家電量販店のAV機器コーナーをのぞくと、レコーダーはすっかり地デジ+Blu-rayが主流になっている。当然のことではあるが、まだまだ地デジ対応コピーワンス機やさらにはアナログレコーダーを使っている人も多いだろう。もっといえば、VHSやβのビデオデッキを使っている人だってまだまだたくさんいる。しかし、アナログ放送録画用のDVD-RやVHSのテープは入手がだんだん難しくなっている。本体は故障もなにも起きてなく、まだまだ何十年も使えそうな勢いなのに、DVD-Rやテープが入手できなくなって、買い替えざるを得ないということになりそうだ。

DVD-Rやその他、+Rだの-RAMだので、DVD系光ディスクは非常に面倒くさい感じがあって、嫌気がさしている人も多いはず。しかし、ただのDVD-Rも実は3種類存在することをご存知だろうか。ひとつはCPRM対応のものと非対応のものだ。まあ、これはわかりやすい。CPRMとはContent Protection for Recordable Mediaの略で、「記録メディア用内容保護システム」のような意味だ。録画内容は暗号化されてDVD-Rに記録され、CPRM対応のプレイヤーでなければ録画も再生もできない。地デジ放送に対応したレコーダーはすべてがCPRM対応だ。地デジを録画するときは、CPRM対応のDVD-Rでなければ録画ができない。一方で、まだアナログ放送用レコーダーを使っている人は、CPRM対応DVD-Rを使ってしまうと、録画ができないばかりか、機器の故障につながりかねないので要注意だ。規格外のディスクを使ったぐらいで故障が起きるというのは意外に思う人が多いと思うが、現実に修理を依頼する羽目になった人も少なからずいる。規格外のディスクを使った場合の現象としては、レコーダー本体のフリーズまたは電源落ちが主なもので、これだけなら大きな問題ではないものの、タイミングによってはHDDがクラッシュしてしまうなどの事故につながる可能性があるのだ。

ところが、家電量販店のDVD-Rのコーナーに行くと、CPRM対応のものしか置いていない状況になっている。アナログレコーダーをお使いの方は、DVD-Rを手に入れるのもたいへんな状況になりつつあるのだ。では、どこへ行けばいいのか。家電量販店ならパソコン系のコーナーへ行くと、CPRM非対応のDVD-Rが置いてある。また、ホームセンターや大型スーパーなどでは、まだまだCPRM非対応のものが大量においてある。とはいえ、大手メディアメーカーもこぞって生産の主力をCPRM対応のものに移しつつあり、手に入るものは海外製が主体になっている。もしどうしてもCPRM非対応で品質の良いDVD-Rを購入したいというのであれば、アマゾンなどのネット通販で、国内メーカーものを探してみるといいだろう。ネット通販では30枚とか50枚パックというものが主流で、価格も1枚あたりで考えれば非常に安くなっている。アナログレコーダーをお使いの方は、今後ますますDVD-Rが入手しづらくなっていくので、ホームセンターかネット通販でディスクを多めに確保しておくことをお薦めする。

もっと窮地に陥っているのが、初期のアナログ放送用レコーダーをお使いになっている人だ。初期の4倍速書き込みにまでしか対応していないレコーダーの一部製品には、8倍速以上対応とうたわれているDVD-Rを使うと、再生、録画ができないばかりか、機器の故障まで起こしかねないものが存在する。該当するアナログレコーダーを使っている人は、4倍速以下のDVD-Rを使わなければならないのだが、すでに日本の主立ったメディアメーカーでは生産を停止しており、在庫もほとんどなくなっている。では、どうしたらいいのか。機種によっては、生産メーカーがファームウェアのアップデートサービスを行っている。これを利用すると、8倍速以上のDVD-Rも使えるようになる。ただし、有償サービスであるし、すべての機種に行われているわけではない。

DVD-Rというメディアも進化し、旧式のメディアはどんどん生産中止になっていくことは、時代の流れでしかたのないことではある。しかし、今ではメディアが手に入らないためにDVD-R録画ができなくなっている低速書き込みレコーダーは、2002年から2004年前後に販売されたものが多い。要は7、8年前の機種なのだ。7、8年で、本体も故障していないのに、メディアがないために使い道がなくなっていくという状態は、消費者視点からするとどうなのだろうか。もちろん、メーカーは厳しい合理化、コストダウンを迫られていて、一部の人のためにメディア生産を続けるなどということはできないのだと思う。ソニーは昔、β方式のビデオデッキを発売し、VHS方式に市場を奪われ、2002年にβビデオデッキの生産中止を発表し、完全撤退した。しかし、βテープだけは、現在でも製造販売をしているのだ。いうまでもない。βビデオデッキは、今でも現役で使っている人がかなりの数いるからだ。マイナーな方式であることは承知の上で、画質のよさなどに惚れ込んでいる熱いユーザーが多い。この熱さにソニーは今でも応え続けているのだ。これが本来のAV機器メーカーの姿だろう。「古い規格は利益が出ないから生産中止する、切り捨てられてしまう人は新しい機種に買い替えればいいじゃん」という考え方は合理的なようで、消費者マインドをむしばんでいく。「新しい機器がほしいとは思うけど、どうせ数年しかまともに使えないだろう。数年使うだけでこの価格は高すぎる」と考える消費者が増えている。その結果が、今蔓延している「買い控え&低価格指向」なのではないかと思う。「だれが悪い」などという犯人探しをするつもりは毛頭ない。消費者もメーカーも販売店もそれぞれが合理的な判断をした結果なのだろうが、全員がなにか大きな間違いをしでかしているような気がするのは私だけだろうか。

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