来年の7月には、放送画面が1/4になってしまったり、全面にテロップが表示されたりと、実質テレビが楽しめない状態になることをお伝えした。読者の方からも「これって、アナログテレビを観ている人に対する嫌がらせみたいですね」というご感想もいただいた。このアナログ放送終了計画の第3版という新しい計画が、この4月に登場した。今回はその内容を紹介しよう。
このアナログ放送終了計画は、5つのステップに分けられていて、段階的に取り組みを強化していくことになっている。現在は第2ステップの段階で、この7月から第3ステップに突入する。その第一弾は、7月4日に1分間、アナログ放送が停止することだ。厳密には停止ではなくて、「停止したっぽい雰囲気の特別番組」。7月4日午後5時59分から6時までの1分間、すべてのチャンネルで、アナログ放送が停止したような砂嵐画面を放映して、そのテレビがアナログ放送であることを認知してもらおうというものだ。題して「全国一斉地デジ化テスト」。視聴者にテレビがアナログかデジタルかをテストしてもらおうという趣旨らしい。この砂嵐画面は、その後も15秒、30秒の番組を随時放送していく予定だという。
現在、すでにレターボックス化(アナログテレビで観ると、上下に黒い帯が現れ、上側にアナログ、下側に告知テロップが現れる)が一部の時間帯で行われているが、7月からは、これが全時間帯で実施されるようになる。ワイド放送の場合は、今まで見えなかった左右の部分が見えるようになるが、悲惨なのは、4:3の放送だ。「アナログ」のウォーターマークはともかく、下に現れる告知テロップはスクロールするので、かなりうっとうしい。アナログテレビでも、横長ワイドタイプのテレビを観ている人は、拡大表示して上下を映さないようにした方がいいかもしれない。この告知テロップは、この段階では全時間帯ではなく、計画書では随時となっている。
来年1月からは第4ステップに突入する。告知テロップが全時間帯に拡大される。さらに告知ミニ番組も「集中的に放送」だという。この集中的に放送の意味がよくわからないが、アナログ放送の5分番組などを中止して、代わりにミニ番組を放送するのではないだろうか。5分ニュースや天気予報は、公共性が高い番組なので中止にしづらいし、CMを中止することはテレビ局が許さないので、これしかないような気がする。
また、気になるのが「アナログ放送の放送時間を差別化することも検討」というもので、これも具体的になにを指すのかがわからないが、要は深夜放送を早めに切り上げてしまうことではないかと思う。つまり、来年からは、アナログ放送番組がどんどん減っていくことになる。
さらに来年7月になると、最終の第5ステップに突入する。ここでは「すべての放送時間帯で、お知らせ画面等の表示による放送を実施する」となっている。これはさきほど触れたミニ番組か、通常番組に全面テロップ、または番組は表示されず全面テロップのみとなる。「すべての放送時間帯で」というのだから、来年7月からは実質テレビ番組は観られなくなる。アナログ停波は7月24日正午だが、7月1日からの3週間は、緊急報道以外の放送は行われなくなる。
しかも、地デジ化の進捗状況によっては、この第5ステップは前倒しで実施される可能性も書かれている。地デジ化率は3月末時点で83.8%で、目標の81.6%を初めて上回った。しかし、残りの20%弱は、もっとも地デジ化が進まない層。テレビそのものに興味がない、地デジの意味がよくわかない、集合住宅でアンテナ工事の合意がとれない、今観ているテレビが壊れないのに買い替えたくない、チューナーの無料配布を期待しているという人たちなので、ここから先の普及率は伸び悩むことが予想される。特に、エコポイントが終了する来年4月以降が心配される。このような告知作戦をとりつつ、エコポイントを7月末まで特別延長する可能性もゼロではない。
このような事情があるため、地デジ化作戦はこの7月から、ますます拍車がかかっていくと思われる。早いところ、地デジに乗り換えてしまう方が面倒はないが、数々の苦難にもめげずに、最後の最後までアナログでねばってみるものも面白いといえば面白い。歴史の生き証人になれるかも。
このコラムでは、地デジにまつわるみなさまの疑問を解決していきます。深刻な疑問からくだらない疑問まで、ぜひお寄せください。(なお、いただいた疑問に個々にお答えすることはできませんので、ご了承ください)。