漫画家・コラムニストとして活躍するカレー沢薫氏が、家庭生活をはじめとする身のまわりのさまざまなテーマについて語ります。

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今回のテーマは「LINE」である。

これはLINEというより「ツイッター以外のコミュニケーションツールとどう向き合っているのか」というテーマだそうだ。

私と言えば「1日68時間感謝のツイッター」「ツイッター歴10年、通算ログイン時間30年」など、ツイッターをやりすぎて時空が歪んでしまったことでお馴染みなのだが、なぜこんなにツイッターが自分に向いているのか考えたところ「コミュニケーションしなくて良いから」という、考え得る限り最も最悪な、日本語すら歪むレベルの答えが出た。

「人狼」の時も思ったが、私は自分が何を話すかばかりに注力して、他人の話を聞く力がない。

もしくは「先日FXでマイホームの頭金を溶かして配偶者にその件をまだ伝えていない」等の話は瀬戸内海を挟んでも聞こえるなど、興味のある話は良く聞くが、ない話は全部サンスクリット語に聞こえるという性質を持っている。

ツイッターは基本的には独り言ツールであり「自分の言いたいことを好きな時に言える」上、反応があってもそれに全部返事をする必要がない。

気が向いた時や、興味深いリプのみに返信をすることが許されるという、まさにそう言うタイプのために作られたようなツールなのである。

この「返信がマストではない」というのは、私のような何故人里に生まれてきてしまったのかわからない生物以外にとっても利点だと思う。

ツイッターでは「昨日スーパーで豆腐を38円で買えた!」という、独り言でしかないつぶやきに対し「俺の近くのスーパーでは32円ですよ?」という「左様か」としかいえないリプがつくことがある、

リアルなら「ホーン?」とか言っておけばいいのだが、もしツイッターがそういうリプに対しても全部「ホーン?」と返信するのが礼儀、というツールだったら、私は5日ぐらいで投げ出していたと思う。

実際ミクシィなどでは、コメントをくれた人間には全員返信をする、もしくは全員にしないかのオールオアナッシングであった。

この人には返信するが、この人には返信しない、などしてしまったら瞬時に空気がピリつき、サンシャイン牧場の作物が枯れてしまうため、いちいち「レガシイさんへ」など誰宛かまで手打ちし、わざわざ「ホーン?」という返信を一人ひとりにしていたのだが、はっきり言ってなかなかの苦痛であった。

よってツイッターのプロフィールに一言「返信は気まぐれです」と本来なら子キャット様のような美少女にしか許されないようなことを書いて、「自分の言いたいことだけ言って、返信が来ても気が乗らなければ返さなくてもいい」という世界観は実に私向きであり、少なくともそういう使い方をしても怒られることがないというのがありがたい。

時々「リプは必ず返します」「フォロバ100%」と、縛りを入れている人がいるが、よほどマメで人とのコミュニケーションが好きな人でなければやめた方がいい。

むしろ、そんなにコミュニケーション自信ニキなら、ツイッターにいるのが間違いなので、フェイスブックかインスタの森に帰った方がいいと思う。

良くも悪くもルール無用なツイッターで、自らルールを作るというのは、全裸になっても良い場所で「俺はパンツ履きます!」と宣言してしまっているようなものだ。

そう宣言してしまったがために、たまにパンツを履き忘れた時に「パンツ履くって言ってたのに、嘘だったんですか?」と、全裸の奴に詰め寄られる羽目になるのである。

つまりツイッターは、ズボラで、自分の言いたいことだけ言えれば良く、他人とは自分の気が向いた時だけコミュニケーションできればよく、なんだったらコミュニケーションを拒むことすらできるという、コミュニケーションツールでありながら、コミュ症向けのツールということだ

最近のツイッターのアップデートを見ると「俺たちはお前らのためにツールを作っているわけではないのに、なぜコミュ症が群がってくるのか」と一生懸命足にまとわりついて来るコミュ症を蹴落とそうとしているように見えるが、そろそろ諦めてほしい。

そんなツイッターに対し「LINE」は真逆のツールと言って良く、やりとりしているのは、夫、そして小学生時代の友達のみである。

つまりLINEは「返事をしなくても"そういう奴だから"と諦め済みの人」限定にしておかないと、すぐに人間関係が破綻してしまう。

LINEというのはツイッターと違い「虚空に向かって独り言」ではなく、明確に誰かに向かって話しかけるツールであり、さらに基本的に返信が必須とされている。

さらに「既読」という、返事をなかなか返さない奴が良く使う「すみません! メール見落としてました」という言い訳と、メンヘラのメンタル、そしてメンヘラを恋人に持つ人間の生活を破壊する悪質な機能がついている。

しかし、LINEにも「スタンプ」という画期的機能があり「ホーン?」としか返せないようなメッセージにわざわざ文章を打つ必要がなく「ホーン?」というような意味を表すスタンプを送っておけば、とりあえず返事を返した、という実績をつくることが出来るという点では我々向けである。

そもそも私はLINEを使う習慣がなさすぎて、LINEが来ても気づかないことが多い。

現に今LINEを開いたら夫から2日前にLINEが来ており、バッチリ無視しているということに気付いたのだが、むろん返信はしない。

何故か人との繋がりがすぐ切れてしまうという人は「こういうところ」がないか、己を振り返ってみると良い。大体「何故か」ではなく理由があるものだ。