漫画家・コラムニストとして活躍するカレー沢薫氏が、家庭生活をはじめとする身のまわりのさまざまなテーマについて語ります。
今回のテーマは「体調不良」である。
数カ月前、コロナワクチンの2回目を打った。
1回目を打ったとき、何もなかったので「副反応とか都市伝説」と思っていたのだが結果としては「2回目がつらい」という都市伝説が真実だということがわかった。
症状としては高熱、関節痛、頭痛など副反応の例として挙げられている症状は軒並み起こった。
たった2回でフルコンプとは神引きにもほどがある。運営には申し訳ないことをした。
しかしせっかくつらかったのだから、ことあるごとに顔のパーツを中央に全集中させて「副反応つれーわー」と言って回ったのだが、周りの反応は「そんなにつれーか?」というものであった。
どうやら周囲は、つらいにはつらかったが「お前が言うほどではない」という感じだったようだ。
私がオーバーなのか、しかし熱が38度以上出て頭(ず)が痛ければ少なくとも霊帝ぐらいにはとてもつらいのではないか。
そもそも私が打たれたのはみんなと同じワクチンなのか、何か別の液体、もしくはドストレートに「空気」とか入れられてないんだろうか。
ちなみに皆さんは注射などのとき、刺されるところを見ない派とガン見派どちらだろうか。
私は、注射のときは見ない派、採血のときはガン見派である。
血の場合は試験管の中に自分の血がドンドン貯まっていき「ウホォー! 血だあああ! ブラボー」のような、エンタメ感があるが、注射の場合は特に面白い色をしているわけではない液体を注入されるだけなので、見ても大して面白くないからである。
よってコロナワクチンを打たれるときは見ていないため、もしかしたら面白い色をした液体を入れられていた可能性もある。
もちろん副反応には個人差があるため、私が神引きしたのに対し、周りがドブっただけなのかもしれない。
だが私が副反応を特につらく感じたのは、おそらく私が「健康」なせいだと思われる。
「健康」と言っても、外出できる紙おむつCMに出てくるご老人のように快活、というわけではない。
むしろ「起きた瞬間疲れている」のキャッチフレーズでお馴染みであり、後期高齢者の母に「電話をかけるといつも死にそうな声をしているが大丈夫か」と言われるし、健康診断の医者の問診も「Q1 大丈夫ですか?」だった。
しかし私はこれらの質問に対し「大丈夫」ではなく「元気です」とおちんこでている魔女のように返答しているし、実際元気なのである。
私が病魔のように見えるのは最大HPが低いからなのである。
人の平均HPが100だとしたら、私は30ぐらいなので、100の人から見ればベホマをかけられた後の私ですら「ウィンドウがオレンジになっている人」なのである。
しかし私からしてみれば「HP満タン」なので「元気」としか言いようがないのだ。
そして私はHPは低いが「状態異常」は滅多に起こさないタイプなのである。
「体調不良」というのは「HPの低下」つまり疲れなどで起こるものと、風邪等の病気による「状態異常」で起こるものに分かれる。
私は常にHPが低いので体調が「ずっと薄曇り」みたいな感じなのだが、毎日それだとそれが「正常」になるのである。
しかし、毎日同じ天気ということは、それ以外の天気に対する耐性がないということであり、少し雨が降っただけでも土砂崩れで家屋が倒壊し、逆に晴れても田んぼが干上がり飢饉が起きるのである。
つまり、状態異常に全く耐性がない私に、ワクチンによりあらゆるバッドステータスがついたため、常人より辛く感じたのだと思う。
おそらく「熱が良く出る」など、日頃から状態異常が起きやすいタイプの人は体感的にそこまでつらくはなかったのではないだろうか。
状態異常のつきやすさというのは生活習慣にもよるだろうが、持って生まれた体質も大きい。
副反応を体験したことにより、私は「健康」という大きな幸運を持って生まれたのだと自覚した。
ちなみに、副反応は、若者よりも高齢者の方が感じにくいと言われている。
おそらく老になるとバッドステータスが3つぐらいついているのがデフォルトであり、最大HPも3ぐらいしかないため、それが1になっても誤差の範囲なのだろう。
やはり「つらさ」というのは相対的なものであり、平常時との落差が大きいほどつらく感じるものなのだ。
常時「ちょっとつらい」というプチ霊帝状態でいることが、大きく落ち込まないコツなのかもしれない。