今回のテーマは「お歳暮」である。サイコがパスっていればパスっている方ほど、表面上、愛想があり礼儀正しいと言うように、編集者、特に女性編集者はマメである。この季節になると歳暮、さらに、私の誕生日が11月なので誕生日プレゼントを贈ってくれる編集者も多い。

このように編集者にも人の心じゃないというだけで心があり、また、贈られてくるものに罪はない。炭素菌とかでなければ等しくうれしい。と、言いたいが、正直「グーグルプレイカード」が一番うれしい。

私があまりにもソシャカスすぎて、お歳暮ほか、挨拶にグーグルプレイカードをくれる担当が結構いるのだ。グーグルプレイカードをくれる担当にはさすがの私も、「お前分かってんじゃねぇか」と、「できるだけ苦しまないようにやってやる」という慈悲が生まれてしまう。

私に担当に対する手心が生まれるというのは、アナキンがダースベイダーになるぐらい悪い展開なのだが、そのぐらいプレイカードは強い。このことから何だかんだで、みんなプレイカード的な使い道をある程度選べるものが一番うれしいのではないか、ということだ。

つまり、最もフリースタイルで千変万化、自分らしさを発揮できる「現ナマ」が一番喜ばれるのではないか、ということだ。「こういうことを言うと味気がない」と言われるが、金があれば味気のあるものが食える。むしろ、金がないからティッシュとか食っているのだ。味すら金ありきである。だがもちろん、これは個人的なうれしさの度合いの差であり、もらえるものは基本的になんでもうれししいものである。

他人にカードを施されるほどのソシャカスになったわけだが、今年は一体いくら使ったのだろう、と分かる範囲で計算してみたが、とてもここでは言えない。なぜならタイトルに反するからだ。つまり、「ほがらか」ではない数字である。

ソシャゲに金を使ったことに関しては後悔はない。喫煙者の前によく知らない人が現れ、「あなたが今まで吸ったタバコでベンツが買えます」と言う。そんな、鬼の首を両脇に抱えて、さもうまいことを言ってやったみたいな話があるが、まず初対面の人間にそんなことを言う人間は、仮にベンツを持っていても、義務教育を受けていないと思う。

だったら自分はこう言う。「あなたが乗っているベンツの金額で、ガチャが5万回回せますよ」と。おそらく、ベンツの持ち主は「何言っているんだこいつ? 」と思うだろう。それと同じなのだ。ガチャの金で他にこんなことができたと言われても、「何言ってんだこいつ? 」なのだ。何を言おうと、決して鬼の首など獲れない。

価値観が違う。ベンツの話は、この当たり前すぎることを無視して、相手はさぞ、ぎゃふんに違いないと勘違いしているだけの話だ。その喫煙者だって、よく知らないやつの話を聞く暇があったら、一秒でも長く、肺を有害かもしれない煙で充満させてぇ、と思っているに違いないのだ。

ベンツはベンツの価値が分かる人間が乗ればいい。それと同じように、ガチャもそこから出てくるかもしれないものに対し、価値を見出せるものだけが回せばいいだけの話だ。お互いがお互いの価値があると信じているものを、価値がないと論破し合おうとするなんて、不毛だし平和じゃなさすぎる。

昨今我々は、「よく分かんねぇけど、お前が楽しそうでなにより」という心がなさ過ぎる気がする。逆に、「こっちが楽しくないのに、他人がよく分からないことで盛り上がっている、ムカつく」という気持ちが大きすぎるのではないか。だから、そのよくわからないものを無価値でくだらないものにしようと躍起になるのだ。

インスタグラマーだって、明らかな迷惑行為をしている人間なんて少数だろう。そうじゃない者に対し、何かムカつくとしたらそれは「楽しそうだから」だろう。だから、「ブスが自撮りで悦に入るな」というような、全く的外れな批判をしてしまうのだ。つまり、人が何に金と時間をかけようが自由である。

だが逆に、「身の丈に合わない使い方は、どう使おうがダメ」だ。ソシャゲに金を使ったことに対しては、誰にも文句を言われる筋合いはないと思っている。しかし、「それが身の丈にあっていたか」という観点になると、四方から竹やりで刺されていいと思う。

再三、「金をどう使おうと自由」と主張してきたが、あまりに自由を謳歌しすぎると、その自由に振り回される。家族をはじめとする他人が出てくるかもしれない。来年は、それをもう少し肝に銘じて起きたい。

筆者プロフィール: カレー沢薫

漫画家・コラムニスト。1982年生まれ。会社員として働きながら二足のわらじで執筆活動を行う。デビュー作「クレムリン」(2009年)以降、「国家の猫ムラヤマ」、「バイトのコーメイくん」、「アンモラル・カスタマイズZ」(いずれも2012年)、「ニコニコはんしょくアクマ」(2013年)、「負ける技術」(2014年、文庫版2015年)、Web連載漫画「ヤリへん」(2015年)など切れ味鋭い作品を次々と生み出す。「やわらかい。課長起田総司」単行本は全3巻発売中。