複数の種類がある簿記検定の中で、最もポピュラーな「日商簿記検定」。就職・転職の際などに受験を考えたことがある人は多いのではないでしょうか。簿記の知識は、経理や財務の仕事に欠かせないというイメージがありますが、実は、あらゆる職種の人に役立つものなのです。そこで本稿では、日商簿記検定の内容や各級の難易度、また、資格をどのように生かせるのかなどについて解説していきます。

  • 計算は得意です!

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日商簿記検定とは

簿記とは、企業の経営活動を記録・計算・整理し、経営成績と財政状態を明らかにする技能のことを言います。簿記を理解していれば、経理事務に必須の会計知識が得られるだけでなく、ビジネスに必要なコスト感覚も養え、コストを意識しながら仕事をすることができます。また、簿記の知識があると財務諸表が読めますし、基礎的な経営管理や分析力も身に付きます。日商簿記は、こうしたさまざまなビジネスの場面で役立つ簿記の修得度をチェックする検定です。

多くの企業では、スキルアップや自己啓発として日商簿記の取得が奨励されており、採用や昇給、人事制度にも活用されています。また、大学によっては簿記検定が単位として認められる場合も。商学部や経済学部の学生なら、科目の理解を深めるのに役立ちます。日商簿記は、社会人のみならず学生にもポピュラーな検定なのです。

それぞれの級の内容と難易度

日商簿記は受験資格に制限がないため、年齢や学歴に関係なく誰でもチャレンジできる検定です。レベルごとに初級、3級、2級、1級とあり、そのうち初級は簿記の基本用語や複式簿記の仕組みが問われる入門的な内容となっています。3級から1級までについては、特徴や難易度を以下にまとめてみました。

3級

簿記検定3級は、ビジネスパーソンに必須の基礎的な知識が問われます。基本的な商業簿記の内容で、経理関連書類の処理や青色申告書類の作成など、初歩的な実務がある程度こなせるレベルとなります。取得していると、経理・財務担当者以外の職種の人でも、企業から評価されることが多い級です。

3級の試験科目は「商業簿記」のみで、試験時間は2時間です。100点満点のうち、70点以上取ると合格となります。合格率は、おおよそ40~50%です。日商簿記3級を取得するまでの学習期間は、1~2カ月以上が目安となるでしょう。

2級

簿記検定2級は、企業の経営管理や財務担当者に必須の知識が問われる級となり、財務諸表の数字を読み解き、経営内容を把握できるようになります。取得していると、就職や転職で有利になることもあります。

2級の試験科目は「商業簿記」と「工業簿記」で、試験時間は2時間です。100点満点のうち、2科目合計で70点以上正解すると合格できます。合格率は15~45%程度とばらつきがあり、学習期間としては最低でも3~4カ月以上は必要そうです。

1級

簿記検定1級は、会計のスペシャリストのレベルで、公認会計士や税理士といった国家資格への登竜門とも言われています。極めて高度な商業簿記・会計学・工業簿記・原価計算を修得し、会計基準・会社法・財務諸表等規則といった企業会計に関する法規を踏まえ、経営管理や経営分析ができるようになります。大学等で専門的に学ぶ人に期待される難易度となっており、1級に合格すると、税理士試験の受験資格が与えられます。

1級の試験科目と試験時間は、「商業簿記」「会計学」で1時間半、「工業簿記」と「原価計算」で1時間半の、合計3時間です。各科目25点満点の合計100点満点で、70点以上で合格となります(4科目のうち1科目でも10点に満たない場合は、不合格)。1級の合格率は6~13%程度と、難しさを物語る低さとなっています。学習期間は、半年以上を目安としたいところでしょう。

日商簿記はさまざまな場面で生かせる

簿記の知識が得られるだけでなく、ビジネススキルとして活用できる日商簿記。具体的には、どのように生かせるのでしょうか。まず、企業では、経理や財務担当者に欠かせないのはもちろん、コストの計算や見積書の確認が必要な営業職の人も活用できる資格です。その他に、財務諸表等の書類を読んだり、取引先の経営状況を把握したりする管理担当者の人も、簿記の知識があると便利でしょう。就職・転職のアドバンテージになるほか、昇給や昇進の要件として日商簿記を掲げている企業もあります。

また、他の資格や検定とあわせて取得し、キャリアアップを目指すこともできます。税理士や公認会計士だけでなく、お金の専門家である「ファイナンシャルプランナー(FP)」や経営コンサルタントとして唯一の国家資格である「中小企業診断士」などと組み合わせれば、活躍の幅がさらに広がるでしょう。さらに、起業を志す人にも簿記の知識は役立ちます。

簿記はビジネスパーソンに不可欠の知識

簿記というと、多くの人は「経理部門ではないから自分には関係ない」と思ってしまいがちです。しかし、簿記の知識や技能は、部門を問わず実社会の中で非常に役立つものです。特に1級や2級は簡単に合格できるものではありませんが、取得していれば多くのメリットが得られることでしょう。

武藤貴子

ファイナンシャル・プランナー(AFP)、ネット起業コンサルタント

会社員時代、お金の知識の必要性を感じ、AFP(日本FP協会認定)資格を取得。二足のわらじでファイナンシャル・プランナーとしてセミナーやマネーコラムの執筆を展開。独立後はネット起業のコンサルティングを行うとともに、執筆や個人マネー相談を中心に活動中。

イラスト=竹村おひたし