最近、周りの人やコラムの読者から「1080iと1080pはどう違うの?」ということをよく聞かれる。「Apple TV」をはじめ、テレビの周辺機器に1080p対応のものが増えてきたため気にする機会が増えたのだろう。ところがこの種の話題は、地デジ化直前まではさまざまなメディアで解説されていたものの、地デジ化が完了してほとんどの人がテレビを買い換えた今となっては、あまり記事にされない。そこで、おさらいの意味を含めて、映像の解像度の話をまとめておきたい。
「1080p」の「1080」って何のこと?
まず、1080pの「1080」という数字は、縦(上下)方向のドット数だ。厳密には、アナログ時代からの習慣で走査線数などと呼ばれることが多いが、縦方向のドット数と覚えておけばかまわない。……ということは、もちろん数字が大きいほど解像度は高い(=きめ細かい)映像となる。昨今、ネットの映像や光ディスクのソースなどで使われる縦方向のドット数は、主に480、720、1080の3種類だ。ところで、横のドット数は考えなくていいのだろうか。現在のテレビは、画角が16:9なので、わざわざ横のドット数を示さなくても、縦のドット数だけを比べればどちらが画質がいいのかが分かる。このため、解像度を表すときは、縦のドット数だけを使うのが一般的になっている。
ところで、この3種類の解像度のうち、480は「SD画質」とか「標準画質」と呼ばれることが多い。「SD」とは「スタンダードデフィニション(標準定義)」という意味で、従来のアナログテレビの画質とほぼ同じだ。また、それより解像度の高い720と1080がHD画質、ハイビジョン画質だ。HDとは「ハイデフィニション(高精細定義)」だ。
ここで覚えておいてほしいのが、ひと口に「ハイビジョン」と言っても720と1080の2種類があることだ。これはいろいろな問題を引き起こしている。例えば、テレビでも数年前までは720までしか対応していない「ハイビジョンテレビ」が多かった。もちろん、定義上、720のテレビを「ハイビジョンテレビ」と呼んで問題はないわけだが、画質は当然ながら1080のものに劣ることになる。そののち、1080のテレビが登場すると、メーカーはこれを「フルハイビジョン」などと呼ぶようになった。現在は、20型程度の小さなテレビまで含めて1080でフルハイビジョンだが、数年前にテレビを購入した人は720のテレビである可能性もある。
「i」とか「p」というのは何を意味する?
もうひとつ、やっかいなのが、この数字の後に「i」とか「p」とかの記号がつくことだ。たとえば、「1080i」とか「1080p」などと書く。この「i」とか「p」は何のことだろうか。「i」はインタレースの略で、「飛び越し走査」の意味だ。
1080iでは1画面を描くときに、全部を描かない。上から1列目、3列目、5列目……というように1列おきに描き、合計1080列の半分のうち1画面では540列しか描かず、次の1画面では、今度は2列目、4列目、6列目……と描いていく。つまり、画面の半分ずつ描写が行われるわけだ。なぜこんな面倒なことをするのだろうか。それはデータの節約だ。このようなインタレースだと、1画面に使う画像データは、1画面まるごとの半分で済む。データ転送も負荷が少なくて済むうえ、テレビの画像処理にも余裕ができる。さらに、ストレージに保存しておく容量も節約できるのだ。
一方で、飛び越しをせずに、全画面をきちんと描くのが「p」、プログレッシブだ。当然ながら、プログレッシブの方が画質は良くなるし、動きのある映像にも強くなる。つまり、数字が同じであれば、iよりもpの方が画質がいいと覚えておいていただきたい。
ということで、これからテレビや映像系周辺機器を買うの際に、画質を重視するのであれば、「1080p」と銘打たれているものを買うべきだ。これであれば、どんな解像度の映像でも映像の潜在力を十分に引き出すことができる。ちなみに、地上デジタル放送などのハイビジョン放送は1080i、インターネットの映像配信サービスなどでは720pが多い(ただし、地デジの場合は横の解像度が1,440ドットに圧縮されている)。また、DVD映像の画質は480iだ。また、BD(ブルーレイ)では1080pの映像を収録できるが、作品によっては中に収録されている映像ソースが1080iということもある。
理想的にはテレビが1080p対応で、レコーダー、プレイヤー、セットトップボックスなども全て1080p出力対応というのが望ましい。このような機器をHDMIケーブルで接続すれば、適切な解像度変換を自動的に行ってくれるので、もっとも美しい画質で楽しむことができるのだ。
機器を揃えたらHDMIケーブルの種類にも注意する
なお、機器を用意する際はHDMIケーブルにも注意をしておこう。HDMIケーブルには、「スタンダード」と「ハイスピード」の2種類がある。「スタンダード」は720p、1080iまでしか対応していない。1080pを楽しむには「ハイスピード」のHDMIケーブルで接続する必要がある。せっかく1080pの機器を揃えても、HDMIケーブルの費用をケチってスタンダードを買ってしまうと、せっかくの画質を活かせないので注意していただきたい。
このような数字の話になると、どうしても苦手意識を感じる人もいるだろう。また、解像度のスペックについては、ここでは紹介していないさらに細かい仕様も存在する。しかし、一般のテレビでハイビジョン映像を楽しみたいという人は「とにかく1080p」ということだけ覚えておけば十分だ。現在は、多くの機器が1080p対応になっているが、1080iや720pまでしか対応していないものもあるので、注意しておこう。
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