漫画家・コラムニストとして活躍するカレー沢薫氏が、家庭生活をはじめとする身のまわりのさまざまなテーマについて語ります。
今回のテーマは「コンビニでつい買ってしまうもの」だ。
コンビニといえば、本のタイトルになっているぐらい「ひきこもりの唯一の外出場所」として有名である。
私も御多分に漏れず、コンビニにだけは良く行く。もはやコンビニにひきこもってしまえばいいような気がしているが、それをやると拘置所等にひきこもることになりそうなので実行には移せていない。
ひきこもりなんだから、拘置所とか刑務所とかはむしろ得意分野だろう、と思うかもしれないが逆である。
ひきこもりは別に密室に篭もるのが好きなわけではない。ひきこもりは「自分以外誰もおらず、自分の自由にできる場所」が好きなのである。それがたまたま自分の部屋だったというだけだ。
よって拘置所や刑務所などの自由が制限された場所では、どれだけひきこもれていてもストレスを感じるし、雑居房なんかに入った日には3分で「要精神鑑定」の状態になる。
つまり、ひきこもりほど法を犯してはいけない、ということである。
長くひきこもるための資金を得るために、2時間の映画を5分ぐらいにしたやつをアップするなど違法なことに手を出してしまうと、それが逆に自分をひきこもりとして絶体絶命の状況に追い込んでしまうのだ。
気持ちはわかるが、ぜひ合法で死ぬまでひきこもり、そしてコンビニで買い物ができる手段を見つけてほしい。親が死んだからといって放置して、そのまま年金をごっつぁんしてはいけない。
私は幸いこうやって「自分の恥を売る」という合法手段、むしろ「合法」以外何も誇れることがない仕事でコンビニに行けているわけだが、コンビニで買うものは一貫して「お菓子」であり、小学生の時から全く変化がない。
今、勘の良いガキが「お前の村にお前が小学生の時コンビニが存在したはずないだろう」と思ったかもしれない。
全くその通りであり、これだから勘の良いガキは嫌いだ。
正確には、我が村にコンビニ1号店、そしていまだにオンリーワンかつナンバーワンが建った中学生の頃から変わっていないのだが、小学生の時にコンビニがあったとしても絶対お菓子を買っていたので、便宜上小学生とさせてもらう。
おそらくこれからも、コンビニでお菓子、そしてペットボトルとチルドカップ飲料を「コンビニでこの3つを買うやつは何やってもダメ」みたいな新書が出てもおかしくないレベルで買い続けるだろう。
しかし、お菓子は変わらなくても、その内容は加齢と共に変化している。
10年前であればコンビニで買うお菓子といえば「甘いパン」たまに「おにぎり」であった。
それは主食だろうと思うかもしれないが、私の「お菓子」の定義は「夕食の後に食うもの」である。昔は夕食にパスタを食った後甘いパンやおにぎりをデザートとして食べていたので、甘いパンとおにぎりはお菓子なのである。
しかし、最近はパスタを食った後に甘いパンは「重い」と感じるようになってしまった。 よって最近は甘いパンを買うことすら稀になってしまったのだが、その話をすると大体の人が「がっかり」というリアクションをするので申し訳ないと思う。
逆に言えば10年前の私は相当「甘いパン甘いパン」とうるさかったのだろう。
そんな甘いパンが口癖を超えて鳴き声だった人間が、いとも容易く加齢に負けて甘いパンを食わなくなっているのだから、もはやがっかりを超えて「失望」なのかもしれない。
ただ甘いパンを食っているだけでも人望を失える、これはもはや才能といって良いだろう。
そんなわけで最近はコンビニに行くとスナック菓子や小袋に入っているチョコレート菓子を買っていた。
コンビニの菓子は割高というイメージがあるし、実際ポテトチップス68円とか価格破壊を起こしている俺たちのイオソに比べれば高い。
しかし、コンビニは菓子類に関しては常に最前線であり、プライベートブランドの100円菓子のクオリティも高い。
だが、最近コンビニの100円スナック菓子を超スピードで一袋食ってから秒で寝るという行為を行ったところ、数十分後猛烈な吐き気で目が覚め、朝まで苦しむということがあった。
スナック菓子が原因なのかは不明だが、行動に誤りがあるとしたらおそらくここである。
既に自分はスナック菓子すら注意して食わないと死ぬ低みに来てしまったということだ。
よって最近は「グミ」を買っている。菓子を止めるという選択肢はない、それは人生を止めるのと同じだ。
食い物としてグミほど虚無なものはない、と言われているが、菓子を食うのに健康云々言っているやつの方がおかしい。
スナック菓子に比べ油分がない、そして長持ちするという理由でグミを選んだのだが、残念なことに、年をとって内臓は弱ってきたが「スピード」に関してはいまだ衰えることを知らないのだ。
つまり、グミも秒で一袋食ってしまうのである。
もしかしたら、体調を悪くするのは菓子の種類の問題ではなく、超スピードで一気に大量に食い、秒で寝るという「行い」が原因なのかもしれない。
しかし、私にとってこの「スピード感」は現役の証しだ。「まだいける」と、証明するために、私は今日もハリボーを爆速で空にする。