読者のみなさんから、たくさん質問をいただいている。ほんとうにありがたい限りだ。ぜひ、じゃんじゃんお寄せください。できる限り、調べてお応えしていきたいと思う。ところで、質問を読ませていただくと、やはりHDMI端子、D端子、コンポジット端子がごちゃごちゃになっている方が多いようだ。特に「ハイビジョン出力禁止」というキーワードが絡むと、混乱してしまう。実をいえば、私もよくわかっていないし、それどころか、業界もどうするか揺れていて、どうしたらいいかわかっていない様子なのだ。そこで、今回は、地デジ周りの端子について整理をしたいと思う。
まず、端子の整理から始めよう。今、もっとも一般的なのがHDMI端子。ほとんどの地デジ対応テレビ、レコーダーについているデジタル端子だ。HDMI端子にも細かいバージョンがあるが、古いバージョンでも1080pに対応しているので、フルハイビジョン映像が転送できる。テレビもHDMI端子、レコーダーもHDMI端子なら、なんの問題もない。しかし、D端子、コンポーネント端子(映像用だけで、赤青緑の3本のケーブルがあるもの)、S端子(まるでパソコン用端子のような丸い端子)、コンポジットケーブル(映像用が黄色、音声が白赤の3本組み)は、すべてアナログ端子だ。気をつけていただきたいのはD端子。名前からデジタル端子の略だと勘違いしている人がまだいるが、これは端子の形がDの字に似ているからつけられただけのネーミングで、アナログ端子だ。D3端子がハイビジョン画質、D5端子がフルハイビジョン画質に対応している。アナログとはいえ、ハイビジョン画質に対応しているので、画質が劣化することはほとんどないが、それでも完全デジタルのHDMI端子には理屈上やや劣る。
テレビとレコーダーを接続するだけなら、HDMI端子、D3端子のいずれでも大きな違いはないが、問題はHDMI端子やケーブルが高価なこと。HDMI端子を搭載した製品を製造するには、ライセンス団体に、参加料年間1万ドル、一製品あたり15セントを支払わなければならない。ここを嫌って、日本の地デジテレビにはD端子が採用され続けてきた。HDMI端子がテレビに採用され始めるのは2004年あたりからだから、5年以上前にテレビを購入した場合、HDMI端子が搭載されてない機種であるかもしれない。画質はアナログのD端子であっても、人の目で分かるほど違いがあるわけではないので、テレビ放送を見るだけなら特に問題はない。しかし、問題は家電メーカーの世界的な業界団体AACS LAが定めたAACSというコピープロテクト規格では「アナログ出力禁止」が定められたことにある。デジタル端子であれば、信号を暗号化するなど、コピーされないようにする工夫はできる。しかし、アナログ端子の場合、コピープロテクトの仕組みは難しく、無理に行うと画質に影響を与えてしまうのだ。そこで、アナログ出力を禁止してしまおうという話になった。ということは、レコーダーとテレビを接続するのに、D端子は使えなくなってしまうということだ。レコーダーからD端子で映像を出力できなくなるのだから、テレビで見ることはできなくなってしまう。
ただし、日本ではD端子しか搭載していなテレビの数が相当数に上ることから、このアナログ出力禁止は段階的に行われることになった。まずは2011年以降に製造されるテレビ、レコーダーはD端子などのアナログ端子ではハイビジョン映像が出力できず、標準画質になってしまうようになる。また、2014年以降に製造されるテレビ、レコーダーはD端子などのアナログでは一切の映像が出力できなくなる。つまり、この頃になるとテレビ、レコーダーにはアナログ端子は搭載されなくなるわけだ(入力端子としては残るかもしれないが)。
問題は、今、D端子しかなく、HDMI端子が搭載されていないテレビをお使いの方だ。もし、来年以降レコーダーを買ったとすると、D端子で接続するしかない。しかし、ハイビジョン映像は出力されないので、録画した地デジ番組やBDの映像も標準画質でしか見ることができなくなってしまう。もし、D端子のみのテレビやレコーダーをお使いの方で、しばらくは使い続けるつもりである方(テレビの場合は、あと5年や10年使うだろう)は、年内にD端子とHDMI端子の両方が搭載されているレコーダーを買うことをお薦めする。当面はD端子でハイビジョン映像を楽しみ、テレビを買い替えたら今度はHDMI端子で接続すればいいからだ。このD端子からのアナログ出力ができなくなる問題は「もうひとつの2011年問題」ともいわれている。もちろん、今すぐにテレビやレコーダーを購入する場合でも、HDMI端子が搭載されているものを買うべきなのはいうまでもない。現行製品でHDMI端子非搭載という機種は滅多にないが、中古を購入するケースや激安製品にはそういう製品があるかもしれない。なにはなくともHDMI端子。これだけは覚えておこう。
このコラムでは、地デジにまつわるみなさまの疑問を解決していきます。深刻な疑問からくだらない疑問まで、ぜひお寄せください。(なお、いただいた疑問に個々にお答えすることはできませんので、ご了承ください)。