「東京は物価が高いので、生活費が高い」または、「地方は物価が安いので、生活費が東京に比べてあまりかからない」と世間でよく言われていることは、本当なのでしょうか。
連載コラム「地方の生活コストは本当に安いのか?」では、ファイナンシャル・プランナーの高鷲佐織が、実際に東京から地方へ移り住んで感じたことを交えながらお伝えいたします。
都道府県別・通勤時間ランキング
東京での会社員時代、通勤時間が往復4時間近くかかっていました。電車を乗り継ぎ、満員電車に揺られ、座ることができたならば、それは奇跡に近い状態でした。会社に到着する頃には、ヘトヘトになり、自分のデスクに座ったときは、大きな疲労感におそわれ、仕事を終え帰宅するときは、座って帰りたいがために、遠回りを承知で、始発駅から乗車することもありました。
電車での長時間通勤を経験された方は、このような状況を理解してくださる方もいらっしゃるのではないでしょうか。
現在住んでいる環境では、自宅から最寄り駅まで徒歩5分、最寄り駅から県内の主要駅まで電車で15分、東京に比べて人口密度は低いので、東京で経験したようなすし詰め状態になることはありません。電車に乗ることに対するストレスは、めっきり減りました。今回は、地域ごとの通勤時間について調べました。
都道府県別にみると、通勤、通学時間が最も長いのは、神奈川県の105分、次に千葉県の102分、3位に埼玉県の96分(1位~3位を赤色で表示)となっています。通勤、通学時間が最も長い神奈川県105分と最も短い大分県57分(青色で表示)の差が48分あります。48分×1カ月(30日とする)=24時間(1,440分)となり、1カ月当たりでみてみると、通勤、通学時間が最も長い地域と短い地域では、1日分も差があることになります。
「時は金なり」ということわざがあるように、時間はお金と同様に貴重なものです。通勤、通学時間は、会社や学校に向かうために必要な時間ですし、無駄ではありません。しかし、その時間が長時間になると、ストレスや疲労がたまり、心身に大きなダメージを与えることもあります。私の経験上、長時間通勤は、心に余裕がなくなり、電車内で周りの人へ気遣いや思いやりの気持ちが持てなくなることもあると思います。
また、余計な出費がかさむこともあります。長時間通勤ということは、会社から自宅までの距離が長いことを意味します。新年会や忘年会などで、最終電車を逃すと、タクシー代が2万円近くかかることもありました。また、通勤電車がトラブルなどで停止してしまった場合、タクシーやバス、他の鉄道会社での移動など、想定外の交通費が必要になります。
都道府県別・就寝時刻ランキング
では、通勤、通学時間に長時間費やされる場合、心身ともに疲れてしまい早く就寝するのかというと、そういう訳でもないようです。
下記の表2をみますと、通勤、通学時間が長い地域の上位1~3位である神奈川県、千葉県、埼玉県は、都道府県別の就寝時刻ランキングでは上位20位以内に入っています(赤色で表示)。また、この3地域ともに全国平均(青色で表示)を上回っています。
つまり、通勤、通学時間が長く、帰宅が遅くなったとしても、自分の時間を確保し、その分就寝時刻が全国平均に比べて遅くなっているということだと思います。私自身も、通勤時間が長かった頃、そのまま倒れるように就寝するのではなく、自宅でゆっくりと自分の時間を過ごしたことを覚えています。
終わりに
今回は、通勤、通学時間について取り上げました。電車での通勤、通学時間が長くても、座席に座ることさえできれば、長時間でも、落ち着いて読書したり、音楽を聴いたり、勉強をしたりと、周りを気にせず自分なりの過ごし方ができて、ストレスも軽減できると思います。
都心の鉄道では、乗車券のほかに特急券を購入することで、確実に指定席に座ることができる特急電車が会社員などに人気で、朝の通勤に利用されています。特急券分のコストはかかりますが、快適な通勤時間に変える1つの手段として有効だと思います。
高鷲佐織(たかわしさおり)
ファイナンシャル・プランナー(CFP 認定者)/1級ファイナンシャル・プランニング技能士/DCプランナー1級。資格の学校TACにて、FP講師として、教材の作成・校閲、講義に従事している。過去問分析を通じて学習者が苦手とする分野での、理解しやすい教材作りを心がけて、FP技能検定3級から1級までの教材などの作成・校閲を行っている。また、並行して資産形成や年金などの個人のお金に関する相談を行っている。