GW(ガッデムウイーク)が終わった。何度も言うように来月から無職なので、GWもGW明けの憂鬱もこれが最後、と言いたいが、来年の今頃にはすでにバイトやバイトが決まるまでティッシュを食う必要性が出てきているかもしれない。

それがフリーランスというものなので、連休明け、会社を辞めたくてたまらない新社会人の皆様は「会社勤めというのは経済的、社会的には結構利点が多い」ということを胸に留めておいてほしい。

私はこれから「会社員時代に作ったクレカ死守太郎」にならなければならない、抱いて寝るつもりだ。

そんな暫定最後のガッデムウィークをどう過ごしたか、というと後半4日中、3日は「コンビに行くか」と考えている内に終わった、そしてコンビニには行かなかった。

つまり冗談ではなく1歩も外に出なかった。ちなみに前半3日のことは全く覚えていないので、おそらく三日三晩「コンビニ行こうかな」と考えていたのだろう、もちろんコンビニに行った記憶もない。

これは、無職模擬戦としてはなかなか良いレコードだ。いつかまた外で働く必要がでてくるかもしれないが、できるだけそれを先延ばしにすべく「無職になったら家から出ない」を目標にすることにしたのだ。

「毎日ウオーキングする」「資格の勉強をする」に比べたら相当実現度が高い。目標はクリアできるものでないと意味がないのだ。

やはり外に出ると金が出るので、家にいるのがマストだろう。それでも電気代が気になるので、最終的には「全消灯した家の隅で微動だにせず一日を終える」ようになりたい、動くと腹が減る。

よって「コンビに行こうかな」と思いながら行かなかったのは「意志が強い」と言える。コンビニなんて無駄金落とし施設ナンバー1だ。

そんな「無職相撲」としては完全に勝ち越しなGWだったのだが、1日だけ黒星がついた日がある。

映画を見に行ってしまったのだ。この映画は仕事上見る必要があったので、それはノーカンとするが、やはり外出すると金を使ってしまうもので、下着数枚などに4,000円ぐらい使ってしまった。

果たして無職にパンツがいるのか? 全裸で全消灯した家の隅で体育座りしとけば良いのではないか。

しかし無職とはいえ、宅配便や、町内会費の集金などには対応せねばならない、やはりパンツは必要経費だろう。

パンツだけ履いていればいいのか、と思うかもしれないが、こちらとしては、パンツを履いて出てきてやっただけありがたいと思ってほしい。

ちなみに私は「コナン」を見て、同行した夫は「アベンジャーズ」を見た。一緒に映画を見に行って、別々の映画を見て帰ったのだ。協調性の欠片もないが、我々夫婦は「同じ映画を見ても全く話題が盛り上がらない」ので、別の映画を見てもあまり大差がないのだ。

これがオタク2人だったなら、鑑賞後、ファミレスで「ここからが本番」とばかり、キャラ語りや深い考察がはじまったりするものだ。

たまに「尊い」しか言えなくなっている時もあるが、お互い介抱しあったり、肩を支えあいながら岐路についたりと、やることは多いのである。

私個人としては「コナン」の感想はたくさんあった。「最近、巷の婦女子を騒がせている安室透という男、確かに良くできたキャラでござったが、小生といたしましては……」と、みんながはまっているものにはまらない、変わり者アピールをしながらドはまりしている凡庸オタクになる準備はできていた。

しかし夫は「アベンジャーズ」について特に言うことがないのだ。3時間もトニースタークの顔を見ていたら何か言うことあるだろう、と思うのだが、夫の映画鑑賞は見た時点で終わっており「語る」というアフターが存在しないのである。

一方的に感想を言ってもいいのだが、夫はどれだけ目の前で興奮気味のゴリラが2次元の男のについて語っても「スーン」としているのだ。これにはゴリラも落ち着きを取り戻してしまう。

そしていつもの如く、会話が途切れたので「アベンジャーズどういう話だった? 」と聞いたら「あなたも見てみたらいい」という返答が返ってきた。

つくづく夫は、オタクがはしゃぐ相手としては最低である。

筆者プロフィール: カレー沢薫

漫画家・コラムニスト。1982年生まれ。会社員として働きながら二足のわらじで執筆活動を行う。デビュー作「クレムリン」(2009年)以降、「国家の猫ムラヤマ」、「バイトのコーメイくん」、「アンモラル・カスタマイズZ」(いずれも2012年)、「ニコニコはんしょくアクマ」(2013年)、「負ける技術」(2014年、文庫版2015年)、Web連載漫画「ヤリへん」(2015年)など切れ味鋭い作品を次々と生み出す。「やわらかい。課長起田総司」単行本は全3巻発売中。