漫画家・コラムニストとして活躍するカレー沢薫氏が、家庭生活をはじめとする身のまわりのさまざまなテーマについて語ります。

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今回のテーマは「寒さ対策」だ。

冷え性の人間はネガティブだという話を聞いたことがある。

そんなクソデカ主語があるか、と思うが確かに靴下の中で永遠に親指と人差し指をこすり合わせながら明るい気持ちでいろというのも無理な話かもしれない。

日照時間と鬱や自殺率は関係あるとも言うし、冷えと精神にも関連性はあるのかもしれない。

日光浴が推奨されるのもそのせいだろう。

そして日光浴と言えば肛門日光浴である。

肛門日光浴とは、文字通り肛門に日光を当てる健康法である。むしろこの字面で別の意味だったらJARO事案だ。

頭にキャベツやアルミホイルに並ぶ、いわゆる一発屋健康法と思うかもしれないが、それは違う。

この肛門日光浴、数年前に話題になって、また最近話題になっていたのである。

つまり肛門日光浴は健康界のタピオカと言って良いだろう。

おそらくまた数年後話題になると思うので、そのときは「俺は肛門日光浴第一期から知ってたし」と知識マウントを取りたいと思う。

ただ、肛門日光浴に対しては当初から「肛門に日光を当てられる奴はもともと鬱とは無縁」という欠点が指摘されてきた。

ただ最近は「どうしようもない陰キャほど、どうしようもない健康法を試しがち」という説も浮上してきている。

実際、健康法という分野はまだまだ日進月歩であり、長年信じられてきた説が突然「根拠なし」と言われてしまう世界なのだ。

肛門日光浴もいつか医学的に効果があると実証される日がくるかもしれない。

ちなみに現在のところ肛門日光浴に対する医療関係者の意見は要約するに「寝言は寝て言え、クソして寝ろ」である。

しかし今は常識とされている「手洗い」も最初は医療関係者から肛門日光浴扱いされており、提唱した人はキティ氏扱いされた上、病院にぶち込まれ暴行死するというどこにも救いがない終わりを迎えている。

つまり、肛門日光浴が手洗いレベルの常識になる可能性もゼロではない。

ちなみに私も極度の冷え性であり、そのせいかは知らないが黒カビみたいな性格をしている。

寒さ対策に関しては「部屋から出ない」という必勝法を編み出してためこれ以上やるべきことはないのだが、冷え性自体は悪化の一途を辿っている。

冷え性の悪化というのはより冷えるようになったという意味ではない。「冷える部位が増える」のだ。

今年顕著に冷えだしたのが「目」である。

今も部屋は十分に温まっているが、瞼はキンキンに冷えている。熱いものを触ってしまったら耳たぶではなく瞼を触るべきだ。

瞼には血管がたくさん通っており、血流が悪くなると冷えてしまい、ドライアイなどの原因になるそうだ。

実際瞼が冷えるだけなら良いのだが、瞼が冷えているときは目がつらいのである。

市販の使い捨てホットアイマスクなどを使ってはいるが、外した瞬間「冷やし眼球はじめました!」というレベルでまた冷えているのだ。

そんなわけで今年の誕生日に電動のホットアイマスクを買ってもらった。

ホットアイマスクは電動でもそんなに高価ではなく3,000円台ぐらいで買えるのだが、どうせ買ってもらうならと1万円ぐらいするものを選んだ。

そのホットアイマスクは温めるだけでなく、マッサージもしてくれる優れものである。

これさえあれば目の冷えと疲れとはおさらばだ。

そう思ったのだが、このアイマスクのマッサージが「こめかみ」を的確に狙ってくるのだ。

私の知識が正しければこめかみは「急所」ではなかっただろうか。

しかし、私が知らなかっただけで、こめかみをマッサージすることで眼精疲労が回復するのかもしれない。

そう思って急所に対する執拗な攻撃を20分ぐらい耐えたのだが、次の日普通に頭痛で倒れた。

もしかしたらこれは急所を突くことにより「生」から解放され、同時に目の冷えなどという些末な悩みからも解放されるという根本的解決を目的としているのかもしれない。

さすが1万円もするだけあり、一瞬目を温めるだけの対症療法しかできない安物とはわけが違う。

またこのアイマスクは5種類のモードが用意されており、そのうちの4モードがこめかみを狙ってくれる。

ちなみにこめかみを狙わないのは「温めるだけ」のモードである。

つまり使い捨てホットアイマスクと同じ機能なのだが、それだけの機能にしては「重い」のである。

あの使い捨てホットアイマスクがどれだけ有能かわかった。それだけでも1万円の価値はあったと思う。