先日、ツイッター内で、NHK受信料にまつわるデマが流れた。それは「NHKは、アナログ放送終了後、デジタル放送対応機材を持っていなくてもアナログテレビを持っていると受信料を取りつづける」というような内容のツイートだった。もちろん、誤りであり、複数のネットメディアの取材にNHKが答えて、全面否定している。しかし、意外に知っているようで知らないのがNHKの受信料。アナログ停波でNHK受信料がどうなるのかを考えてみよう。

NHKの受信料は、一世帯一契約が基本。そのため、自宅に何台テレビがあっても契約はひとつでいい。アナログテレビをデジタルテレビに買い替えた場合でも、すでに受信料契約をしていれば、それをデジタルに切り替えるだけでOKだ(ただし、衛星放送が見れるようになったなど、受信環境が変わった場合は受信料の額が変わる場合はある)。

問題は、デジタルテレビに買い替えることなく、テレビの視聴をやめてしまう場合だ。来年7月以降、自宅にあるテレビはモニタとしてしか使えなくなり、NHKの放送は受信できないのだから、当然受信料は支払う必要はない。ただし、注意しなければならないのは、放っておいたら恐らくはNHK側から契約解除の手続きはとってくれないだろうということだ。もし、アナログ停波を機に家から一切のテレビがなくなるというのであれば、自分でNHKに連絡をして、契約を解除してもらう必要がでてくるだろう。

また、受信契約を解除できるのは「家から一切の受信装置がなくなる」という場合であって、地デジ受信が可能なパソコンがある場合は、これが受信契約の対象となる。

さらに注意したいのが、ワンセグ携帯電話だ。自宅に一切のテレビ、地デジ受信可能なパソコン、携帯テレビがないとしても、ワンセグ携帯電話をもっていれば、それが受信契約対象となる。ここは議論のあるところだが、NHK側ではワンセグ携帯電話であっても受信契約をお願いしているのが現状だ。NHKの「受信料の窓口」にあるFAQにも、しっかりとワンセグ携帯電話を名指しで「受信料のお支払いが必要です」と書かれている。

ただし、NHK受信料徴収の基礎になっている放送法第32条では「協会の放送を受信することのできる受信設備を設置した者は」となっており、ワンセグ携帯電話は「設置」とは違うのではないかという議論がある。また「放送の受信を目的としない受信設備」は受信料が免除されるという条項もあり(テレビの店頭販売などが対象となる)、ワンセグ携帯電話は、放送の受信が目的ではなく、通話が目的でもっているのだから、免除対象になると主張している人もいるようだ。いろいろな意見があるが、受信料負担の公平性という観点からは、ワンセグであっても支払う必要性はありそうだ(受信料はある程度軽減すべきだと思うが)。

また、ちょっと注意したいのが、ケーブルテレビ経由で地デジを受信する場合。ケーブルテレビ局によって、NHK受信料は各ユーザーが個々に支払ってもらう仕組みのところと、ケーブルテレビ料金の中に含めて、ケーブルテレビ局が一括で支払う仕組みにしているところがある。ケーブルテレビ局が一括で支払うと受信料が安くできるからだ。また、ケーブルテレビ経由での地デジ受信の場合、ユーザーにNHK受信料の支払い義務があるのかどうかという議論もある。ユーザーはNHKの放送を「受信」しているのではなく、NHKから番組を購入して編成をされたケーブルテレビ局の番組を視聴しているだけという解釈ができるからだ。これも非常に微妙な議論であるために、ケーブルテレビ局によってはNHK受信料の問題は、各ユーザーにおまかせしてしまっているというところもあり、この場合は、自分でNHKと契約を結ばなければならない(あるいはNHKと交渉して支払い拒否をしなければならない)。

さらに、地デジ放送を見ているのに、NHK受信料の支払いを逃れようとする人もいるようだ。最近のデジタルテレビは、見るチャンネルを自分で設定できる。この機能を利用して、NHKだけ見れないようにして「ウチのテレビはNHKは映らないから」と受信料を拒否している人がけっこういるそうだが、これはもちろんダメ。設定で簡単にNHKを映るように戻せるのだから「協会の放送を受信することのできる受信設備」であることには変わりない。もし、どうしても支払いたくないのであれば、永久にNHKが映らないように改造しなければならない。アナログ時代なら、ある程度知識があればできたのだろうが、デジタルテレビではかなり高度な知識が必要となるだろう。

さらに、受信契約を結ばずに30日間テレビを使っていると、NHKの番組の上に大きな文字で受信契約を促すメッセージが現れる。とてもまともに番組を楽しめる状態ではなくなるので、これを盾に「ウチのテレビはNHKが見られない」と主張して支払いを拒否する人もいるが、これもやっぱりダメ。放送法では「NHKが見られる受信設備」とはなってなく、「受信できる受信設備」なのだ。番組を楽しめなくても、受信はできているので、当然契約の義務が生じる。なかなかNHKも考えているのだ。

もちろん、NHKの受信料についてはいろいろな意見をお持ちの方がいるだろう。しかし、テレビの普及期にNHKが果たした役割は大きかったし、その原資になったのがNHK受信料だった。今、日本では全国津々浦々でNHKを見ることができるが、これも受信料がなければ到底できなかったことだ。しかし、では、テレビが普及し切った今、受信料が今のままでいいのかと言えば、それはいろいろな意見があるだろう。私ももう任意加入のペイチャンネルにしてしまう方がすっきりすると思う。しかし、現在は放送法という法律があり、テレビ放送を見る人は全員が受信契約を結ばなければならないことになっている。姑息な手段で受信料逃れをするよりは、払うものは払って、しっかり文句も言うというのが視聴者として正しい態度であるように思うがいかがだろうか。

もちろん、定められた受信料だけを支払えばいいのであり、不必要なものまで支払う必要はない。アナログ停波を機に、自分の家の受信契約がどうなっているかを点検し、必要ない受信料をもし払っていたのであれば、すぐに契約を解除あるいは内容の見直しをしてみてはいかがだろうか。

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