共働き世帯の割合を見てみましょう。福井県が58.8%と最も高く、次に山形県57.4%、3番目に石川県55.0%となっています(青色で表示)。

一方、最も低いのは、奈良県39.1%、次に兵庫県39.3%、3番目に大阪府39.8%となり、近畿地方の3県が低い割合となっています(赤字で表示)。個人的には、共働き世帯の地域として、東京都が上位に入るのではないかと予想していたのですが、上位3位内にも入らなかったのは意外でした。

  • 都道府県別夫婦共働き世帯の割合

    (表2)都道府県別夫婦共働き世帯の割合・平成24年
    ※出典「平成24年就業構造基本調査結果 要約・表14」(総務省統計局)
    ※夫婦のみの世帯、夫婦と親から成る世帯、夫婦と子供から成る世帯、夫婦と子供と親から成る世帯の合計のうち、夫婦ともに有業の世帯

また、共働き世帯の割合1位の福井県のホームページを見てみると、「ふくい女性活躍net」という福井県が運営する女性活躍支援のポータルサイトがあります。女性が働きやすい社会づくりを目指している様子がうかがえます。

終わりに

今回は、専業主婦世帯と共働き世帯について調べてみました。女性の家庭での立場や、働き方は時代とともに変化しています。金銭的な理由で夫婦共働きの世帯もあると思いますが、結婚後も個人としてのキャリアアップを目的に仕事を継続している女性や、仕事自体を生きがいとして位置付けている女性もいると思います。

また、人口減少や少子高齢化の影響で、専業主婦である人が、育児や介護を一手に引き受けている家庭も少なくないと思います。専業主婦として家族をサポートしていくことと、共働きで働いていくことを人生一度だけの選択ではなく、家庭環境の変化により、柔軟に何度でも選択できる社会であってほしいと願います。

高鷲佐織(たかわしさおり)

ファイナンシャル・プランナー(CFP 認定者)/1級ファイナンシャル・プランニング技能士/DCプランナー1級。

資格の学校TACにて、FP講師として、教材の作成・校閲、講義に従事している。過去問分析を通じて学習者が苦手とする分野での、理解しやすい教材作りを心がけて、FP技能検定3級から1級までの教材などの作成・校閲を行っている。また、並行して資産形成や年金などの個人のお金に関する相談を行っている。