地上デジタル放送を見るには、UHFアンテナを立てるというのが基本だが、室内アンテナでなんとかならないかと考えている人もいるはずだ。家の形状などで屋外アンテナを立てづらい、あるいは工事費が高額になるなどのこともあるだろう。また、集合住宅に住んでいて、共同アンテナの地デジ対応工事はまだ先なのだが、その間、室内アンテナで地デジを見たいということもある。いちばん多いのは、キッチンや寝室に2台目のテレビを置きたい、あるいは地デジ対応のパソコンでテレビを見たいのだが、アンテナ端子がその部屋には来ていないというケースだろう。アンテナ端子を部屋に取りつける工事は、かなり大がかりとなり、ケースによってはちょっとしたリフォームに近いことになってしまう。
こういう場合、室内アンテナなら、置くだけなので、面倒な工事は不要で、機械が苦手な人にもほぼ問題なく接続、設置ができる。しかし、問題なのは「ほんとうに映るか」だ。室内アンテナは当然ながら、屋外アンテナよりも感度は悪くなる。アンテナそのものの性能は、屋外アンテナと変わらないものも登場してきているが、やはり室内というアンテナにとっては厳しい条件なので、屋外アンテナよりも感度は悪くなると考えておいた方がいい。かといって、事前に室内アンテナでも地デジが映るかどうかを調べるのは難しい(専門の測定器は存在するが、一般向けではない)。つまり、室内アンテナを買ってきて、設置してみて、だめだったらあきらめるという賭けにでるしかないのだ。室内アンテナは、映らないからといって返品はできない。ここが室内アンテナの悩ましいところだ。
まずはワンセグ端末で電波状況をチェック
まず最初にチェックすべきなのは、携帯電話などのワンセグが受信できる機器を使って、ワンセグが映るかどうかを調べることだ。室内アンテナを設置しようと思うあたりで、ワンセグを受信して、きれいに映るようであれば可能性がある。ただし、ワンセグが映るからといって必ず室内アンテナで受信ができるというわけではないので注意したい。逆にいえば、室内でワンセグが受信できないようであれば、室内アンテナを使うことはあきらめ、素直に屋外アンテナを立てるようにした方が無難だ。
室内アンテナには指向性のものと無指向性のものがある
室内アンテナには、指向性のものと無指向性のものがあることも頭に入れておこう。指向性アンテナとは特定の方向の電波だけを強く受信するタイプ。無指向性アンテナとは全方位の電波をまんべんなく受信できるタイプだ。指向性アンテナの場合、向ける向きを調整する必要があるが、うまく方向があえば弱い電波でも拾える。無指向性アンテナの場合、置く向きは気にする必要はないが、それなりに強い電波でないと拾えない。電波の強い地域では、複数のテレビ塔からの電波を同時に受信することができるので、隣の県のローカル放送も見られる可能性がある。
また、コンクリートは電波を反射し、木造家屋は電波を透過しやすいことも覚えておこう。つまり、木造家屋なら室内アンテナでいける可能性は高い。一方で、鉄筋コンクリート家屋は不利で、窓の方向がテレビ塔側に向いているかどうかがポイントになる。また、鉄線を入れて強化されている窓ガラスは、電波を遮断してしまう。このような条件を頭に入れて、室内アンテナでもいけそうかどうかを判断していただきたい。
映らなかったらベランダで受信にチャレンジ
室内アンテナを購入するときに、痛いのが「映らないからといって返品はきかない」ということだ。パッケージされているものを開けてしまい、金具類なども使ってしまうのだから、返品をさせろというのも販売店にとっては酷な話。もし、室内アンテナを買ってしまってから、映り具合が悪いことに気がついた場合はどうするか。まだ、方法はいくつか残されている。ひとつはベランダなどの屋外に出してみることだ。とくにベランダがテレビ塔方向にある場合は、それでうまく受信できる可能性が高い。ベランダで映るかどうか調べるのは簡単だ。テレビに接続した状態でアンテナだけをベランダに持っていってみればいい。ベランダに取りつける金具は室内アンテナに同梱されている場合もあるし、別売りになっているケースもある。ベランダの手すりの形状にもよるが、素人でも手持ちの工具で取りつけができるようになっているのが普通だ。
ただし、問題はケーブルをどうやってベランダから室内に引き込むかだ。新し目の住宅ではどの部屋にも換気口がつけられているので、これを利用してケーブルを引き込む方法がある。また、少し工作が面倒になるが、平ケーブルを使って窓のサッシ枠にきちんと沿わせてやれば、問題なくサッシ窓も開け閉めできる。
街の電器店でご近所情報を探れ
室内アンテナはあくまでも強電界地域での使用が前提になっている商品。では、自分の家が強電界地域なのかどうなのか、それを調べるのは難しい。テレビ塔から近い地域であっても、ビルなどの障害物の関係で電波が弱まってしまうことがあるからだ。どうしても不安な人は、近所の街の電器店に相談してみることをお勧めする。定価販売が基本なので、量販店で購入するよりはいくらか高くつくが、「お宅の近所で室内アンテナでうまく受信している家がある」など、具体的な情報をもっていることもある。また、サンプル用の室内アンテナを貸し出して、映るかどうかを確かめてから販売をするという親切な電器店もあるようだ。このような融通が利くのは、やはり近所の電器店なのだ。
アナログ時代は、室内アンテナというと、ゴースト(2重、3重映り)がひどく使い物にならなかったイメージがあるが、デジタル放送は室内アンテナでもゴーストやノイズのないクリアな映像を楽しめるようになった。チャレンジしてみる価値はありそうだ。
このコラムでは、地デジにまつわるみなさまの疑問を解決していきます。深刻な疑問からくだらない疑問まで、ぜひお寄せください。(なお、いただいた疑問に個々にお答えすることはできませんので、ご了承ください)。
アンテナを円柱状に折り畳んで内蔵されている無指向性室内アンテナ「DUCA」。無指向性なので、ただ置くだけで設置完了。また、複数のテレビ塔からの電波を同時に受信できるので、隣の県のローカル番組も電波が強ければ受信できる。高さは58cmと意外に小さく、液晶テレビの脇に置いてもじゃまにならない。実売価格9000円前後。マスト取付アダプタが付属しているので、ホームセンターで市販のベランダ取付金具を購入すれば、ベランダ取付も可能 |
横幅35cmのコンパクトな室内アンテナ「UWPA」。こちらは指向性があるので前面をテレビ塔に向ける必要がある。5500円前後(単体アンテナ) |
ベランダ取付金具一式、ケーブル類などがすべて同梱されているセットもあり、これがいちばん面倒がない。実売価格9000円前後(一式セット) |
また、ブースターを内蔵したモデル「UWPA-UP」もある。9000円前後(ブースター内蔵モデル) |
板状の屋内アンテナ「LAUD」。こちらも指向性アンテナで14素子の八木式アンテナ(全長1m程度)相当の受信感度がある。うまく壁に寄せて置けるようなら、スペース等の点でもじゃまにならない。こちらもベランダ取付が可能だ。実売価格14000円前後 |