漫画家・コラムニストとして活躍するカレー沢薫氏が、家庭生活をはじめとする身のまわりのさまざまなテーマについて語ります。

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今回のテーマは「Amazonレビュー」である。

私はひきこもりのたしなみとしてアマゾソヘビーユーザーであり、連日来る配達員の人に「一回にまとめろや」と思われていると思うが、分けているのはアマゾソの方なので誤解しないでほしい。

しかし、これだけアマゾソを利用しているリアルアマゾネスな割には「Amazonレビュー」は書いたことがないし、どちらかというと私の方が「書かれる側」である。

まず「レビュー」というのは「これには小生の愚息も昇天! コスパ最高リピ確定、文句なしの☆5です!」に代表されるような、その商品やサービスの評価文のことである。

もちろん良かった場合だけではなく、愚息が消沈した場合はその旨を記して☆1評価を点けたりもする。

これから買おうかと迷っている人間はそのレビューを参考にしたりするのだから、作り手とってレビューは非常に大事なものである。

しかし私はあまりAmazonレビューは気にしないようにしている。

何故なら「Amazonレビューを気にし過ぎると病気になる」からだ。

まず、自分が時間をかけて作った作品に☆1を点けられて健康になる奴はいない。

いたとしたらどんな職業でも乗り切れると思うので作家にこだわる必要すらない気がする。

そういう批判的意見を受け止めることで作家として成長するのでは、と思うかもしれないが、それは「まず元気玉を受け止めましょう、悟空が元気をちょっと分けてもらった奴じゃなくて、ミスターサタンの呼びかけで極限まで集めたやつね」と言っているようなものだ。

受け止めた時点で木っ端みじんになったら、そこから成長することはない。

それが出来るのはそれを受け止められる強靱な精神を持ったごく一部の人だけだ。

よって聞いた時点で砕ける人に対し「これは批判ではなく意見であり、あなたのためを思って言うのだ」と、エクスキューズを挟んでキツイことを言うのは、躾と称してボコ殴ってくる人と変わらないので「そういうのはいらねえ」と言われたら素直にやめよう。

よって☆1レビューを見ても「いつかこいつをギャフソと言わせる物を書いてやる」と思うことはなく、元気がない時だと「すみません、死にます」としか思わないし、ちょっと元気がある時だと、一日中レビュー主の御没落とご多不幸を祈ってしまうし、絶好調の時は何とかしてそいつの住所を特定し「私の何がいけなかったの!?」と詰め寄るメンヘラ彼女ムーブになる。

つまり低評価レビューは病気か犯罪の二択でしかないので初めから視界に入れないようにしている。

このように生まれつき、反骨精神が低反発枕と同じ素材で出来ている奴は、叩かれたら叩かれただけ凹み、戻るのに時間がかかる上、決して凸になることはないので、凹むとわかっているものは最初から見ないに限るのだ。

じゃあ褒められているレビューは読むのか、というと、実はそれもほとんど読まない。

正確には「読めない」と言った方が正しい。

肉体が二十歳前で大体完成し、そこから成長することがあまりないように「褒め許容量」も成人前でほぼ決まり、そこから増えることはないような気がするのだ。

つまり、全く褒められずに大人になった人間は「褒め許容量」が著しく低いため、それ以上に褒められると、嬉しいどころか逆に「いたたまれない」という辛さを感じてしまうのだ。

もしくは「ははーん、こいつはマルチか宗教だな?」と相手の褒めを全く信じないのである。

私が一日68時間のツイッター、1秒間に10回エゴサして、自分の作品を褒めてくれているつぶやきを探しているのは、それが私の褒め許容量ギリギリだからだと思う。

それに対し「Amazonに☆5評価レビュー」というのは許容量を越えて「ちくしょー! 褒めるんじゃねー!」とダブルラリアットで逃げ出してしまうため、ほとんど読めない。

ただ、レビュー内容は読めないが「星の数」ぐらいは見られるし励みになっているので、あなたの☆5評価はちゃんと私に届いて、励みにはなっている。

それにしても、レビューを書く人というのは一体どんな動機で書いているのか。

レビューサイトの中には、レビューを書くことでポイントをもらえるものもあるが、アマゾンには多分それはない。

良かったから他の人にも勧めたいという親切心か、もしくは、こんなドブに金を捨てるのは俺で最後にしたいという正義感か、どちらにしても真面目でマメな人だと思う。

私がドブにハマったら、何も言わずに同じドブにハマる奴を待つに決まっている。

しかしAmazonレビューには「買ってなくてもレビュー出来てしまう」という最大の欠点がある。

つまり嫌いな作家の作品を買いもしないで「こいつが書いているから☆1」が出来てしまうのだ。

確かに「嫌いな奴が作ったものだから☆1」というのはこれ以上なく簡潔かつ正しいレビューだが、それで相手の商売を妨害できてしまう、というのはマズい。

逆に言えば☆1をつけられていても「金出して買ったなら仕方がない」と思えるので、せめて買った人間しかレビューできないようにしてほしい。

それで「☆1をつけるために買う」というなら、それはもうアンチというよりファンに近い