これから地デジ対応テレビを買おうという場合、家族の場合はある意味簡単だ。37型から42型ぐらいの、いわゆる大型液晶テレビが基本になるだろう。しかし、一人暮らしの場合はけっこう悩む。一人暮らしには似つかわしくない大型テレビをあえて買うのも面白いと思うが、もうひとつ、ぐっと小さなテレビで済ませてしまうという考え方もある。

オーディオ機器にしろ、電話にしろ、パソコンにしろ、進化するということは、ほぼイコールで小さくなっていくことだった。限りなく携帯できるサイズに近づいていくのがいいことだった。事実、iPhoneはオーディオ、電話、パソコンを携帯サイズにまでしてしまったということもできる。でも、なぜか、テレビだけは異常なまでほど大きくなっているのだ(薄くはなったけど)。映像の場合、映画館というのがひとつの理想形としてあるので、大きいほどいいという感覚があるのは当然だ。たしかに一人暮らしで、大画面テレビを置いておくと、マイシアター的なものすごくぜいたくな気分になれるのは確かで、これはこれで楽しい。

しかし、一方で、家具をあまり置きたくない、生活臭のある部屋はいやだと考えている人も多いはず。大画面テレビを置いてしまうと、どうしてもテレビが部屋の主役になってしまい、生活パターンも「帰ってきたらまずテレビをつけて、テレビを消してから寝る」というテレビが主役になってしまいがちだ。これがどうもなじめないという人は、メディアinワンというスタイルをとってみることを考えていいと思う。いわゆるAVノートパソコンをひとつだけもって、大きな機器は置かないという考え方だ。

地デジを内蔵しているノートであれば、テレビ、音楽が楽しめる上、もちろんインターネットも楽しめるし、東京、大阪地区であればradiko.jpを使って、ラジオも楽しめる。

これからのメディアは、コミュニケーションレイヤーがビルトインされていることが必須になると思う。プロが作った番組を一方的に拝聴するのではなく、見ながら、聞きながら、同じ番組を楽しんでいる人たちとコミュニケートするという楽しみ方に変わっていく。わかりやすくいえば、テレビやラジオを見ながら聞きながら、ツイッターをするという組み合わせだ。あるいは、mixiFacebookでメッセージを共有する。どのようなサービスと組み合わせるかは、これからいろいろと変わっていくだろうが、変わらないのは、ネットコミュニケーションとメディアを組み合わせて楽しむということだ。これは21世紀になって、私たちが初めて発見した新しい楽しみ方だと誇っていいと思う。

このような楽しみ方をより積極的にするには、テレビとiPhoneという組み合わせよりも、地デジも音楽もラジオもすべて扱えるノートパソコンが最適だ。モバイルとまではいかなくても、旅行にもっていくことぐらいは難しくないからだ。

では、どんなパソコンが適しているのか。もちろん、いろいろな選び方があると思うが、ぜひ注目してほしいのが「音」だ。このようなメディアを重ね合わせて楽しむというスタイルになれてくると、音系メディアを聞く時間が増えていく。音楽やラジオだ。音楽を聴きながら本を読む、ラジオ番組を聞きながらツイッターで語る、そんな時間が増えていき、寝転がってテレビを見ているだけの時間が自然と少なくなっていく。このとき、PCの音が心地よいかどうかで、満足度はかなり違ってくる。

そこで、ちょっとおすすめしたいのが、オンキヨーのM311シリーズ。オンキヨーはオーディオ機器メーカーで、一昨年、ソーテックを吸収合併し、パソコンも発売し始めた。もちろん、音響技術を活かして、音にこだわったPC作りを行っている。音の評価というのは、店頭で聞いてみてもなかなか難しいところだが、私個人はきらびやかな音に聞こえるものはおすすめしない。きらびやかに聞こえるものは一見いいように思えるが、実はさまざまな音の加工を行っているので、長時間聞いていると耳が疲れてくるからだ。音の世界は、未だにデジタル技術では割り切れない部分が多く、積み重ねてきたノウハウがものをいう職人的な世界がたっぷりと残されている。その意味で、オーディオメーカーが作ったパソコンというのは注目していいと思うのだ。もちろん、音の好みは個人差が大きいので、強くお薦めするなどというつもりはないが、一度、自分の耳でチェックする価値はあると思う。価格も実勢で7万円弱と、非常にリーズナブルだ。

気をつけたい点は、光学ドライブが内蔵されていない点。また、CPUはノートパソコンとしては標準的なCeleronなので、グラフィック系の重い作業をするのには向いていない点。それから、これもノートパソコンとしては普通だが、内蔵HDDが250GBなので、テレビ録画を大量にするには向いていない点などだろうか。このあたりが、購入の見極めのポイントになると思う。

このコラムでは、地デジにまつわるみなさまの疑問を解決していきます。深刻な疑問からくだらない疑問まで、ぜひお寄せください。(なお、いただいた疑問に個々にお答えすることはできませんので、ご了承ください)。