ここのところよく見かけるようになった"スマートテレビ"という言葉。このコラムで何度も触れたように、スマートテレビの条件とは「Wi-Fi(無線LAN)接続」「CCD(カメラ)」「ショッピング機能」だが、最低でもWi-Fi接続機能は必要だ。その意味では、ようやくテレビメーカーからスマートテレビになり得るテレビが登場し始めたという段階といえる。しかし、自宅のテレビを簡単にスマートテレビに変えてしまう製品があるのだ。そう! 「Apple TV」である。
新型「iPad」発表の陰で、あまり大きな話題にはなっていないが、8,800円と価格も手ごろだ。テレビの環境を変えてみたいのであれば、決して高い製品ではない。ただし、Apple TVを楽しむには、Wi-Fi環境が必須だ。そして、「iTunes」がインストールされたパソコンやiPhone、iPadがあると、よりApple TVを楽しむことができる(iTunesはWindowsでもMacでも無料でダウンロード可能)。Wi-Fi環境とパソコン、iPhoneないしiPadという環境が揃っているなら、Apple TVは"買い"だ。
「帰宅途中にiPhoneで映画レンタル→自宅で続きを観賞」なんて使い方もOK
「Apple TV」のページは、アップルのWebサイト内でも少々見付けにく場所にある。上部のメニューから「iTunes」を選ぶと割と簡単に見つかるはずだ。今のApple TVは第3世代で、1080pに対応している。一般的なハイビジョン放送の1080iよりも、動きのある映像に強い |
Apple TVはテレビのHDMI端子に接続する。それ以外に電源が必要だ。これで、Wi-Fiでインターネット接続している環境があれば、設定らしい設定はほとんど不要で、使えるようになる。すでに持っているApple IDを入力するか、新たに作成すれば、すぐに楽しめるようになるのだ。
Apple TVで行えることを挙げていこう。まずは映画のレンタルだ。HD画質のものでは500円が標準的な価格。やや価格が高いとは思うが、新作映画も多くラインナップされているので、レンタル店に新作映画を借りに行ったり返却しに行ったりする手間を考えると、納得できる価格ではある。レンタル期間は30日で、再生をしたら48時間でレンタル期間が終了して再生できなくなる。
さらに、iPhoneやiPadを持っているのであれば、ちょっと面白い使い方ができる。Apple TVもiPhoneもiPadも、レンタル操作を行った機器で再生するのが基本で、Apple TVでレンタルした映画をiPhoneで見るということはできない。ところが、iPhoneでレンタルした映画はApple TVで観ることができるのだ。iPhone上で映画を再生し、AirPlay機能を使ってApple TVに飛ばすと、Apple TVを経由して大画面テレビで映画を楽しめるのだ。AirPlayの操作は、メニューから再生機器を選ぶだけの簡単さ。もちろん、HD画質の映画はテレビでもHD画質で再生される。
AirPlayを利用すると、iPhoneを使ってレンタルした映画を帰宅する電車で観始め、帰宅後にiPhoneからApple TVを経由して続きを大画面で楽しむこともできる。なお、自宅外で観る場合、3G回線では途切れることもあるので、Wi-Fi接続が望ましい。48時間以内であれば、何回観てもOKなので、冒頭からもう一度大画面で楽しむことも可能だ。
また、レンタルではなく、映画を購入することも可能だ。映画の購入は、Apple TV、iPhone、iPad、パソコンのいずれの端末からでも構わない。購入した映画はiCloud上、つまりネット上に保存されているので、HDDなどのストレージの空き容量を気にする必要はないし、どの機器からでも好きなときに観ることができる。
購入してしまうと、完全にシームレス視聴ができるようになる。たとえば、帰宅途中にiPhoneで映画を選んで購入……自宅に帰ってからApple TVで大画面テレビで楽しみ、さらに寝室でiPadを使って続きを楽しむという利用法も可能だ。価格は2,000円から3,000円程度となっている。
ただし現在のところ、すべてのコンテンツがiCloud購入に対応しているわけではないので、注意が必要だ。いずれはすべてがiCloud購入に対応するかもしれない。
もちろん、Apple TVしかなくても、映画のレンタルや購入はApple TVから行える。この場合は、Apple TVで再生するほかはなく、シームレスな利用は行えなくなってしまう。そうなると、8,800円という本体価格、500円というレンタル料金、2,000~3,000円という購入料金は、やや割高感がでてしまうかもしれない。やはりApple TVは、iPhoneかiPadと連携して使えるところに面白みがあるのだ。
YouTubeやGyaO!の映像をテレビの大画面に飛ばすことも可能
また、さきほど紹介したAirPlayも楽しい。iPhoneやiPadでは、「YouTube」や「GyaO!」といった映像配信サービスを利用することができる。これらの映像を再生している際にAirPlayのメニューからApple TVを指定すると、その映像を大画面テレビに飛ばすことができるのだ。ちょっと観たいときは手元のiPhoneやiPadで、じっくり楽しみたいときは大画面テレビで、という切り替えが簡単にできる。ただし、AirPlayはすべての配信サービスが対応しているわけではない。月額1,480円で映画とドラマが見放題の「Hulu」がAirPlayに対応してくれたら利用者は大喜びだと思うのだが、残念ながらHuluは著作権の制限の問題からAirPlayには対応していないし、今後対応するかどうかも未定だ。
またApple TVを使えば、パソコンのiTunesに入っているコンテンツをテレビで観られるのも楽しい。パソコンの電源を入れ、iTunesを起動しておく必要があるが、iTunesに入っているムービーや音楽、ポッドキャストなどを大画面テレビで楽しめるのだ。また、パソコンに入っている写真を大画面テレビに映して、スライドショー形式で楽しむこともできる。これはなかなか楽しい。家族で旅行に行った際など、帰ってきたらデジカメの写真をパソコンに保存して、すぐに大画面テレビで写真を見ることができるのだ。
音楽やポッドキャスト(オンデマンドラジオ放送のようなもの)は、音だけで画面にはそのカバー写真などしか表示されないが、リビングでテレビを本を読んだり、料理や掃除などの家事をしたりする際に、BGM代わりに音を流すのに適している。
もし、あなたがiPhoneかiPadをお使いで、Wi-Fi環境が整っているのであれば、Apple TVはたいへんお買い得で役に立つ機器だと思う。スマートテレビに近い使い勝手が、すぐに実現できてしまうのだ。ただし、iPhoneやiPadがなく、Apple TV単体で使うというのであれば、実質ビデオレンタルぐらいしか使い道がないことになってしまうだろう。誰にでもお勧めできるというわけにいかないが、iPhoneやiPadをおもちの方は、ぜひApple TVの購入を考えてみていただきたい。なにしろ、8,800円だ。失敗しても、そう痛い金額でもない。きっと8,800円以上の価値を見つけられるはずだ。
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